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先輩の要求

私の目の前に、先輩がいる。

……いや、彼女は亡くなったはずだ。


まぁいい。

話を聞こう。


「私の名はヒナ。この国で執務官の補佐を任されております。」

とヒナは頭を下げた。


ヒナ……。

まさか偶然だろう。


私は少し戸惑いながらも会釈をした。


「今この国は飢饉、内乱、魔王軍の侵攻という3つの問題に瀕しております」

とヒナは言った。


やはり、声も先輩と同じだ。

しかし、ここで問うのは適切ではないし、先輩なら怒るだろう。


「それで私が対応すべき問題はどれでしょうか」

と私は尋ねた。


「全部と言えば、望み過ぎでしょうか?」

とヒナは答えた。


「なるほど。現在手詰まりになっているのは、なにか理由でもありますか?」

と私は尋ねた。


ヒナは口ごもった。

あぁこれは、内部の意見調整、利権が関わる問題なのだな。

厄介な問題だ。


「申し訳ない。質問を変えましょう。時間制限はあるのでしょうか」

と私は尋ねた。


ヒナは少し考え、王に耳打ちをする。

王がうなづき、ヒナが側にやってきた。


そして

「この国は持って1年が限度です」

と耳元で答えた。


「……では、私が使える権限はどの程度のものですか」

と私は小さな声で尋ねた。


「配下として私と50名の兵。

それから金貨30枚、あとはこの国に伝わる伝説の武器と防具とマジックアイテムです」

とヒナは答えた。


「これは利権が絡み合った問題に、外部の侵攻が加わった問題だと判断して間違いないですか?」

と私は小声で確認した。


ヒナはうなづいた。


しかし、

近くで見ると本当に先輩に似ている。


でもこれはどう考えても、ゴミ案件だ。

先輩似の人が配下に加わるとしても、

こんなゴミ案件を拾ったら、商社マンとしては終わりだ。


「申し訳ございませんが、検討した結果、今回はお断りしたいと思います」

と私は頭を下げた。


王は眉一つ動かさず、

「ではやれ」

と言った。


衛兵たちが私に剣を突きつける。


まぁ死んでも、どうせ夢だろう。

鋭い剣先が頬を突く。

ちくっという痛みと、血の生暖かさが頬をつたう。


もしや、これは夢ではないのかもしれない。

その恐怖が頭をよぎった。


(はは……ははははははははは)

思わず笑いがこみあげてしまった。


「王よ!どうせ殺される身。お尋ねしたい。

勇者召喚にはどれくらいコストがかかる。

今まで何人の勇者を召喚できた。

そして今後勇者を召喚できる可能性は」

と私は叫んだ。


(無礼だぞ)

衛兵たちが声をあらげる。


私は衛兵たちの目をまっすぐ見る。

その目はどこか虚ろで、不安げだった。

やはりな。

私を殺せば、もう後はないのは、本人たちがよくわかっている。


「諸君!

事実確認をしましょう。

今現在内乱が起きている。

内乱が起きるのは、王権に対して不満を持っている者たちがいる証拠だ。

そして、ここにいる諸君たちも一枚岩ではないはず。

ここで王が私を処刑するという判断をしたのなら、

あなた達も、その家族の未来も、もうない。

あなた方は、王には歯向かえないだろう。

王も私に頭を垂れることができないだろう。

しかし、諸君らは、私に積極的に貢献することはできる。

そして王も、私に国王直轄という大義名分を与え、

これにより国を守るつもりがあるとアピールする事はできる。

すなわち、これは反乱分子への一手となる」

と私は叫んだ。


「では、お受けいただけるのか」

とヒナは尋ねた。


「いくつか条件はあるので、可能な限り協力いただけると確約頂けるのなら、

協力はしましょう。しかしムリなら、現実的に条件達成が不可能なためムリです」

と私は答えた。


ヒナは王の元に行き、耳打ちをした。


「王からお約束頂けました。では早速参りましょう」

とヒナは言った。


……

私は、王宮から10分ほど離れた屋敷に案内された。

大理石張りの室内ではなく、全体が木で囲まれた質素な屋敷だ。

室内や外の様子は中世ヨーロッパのようではあるが、よくわからない。


とりあえず、私はこの国の資料に目を通すことにした。

不思議なことに、言葉も聞き取れるし、日本語ではないのは明らかだが、文字も読める。


「飢饉というのは、主に何が原因なのですか?」

と私は尋ねた。


「旱魃が原因で、それに害虫の発生ですね」

とヒナは答えた。


「旱魃の被害は、主に穀物類でしょうか?」

と私は尋ねた。


「そうです。ですので今は芋を中心に回しております」

とヒナは資料を指さす。


「なるほど。降水量が減っているのですか?」

と私は尋ねた。


「降水量が減るというより、豪雨が増えているのです」

とヒナは答えた。


「つまり、全体としての降っている雨の量は少なくはなっていないが、一時的に豪雨になるので、水が流れて保持できないという理解で良いですか?」

と私は確認した。


「その理解で良いです」

とヒナはうなづいた。


「なら、ちょっとした土木工事なら、農民を動員できますよね」

と私は尋ねた。


「できますが、どのような?」

とヒナは不思議そうな顔をしている。


「穴を掘るだけです」

と私は答えた。


「その程度なら」

とヒナはうなづいた。


「これは私の権限でも動かせます?」

と私は尋ねた。


「はい。大丈夫です」

とヒナは答えた。


「そうですか。では飢饉問題は解決できそうです。

次行きましょうか」

と私は言った。


「ちょっと待ってください。穴を掘ってなぜ飢餓問題が解決するのですか?」

とヒナは動揺している。


あぁそうか。

基本的な知識がないのか。


「要点だけ言うと、

難しい話ではありません。

これは単純に水を保持できないという問題なのですよ。

つまり、

・水を保持できない。

・乾燥する。

・飢餓。

なので、水を保持できれば問題ない。

水を保持するには、穴があればそこに溜まる。

つまり旱魃での飢餓問題は、穴を掘れば解消する」

と私は答えた。


「理屈はわかります。

でも本当にそんな事できるのでしょうか」

とヒナは半信半疑のようだ。


「出来ている地域を見たことがあるので大丈夫かと思います。

あとやってみないとわからないでしょ。

ヒナさんも召喚成功すると思ってました?

いくら文献に載っているからといって、

やっていないと、わからないじゃなかったですか。」

と私は言った。


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