第7話 異世界で楽しむ初めての朝市。
クルスの朝はとてもすがすがしい。
周囲が森という森に囲まれていて、自然豊かな環境の中にその伝説都市は突如として現れる。
周辺には潤沢な水量の流れる清流もあり、都市として発展するには申し分ない環境であり、街を包む空気は澄み渡り、雲ひとつ無い晴天であった。
まるでこれから紡がれる、新たな伝説の幕開けを見守るように。
~伝説都市クルス・朝市~
クルスの朝市に、ジャージ姿に鞘に収まった刀を片手に歩く黒髪の少年がいた。
彼がもし細い線に整った顔立ちで無かったら、とっくに不審者だっただろう。
しかし彼の恵まれた顔立ちと性格で、なんとかその扱いは免れていた。
だが不審者一歩手前なのには変わりは無く、彼は朝市に並ぶ様々な商品をキョロキョロと見て回っていた。
『なぁネブラ、この世界で剣とか刀ってどうやって帯刀するもんなの?』
『ううーん、そうだなぁ、まずそのカタナって剣は見たことねえんだけど、基本騎士団なんかが持つ剣は背中に背負うか腰に差すかな。』
『やっぱり背中か腰か、ってか刀この世界に無いの!?』
『そうだなぁ、俺は見かけたことねえなぁ・・・・。』
『むむむ・・・・まぁ俺のいた世界とは違うみたいだし、これをくれたのも俺の元いた世界の末裔みたいだったしなぁ。』
『そんな奴がいたのか?』
『あぁ、あの霧の森で迷ってたときに飛び込んだ小屋のじいさんが打ってた一振りだよ。』
『はぁ~ん、たまに森から感じてた属性の力の波はそのじいさんだったのか。』
『たぶんそうだと思う、あの人には感謝しねえとな、俺が最も扱いやすい武器を、しかもとっておきのを授けてくれたんだしな。』
『いろんな出会いがあるもんだねぇ。』
そんなことを話しつつ歩いていると市場の店の中に冒険者向けの商品を扱っている店を見つけ、秋水はそこへ入った。
店の中には所狭しと武器や防具、職業に特化した装備類が並んでいた。
店主「あら、見かけない身なりをしているな、何かお探しかい?」
秋水「そうだな、俺は遠い辺境の民でな、この辺りを歩いていても変な目で見られない衣服を探しているんだ。」
とまぁ、あながち間違いではない設定をさらっとその場で作る秋水である。
店主「確かになぁ~、あんたの服装はどうにも特殊だもんなぁ、そんな布見たこともねぇ!」
秋水「あぁ、俺の故郷で特殊に合成された繊維と呼ばれる糸の集合体を綿密に織り上げているんだ、通気性抜群だ。」
と、地球のテクノロジーを異世界でひけらかす秋水である。
店主「はぁ~! あんたの故郷はすげえんだなぁ、さぞ高いんだろうなぁ・・・・。」
秋水「意外とリーズナブルなお値段で上下揃うぞ。」
店主「そうかい、でも俺の趣味じゃねえから遠慮しとくよ、そんなことよりどんな装備をお探しだい?」
秋水「そうだなぁ、この剣を持ち歩かずに身体のどこかに装着出来て、尚且つ鎧等と違って身軽な装束みたいなものが好ましいかな。」
店主「その剣もこれまた珍しい形だな、ククリ刀を細く長くしたような感じだ・・・・それもお宅の故郷の?」
秋水「あぁ、刀と呼ばれている、伝統の剣だ。」
店主「へぇ、カタナか、聞いたこともねえ。」
店主「でもあんたの要望に添えそうな装備がうちにある、普通はスカウトと呼ばれる職業のもんが身に着ける装束だ。」
店主「もともと諜報やスパイ用の装備だから防御力はさほど無いが、動きやすさや武器や道具の収納能力、そしてお前さんの好きな通気性が抜群だ!」
秋水「ほう、それはよさそうだ、通気性はさておき、見せてくれ。」
さほど通気性に興味のない秋水である。
『全く、なにしょうもない事やってんだか・・・・。』
『服なんてさっさと買っちまえばいいのに。』
『RPGで選択肢をふざけて回答するのを実際に出来る又とない機会だぞ!?』
『楽しんでいこうぜ。』
『あーはいはい。 楽しむねぇ~。 ほんと暢気な野郎だ、先が思いやられる・・・・。』
と、悶々とするネブラであった。
大変お久しぶりです、久々にPCを開きましたので更新します!
日本のどこかで私にTrick or Treat!と呼ぶ声が(幻聴)聞こえた気がしたのでお菓子ではなく最新話を投稿します。
継続して読み続けてくれる画面の向こうのあなた達がいる限り、私は書き続けます。
それではSee you next time!