非戦闘員の矜持
「まず魔物の出現頻度は」
と私は尋ねた。
「おおよそ1週間に1~2度ですね」
と副団長は答えた。
「指揮系統があるのでしょうか?」
と私は尋ねた。
「明確にあるのがわかるものと、指揮系統があるのかどうか不明なものがいます」
と副団長は答えた。
「魔物は何を食べていますか?」
と私は尋ねた。
「人も含む、生き物全般ですね。穀物を食べるかどうかはわかりません」
と副団長は答えた。
「行動パターンに特徴はありますか?」
と私は尋ねた。
「だいたい集団で襲ってきます」
と副団長は答えた。
「我が国は、どのような武器で戦っていますか?」
と私は尋ねた。
「剣と槍、弓矢、投石機。
あとは武器ではないですが、魔法です」
と副団長は答えた。
「投石機というのは、馬車くらいの巨大なものですか?」
と私は尋ねた。
「そうですね」
と副団長は答えた。
「魔法というのは?」
と私は尋ねた。
「魔法というのは、火・水・風・土の属性の攻撃魔法です」
と副団長は答えた。
「その魔法は誰でも使えるものなのですか?」
と私は尋ねた。
「一部例外を除いては、誰でも使えるものではありません」
と副団長は答えた。
「例外とは?」
と私は尋ねた。
副団長は少し困った顔をしている。
「それは、私が答えましょう。
例外とは、基本的な手続きを踏んで、供物を捧げる場合。
魔法が使えることもあるのです」
とヒナは答えた。
「使えることもあるというのは、
条件がまだハッキリとわからないということなのかな」
と私は尋ねた。
「恐らく、そうだと思います。
私を拾ってくださった賢者様が、そう言われていました」
とヒナは答えた。
「つまり、
その基本的な手続きや条件が、
明確になれば、素人でも使える可能性はあると」
と私は尋ねた。
「理論的にはそうですが、
いまだ誰もなしえていません」
とヒナは首を横に振った。
「私を召喚した際も魔法が使われたのだよな」
と私は尋ねた。
二人ともうなずいた。
そうか……、
この魔法の解析ができれば、元いた世界に戻れるのかもしれない。
しかし、そうなった場合、
この世界の住人はどうなる。
さすがに、見捨てるのは、気が引ける。
それにヒナはどうなるだろう。
お世話係として責任は問われないだろうか。
なら、可能性としては、こちらと元いた世界の掛け持ちだろうな。
それしかないだろう。
まぁ良い。
とりあえず、この戦力不足を埋めないとどうにもならない。
「剣、槍、弓矢の訓練に要する時間はどれくらいですか?」
と私は尋ねた。
「剣は3年、槍は1年、弓矢は3年くらいかけないと、実戦では使えません」
と副団長は答えた。
これを非戦闘員にやらせるのはムリだろうな。
「金属は足りていますか?」
と私は尋ねた。
「常に物資不足です」
と副団長は答えた。
だめだ。物資不足ならムリだ。
「投石機は量産できないのかな」
と私は尋ねた。
「投石機は大きいものなので、扱いも大変なのです。量産できなくもないですが、兵の数が沢山いります」
と副団長は答えた。
ちょっと待て、
ダビデ像。
ダビデって巨人に小さい投石機で勝ったんじゃなかったっけ。
「小さい投石機とかはないの?個人で持つタイプの」
と私は尋ねた。
「少数民族が使ってると聞いたことがあります」
とヒナは答えた。
「たしか村が壊滅して、貧民街に逃げてきた連中が50人ほどいたかと思います」
と副団長は答えた。
「その連中と会える?」
と私は尋ねた。
「では、今から向かいましょう。お供いたします」
と副団長は答えた。
私たちは、貧民街に向かうことにした。
想像通り衛生状態が悪く、いずれここもテコ入れしておかないと、きっと疫病とか起こって面倒な事になる。
そう思った。
その少数民族の連中はすぐに見つかった。
私はそのリーダーの男と話を始めた。
投石機を見せてもらうと、非常に簡単なものだった。
私は投石の実演をしてもらう。
その威力や命中精度は、副団長も驚くほどだった。
「この投石機は、素人でも作れるか」
と私は尋ねた。
「初めは上手くできないが、練習すれば、できるようになる」
とリーダーは答えた。
「では、この投石の技術はどうだ。すぐに身につくか?」
と私は尋ねた。
「教えれば1週間くらいで、まぁ上手くなる奴もいる。人によるな」
とリーダーは答えた。
「副団長。仮に村人たちが、この投石の技術を彼の半分程度でも身につけたとしたら、君らの負担はどうなる」
と私は尋ねた。
副団長は腕組をし、目を閉じて、じっと考えている。
「魔物をかなり削れるから、かなり楽ではあるだろうね。
しかし、どうなるかは未知数だ。
正直想像もできない」
と副団長は答えた。
「調整が必要だから、今はなんとも言えないが、あなた達を雇用したい。投石の先生として、可能か?」
と私は尋ねた。
「魔物に復讐ができるなら、お安い御用だ」
とリーダーは答えた。
「しかし、非戦闘員を戦闘に巻き込むことなどできない。危険だ」
と副団長は私の肩を叩いた。
「そうだな。危険だ。
しかし村人の気持ちになって考えてみろ。
なにもせず騎士団が勝つ方に命を賭けるのか。
それとも自分達が投石を覚えて、安全圏から石を投げることで、
賭けの勝率を上げるのか。
どっちを望む」
と私は尋ねた。
「俺なら、安全圏から石を投げるね」
とリーダーは答えた。
「ふっ、私もだ」
と副団長は笑みを浮かべた。
私は、ヒナ、副団長、騎士団長、リーダーとで会議をし、
・少数民族を投石の先生として勇者直轄として雇用する。
・少数民族は戦争には駆り出さない。
・少数民族を村々に派遣する。
という事を決めた。
また投石を戦争の道具としてではなく、娯楽として普及させる事で、長期的に防衛システムが安定すると考えた私は、定期的に投石大会を開き、受賞者には賞金を与える事を提案した。
これについては、騎士団長が王に提案すると言った。




