第3話 霧の森
秋水は迷っていた。
小屋を出たのはいいがとりあえずどこへ迎えばいいのか全くわからなかったのだ。
とりあえず一旦小屋に戻ってこの世界で役に立つ物がないか探すことにした、地図などがあればなお良い。
小屋の中の7割以上は鍛冶を行える場所になってしまっており、後はものを入れる用の引き出しのようなものしかなかった。
秋水はとりあえずその引き出しを調べてみることにした。
秋水「なにかねーかなぁ・・・・地図とかありゃあいいのになぁ・・・・。 あれ、異世界で人の小屋の引き出し調べるとかどこの主人公だよ・・・・。」
男には一度は経験があるはずだ、初対面の人の家に入り挨拶もせずタンスからエプロンややくそうをいただいた経験が。
そんなことを考えながら漁っていたところ、一番下の引き出しからなにやら古そうな紙と布の間の存在と思えるものを発見した。
秋水「なんだこれ? あれ、裏になんか書いてある・・・・。」
見る限りどうやらこの土地の古い地図のようだった。
秋水「おお! これはラッキーだぜえ! まさか地図が手に入るとは!」
地図の森が書いてある部分に×が記入してあった、どうやら老人が自分の小屋を示したようだった。
秋水「ふむふむ、ここは・・・・ネーベルヴァルト?って読むのかな・・・・。 よくわかんねーけど北に行けば村があるみたいだし行ってみるか。」
他に役に立ちそうなものはなかった。
とりあえず小屋を後にして北の村を目指してみることにした、地図を見ながら大体の方角はわかった。
秋水はとりあえず北に向かって歩き始めた。
朝霧のせいか数メートル先は少し視界が悪い。
歩きながら秋水は考えていた。
日本での生活や家族のこと、そして自分が17年で培って来た『居合』の道。
小さい頃、家が道場だった秋水は物心ついた頃から刀を振っていた。
父も祖父も熱心な剣士で、毎日道場で死闘を繰り広げていた。
祖父も父も、剣道の道では最強の名を総なめにするほどの腕前で、昨年父が3年ぶりに出た大会では決勝戦以外相手が辞退するというほどの名の轟ようだった。
自分は父や祖父を尊敬していたが同じ道を歩もうとは思わなかった。
剣道は確かに奥が深いがやはりスポーツ化してしまった部分がある。
そこで自分は居合を選んだのだった、それもより実践的な居合を。
居合をやりたいと父に言うとじゃあ俺が稽古をつけてやると自分に居合を教えてくれた。
父のほうは少し居合もかじっており、とりあえず協議会のほうでは日本一にはなったことがあるそうな・・・・。
父の持っていた居合の技と、剣道で実際に使える相手との間合いや技も取り込み、独自の居合で父や祖父との鍛錬の日々の中で秋水の居合は一つの境地にまで達していた。
学校も普通の進学校に通いながら勉学と武道、まさに文武両道の道を歩んできたのだが、まさかある日突然、異世界に飛ばされるとは思わなかった。
そんなことを考えながら10分ほど歩いたが中々森を抜けない。
もう5分ほど歩いたところで何故か自分が出たはずの小屋に戻ってきた。
秋水「あれ? おっかしいなぁ・・・・方角を変えたつもりは無かったけど・・・・色々考えてる間に戻ってきちまったのかな? また歩くかぁ・・・・。」
そう言ってまた秋水は北を目指して歩き始めるのであった。
~ここは霧の深い迷いの森~
~襲いかかるは霧の猛者達~
~この森に迷い込んで出てきたものは数える程であり~
~一人、また一人と消えてゆく~
『Nebel Wald ~霧の森~』
ども昨日ぶりです、いま例のパークはとってもとっても閑散期で、謎の7連休なのですよ。
だから書けるときに書いておきます!
ではでは第3話どぞ!