第1話 南部拠点の混乱
重月の刻が近づいていた。
あと四刻(約2時間)もすれば双月は重なり、見慣れぬ一つの月になる。
各部隊は直接割り振られた配置場所へと赴き、現地を執り仕切るGSMGクルス支部所属の拠点リーダーと合流する。
正直、今回の作戦は北と南のみの配置でも問題ないと、指揮官は思っていた。
しかし伝説上の物語は現代に伝えられるまでに様々な改編や誇張が付き物であり、油断をするわけにもいかない。
南北だけの配置で敵に虚を突かれ民の血が流れるなどもってのほかである。
だが現状なにかおかしなことが起きるような気配や、報告はない。
いっそのこと謎の結社の大軍が押し寄せてくるくらいでもないと、これほどの手練れを王国中から集めた意味がない。
厳戒態勢のまま時は過ぎ、気付けば重月まであと半刻ほどである。
双月はもうほとんど重なりつつある。
「現時点で、何か異常は?」
側近へ半刻に一度、状況を報告させる。
側近「いえ、状況は変わらず、各隊からも異常の報告は届いておりません。」
あまりになにもないので、指揮官はつい聞いてしまった。
「君は、正直なところ今晩なにか起きると思うかね?」
側近「確かにここまでいつもと変わらぬ重月の夜だと、本当はただのいたずらだったのでは、と思わざるを得ません。」
「まぁ、そうだろうな、それはそれで、ある意味いい事なのかもしれぬ。
なんせ無駄な血を見ずに済むのだからな。」
側近「おっしゃる通りです。」
それから少し後、南部拠点から緊急の伝令が届いた。
〜その頃、南部拠点〜
とある地球人が1人、寝坊からやっと南の拠点に辿り着いたとこであった。
秋水「ひゃー!やっと着いた!」
突然拠点に現れた秋水に驚き、周囲の部隊が一斉に秋水を取り囲む。
その中でもリーダーと思しき男性が秋水に声をかける。
「貴様何者だ!? どうやってこの陣の中心に入り込んだ!」
秋水はもちろん、移動が楽な精霊解放を使って拠点まで飛んできたので当然誰の目に止まるでもなく、突然現れたように思われたのである。
秋水「いや、俺もこの作戦への参加者なんだ、到着がぎりぎりになってごめん。」
「参加者だと? ならば参加許可証を提示しろ。」
もちろんイレギュラーな形で採用が決まった秋水に、参加要請など元から届いてる訳もなく、そんなものは持ち合わせていない。
秋水「ごめん、そんなのもらってないんだけど?」
「なに!? ますます怪しいやつ! 指揮官へスキルを使って迅速伝令、正体不明のスカウトと思しき風貌の男がクルス南部拠点本陣に進入!」
「各隊、制圧準備、一撃で捕らえろ!」
刹那、ありとあらゆる拘束、無力化のスキルが秋水向けて放たれる。
『ありゃあ相棒、完全に結社側扱いだね。』
『いやほんとそれな、どうしよ、指揮官さんに連絡してるみたいだし、返答が来るまで開放で隠れるか。』
『それがいい、指揮官の野郎も今頃顔面蒼白になりながら制圧の中止を指示してるとこだろうよ。』
リーダーは、大量のスキルが飛んだ瞬間に秋水が跡形もなく消え去ったため驚きを隠せなかった。
「な、なんだ!? 誰だ! 奴を木っ端微塵に吹き飛ばした奴は!」
「捕らえねばなんの情報を得ることが出来ないではないか!」
しかし周りの部隊は困惑の表情を浮かべており、間違って攻撃系統のスキルを放った者はいなさそうに思えた。
そんな時、その場にいる全員の耳元に、先ほど聞いた声が聞こえた。
『いきなり物騒な人達だなぁ、一旦は避難させてもらうよ、君達の指揮官から正式に作戦参加者であるという通達が時期届くさ。』
はてさて、秋水が指揮官お墨付きの手練れの作戦参加者であり、それを知った南部拠点の全員が秋水に土下座をするのは重月まで半刻を切った頃である。
あけましておめでとうございます、もう早くも1月が終わろうとしております。
とりあえず更新です!
新年早々、ウイルス性の胃腸炎にヤられ会社を休んでゲーゲーしておりました、あ、別にそれで暇だったから書いたとかじゃないですからね!?決して笑
少しづつ、伝説を綴って行きます!
今年もよろしくお願い致します!