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見つけます、あなたにぴったりな病名を

作者: qmmkruz
掲載日:2026/05/27

短編です。

現代の「弱さ」と、その扱われ方について書きました。

気楽に読んでもらえれば十分です。

とあるクリニック。

一見、健康そうな男性を、医師が診察している。


「まだ全快には遠いですねえ」


「いや、そんなことないですよね。

 5個のうち、4個は治ってるんじゃないですか?」


「と言われてもねえ、こればかりは。

 まだ自覚症状があるっておっしゃってましたよね、前回。

 ああ、昨日でしたね。

 毎日来るというのはね、心が悲鳴をあげているんですよ。

 助けを求めて、ね。本人だけがそれに気付かないんです。

 ええ、ええ。不安になるのはわかります。大丈夫です。

 我々がついていますからね。心の病は根気よく。

 そうですね、今日はちょっと強めのお薬、お出ししておきますね」


「先生…」


「では、そうですね、この一つは”寛解”ということにしておきます。

 大丈夫です。お気をつけてお帰りくださいね。

 では…。

 じゃ、次の方お呼びして」



過酷の一途を辿る現代社会。

ピンチなのに隠されたスキルが発動しない、教育係の悪役令嬢にざまぁが起こらない、といった現代人特有の深刻なストレスに、人々はその幼気な心を傷つけられ、誰に相談することもなく、憔悴の闇に落ちていった。


診療内科クリニックは、そんな「傷ついた片翼の天使」達で繁盛、…もとい溢れていた。

彼らは求めた、万能のグリモワールを。そう、診断書という名のそれを。


神経症について、新たに数多くの病名が追加されていった。

増えていく病名に比例して、多くの人々にその診断が下されていった。


診断書を提出した被雇用者に対し、企業としては不労を認めざるを得なかった。

不労を認めなかったある企業が訴えを起こされた裁判、今月末に結審の予定だが、企業側の敗北が濃厚だ。


GDPは5年前の前年度比プラスを最後にマイナスへ転じ、今年度は前年度比-12%を見込んでいる。



<法律改正(即日適用)>

下記の疾病を特定準々々々疾病とし、治療に当たっては自己負担の割合を10割とします。

また、特定準々々々疾病の診断を受けている国民の皆様からは、特定準々々々疾病名使用税を徴収いたします。


--特定準々々々疾病(一覧)--


 ・このオレがヨエエエエエのは前世で間違えて封じられた

  魔王のそっくりさんだったからだ症候群


 ・パーティー(同期)で俺だけレベルアップ(昇進)しないのは

  モブだからなのかもしれない不眠症


 ・1000年前の悪役令嬢だけど糾弾も婚約解消もされない

  そもそも婚約も申し込まれてないんだけど強迫症


 ……



国営放送では30分をかけて、すべての特定準々々々疾病名を放送した。

民放のナナフシテレビではCMの都合上、3分の駆け足放送となったため、視聴者から「速すぎて自分の病名と照らし合わせられない」等のクレームが数千件、寄せられた。


件の裁判においても原告側が訴えを取り下げ、近く示談に合意する方向らしい。


そして数年が経過した。

この国は108個くらいの煩悩、もとい病気の根絶をWHOへ報告、世界から称賛を浴びた…のか?


読んでくださり、ありがとうございました。

現代の「弱さ」について、少しだけ角度を変えて書いてみました。

どこか一行でも引っかかるものがあれば幸いです。

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