第7話「秩序の先触れ」
シン…と静まり返った市民広場の、肌を刺すように冷たい空気が後ろへと遠のいていく。目の前にそびえ立つ要塞の壁が、その静寂さえもゴクリと飲み込んでしまうかのようだ。「秩序の番人」総本部は、さながら黄金に輝く上層都市の心臓に突き立てられた黒曜石の刃。美しさよりも権威を優先した、無骨で効率的な力の塊だった。その鋭い角度は天そのものを切り裂かんばかりで、光も音も吸い込むような滑らかで暗い城壁は、黒い鏡のごとく磨かれた石畳の上に、威圧的な影をズシリと落としていた。
グンダーが揺るぎない足取りでスタスタと歩く一方、トムはその後ろを追いながら、巨大な鋼鉄の門の両脇を固める二人の衛兵をじっと見つめていた。彼らはまるで艶消しの灰色金属でできた彫像のようで、人間性を一切感じさせない閉じた兜の下でピクリとも動かない。だが、彼らには何かがあった。何か、チグハグで、間違っている何かが。彼らから発せられる冷徹な規律のオーラは、彼女がこれまで出会ったどの兵士のものよりも鋭く、古めかしい。それは衛兵の油断ない警戒心ではなく、獲物を待つ捕食者のような、張り詰めた静けさだった。
「彼ら、他の人たちと違う」トムは、押し潰されそうな沈黙の中、グンダーにだけ聞こえるよう、フッと息を吐くように呟いた。「鎧…紋章も。キサナトラの歯車がない。この街の番人じゃない」
グンダーは衛兵たちに見向きもしない。その猫のような瞳で要塞の上方をザーッと見渡し、見えざる網を広げるように気配を探る。「然り。そうではないからだ」彼の落ち着き払った確信に満ちた返答は、兵士たちの姿そのものよりも、どこか不気味だった。
「そうじゃないって?」トムは眉をひそめ、用心深さよりも好奇心が勝る。「どこから来たか分かるのか?」
「遥か西の果てより」グンダーが告げたその方角の名は、まるで判決のような予期せぬ重みを帯びて、冷たい空気の中にズンと響いた。
トムの表情がピシリと凍りついた。好奇心は木っ端微塵に砕け散り、たちまち氷のような険しい真顔へと変わる。肩は緊張し、両の拳は指の関節が白くなるほどギリッと強く握りしめられた。西の果て。それはただ一つの場所を意味していた。あらゆる命令が流れ出る絶対的な力の要塞、王国の心臓部。
「じゃあ…」彼女は歯を食いしばりながら、苦々しく無力な苛立ちを込めて囁いた。「……首都から…」
その言葉に呼び出されたかのように、要塞の重々しい扉がギィィ…と音を立てて開いた。それは歓迎ではなく、まるで獣の顎が開き、その腹の中の混沌を曝け出すかのようだった。兵舎の内部の空気は、感覚への衝撃波そのものだ。汗とパニック、そして過負荷になった機械から漂う金属臭がムワッと立ち込める。床を叩くブーツの音、怒号、そして必死に書類や報告書をめくるサラサラという音が混じり合った、耳障りな騒音が渦巻いていた。
キサナトラの青い制服を着た何十人もの兵士が、あらゆる方向へドタバタと走り回っている。彼らこそが本物の「秩序の番人」だったが、その顔は青ざめ、動きは切羽詰まっており、まさに半狂乱だ。書類の山を抱え、警告を発して点滅する通信端末を指差し、その体は今にもプツンと切れそうなほど、ピンと張り詰めていた。
そして、そのパニックの波の中を、さらに多くの「彼ら」が動いていた。門にいた騎士たちだ。兵舎の内部で、彼らはゆっくりと、規則正しく巡回している。そのズシン、ズシンという重い足音は、周囲の騒音を権威で押し潰すかのように響き渡る。彼らは地元の番人たちの慌ただしい動きを完全に無視し、兜を真っ直ぐ前に向け、まるで周りの男女がただの幽霊であるかのように振る舞っていた。彼らは無秩序の川に鎮座する規律の岩。その冷静さは、他者の無能さを無言で告発していた。
入り口のすぐ側で立ち尽くし、トムとグンダーは嵐の中の凪のように、その光景を眺めていた。首都の騎士たちの存在と、地元の兵士たちのパニック。それは、何か恐ろしいことが起きたのだと、明白かつ不穏に物語っていた。
大混乱の最中、トムは腕に危うげに書類の山を抱え、自分にぶつかりそうになったキサナトラの番兵一人を見つけた。彼女は素早い動きでその進路にスッと入り、その俊敏な体で兵士を急停止させる。その衝撃で、書類がガサガサと震えた。
「ちょっと待て!」彼女は騒音に負けないよう、毅然とした声で言った。
こめかみから汗を流し、青ざめた顔をしたその若い兵士は、神経質なエネルギーで体をブルブルと震わせながら、大きく見開いた野生的な目で彼女を見つめ返した。「何だ?こっちが崩壊寸前なのが見えないのか?」
「何が起きている?」トムは周囲の喧騒に目を走らせながら、食い下がった。「どうしてこんな大騒ぎに?」
「ダクトの内部崩壊だ!これでいいだろ、どいてくれ…!」彼は息を切らし、声は張り詰めて甲高くなっていた。
「ダクトの内部崩壊?」その言葉は意味をなさず、首都の衛兵が出動するほどの安全保障上の危機というよりは、単なる産業事故のように聞こえた。(なんだ、それ?)
だが、番兵は怯えた鼠のような素早さで、すでに彼女を避けていた。「遅れる!」彼は肩越しに叫び、すぐに狂乱の群衆の中へとゴクリと飲み込まれていった。トムは手を伸ばしたが、「待て!」という言葉は、兵士が消えると共に唇の上で掻き消えた。彼女は混沌の真ん中で、苛立ちの孤島のように取り残された。
その時、雑踏を切り裂いて、一声の叫びがハッキリと響いた。「トム!」
彼女は声のした方へクルリと振り返る。奥の壁際で、グンダーが手を振ってから、磨かれた金属の階段をスタスタと上り始めているのが見えた。トムは躊躇なく、急ぐ兵士たちの間をすり抜け、体当たりや謝罪の呟きを無視して、彼の後を追った。
二階は別世界だった。熱に浮かされたような混沌は、張り詰めた集中の静けさへと変わっていた。走り回るブーツの音は、真剣な会話の低い囁き声と、データ端末を操作するカタカタという規則正しいクリック音に取って代わられていた。「…上は随分と静かだな…」トムは、自分の心臓の鼓動が正常に戻り始めるのを感じながら、独り言のように呟いた。
グンダーは答えなかった。彼の目的は明確だ。広い廊下を迷いのない足取りでズンズンと進み、市の紋章がさりげなく彫られた、一対の背の高い黒っぽい木の扉の前で立ち止まる。そして、何の儀礼もなく、その扉をグイッと押して中に入った。
「グンダー、待てよ!」トムは抗議し、急いで彼に追いついた。
内部は、広大で威厳のある執務室だった。部屋の中央には二つの長いテーブルが平行に置かれ、そこでは番人たちが静かな切迫感を持って報告書を分析し、書類をまとめていた。部屋は奥にある巨大な窓から差し込む柔らかな光に満たされており、その窓は上層都市の黄金の塔が織りなす息を呑むような景色を縁取っていた。そしてそこに、まるでその風景を支配するかのように、一人の男がいた。
巨大な机の後ろに座り、彼は同じ青い制服を着ていたが、その制服は胸から肩にかけて金色の飾緒で飾られており、明らかに高い階級を示している。彼は絶対的な集中力で書類を読んでおり、その顔には真剣で超然とした表情が浮かんでいた。まるで階下の混沌が、下等な世界の些細な問題であるかのように。
他の番人たちの好奇心と不信の入り混じった視線をものともせず、グンダーとトムは真っ直ぐ彼に向かって歩いていった。二人の影が書類の上に落ち、その時初めて、男はゆっくりと顔を上げた。その灰色の鋭い瞳が、氷のような冷静さで二人を品定めする。
グンダーは一言も発しなかった。ただ手を伸ばし、正確な仕草で、金属製のブローチをカチャリと机の上に置いた。光の下で、「秩序の番人」の紋章――剣と二本の槍――がキラリと輝いた。だがそこに、キサナトラの歯車はなかった。どんな言葉よりも雄弁に語る、その些細な違いが。




