第49話「光の羅針盤」
朽ち果てた巨大な木製の書棚と、幾星霜も忘れ去られた古書の間を縫うように、一体の魔狼の巨体が猛烈な勢いで吹き飛ばされた。
ザシュッ!!
その体は既に真っ二つに両断されており、巨大な鎌のような爪が岩の床を擦り、鮮やかな火花の雨を散らす。
魔物の残骸は石畳の上で何度か痙攣し、やがて完全に絶命した。その肉体に刻まれた見事なまでの切断面——それは、無色透明の針の如き細さと精度で放たれた、異常なまでに圧縮された水流によるものだった。その凄まじい威力の残滓が、今はただ床のひび割れを伝い落ちていく。
ポタッ……ポタッ……
獣が吹き飛ばされてきた方向から、精霊のグンダーが歩み出た。彼が陣形の先頭に立ち、その後ろにドワーフたちが続く。『先触れ』と傭兵は、油断なく周囲を警戒しながら彼らを護衛していた。
グンダーの顔には、一切の動揺もない絶対的な集中が浮かんでいる。
グルルルル……!
青白く透き通るような毛皮を持った、さらに二体の魔狼がグロテスクな唸り声を上げた。奴らは致命的な跳躍で精霊に襲いかかり、病的な二重の顎を大きく開き、虚空を噛み砕きながら迫り来る。
だが、グンダーは微塵の緊張も見せず、胸の高さで右手を上げ、人差し指を天井に向けた。その無言のジェスチャーに応じるかのように、魔狼たちは空中でピタリと静止する。
精霊の傍らで、空間の湿気が形を成し、異常な圧力をもって魔物たちへ放たれた。それは新たなる無慈悲な水の針へと変貌する。
ズドォォォン!!
最初の個体と同じような残酷さで、二体の魔狼は後方へと吹き飛ばされた。その時、グンダーの猫のような瞳孔がスッと細まる。空気に混じる異様な魔力の振動を捉えたのだ。影の中で頭を低くしていた四体目の狼が、声なき遠吠えを天に向かって放った。獣の前に複雑な魔法陣が描かれ、グンダーの顔に純粋な驚きが浮かぶ。
その魔法陣はラグラムの詠唱に酷似していたが、神の気配が決定的に欠落していた。その神性の不在こそが、紛れもない闇の起源——悪魔の魔法であることを証明している。数秒後、呪文の中心から凶暴な黒き炎が噴出し、グンダーに向かって容赦なく押し寄せる。
ゴォォォォォ!!
右手を上げたまま、精霊は腕を横へ滑らせるように流麗に動かした。瞬時に分厚い水の壁が彼の前に立ち塞がり、黒炎の進行を阻み、その衝撃を完全に吸収する。
水の防壁が激しく輝きを放ち、流体から紫がかった巨大な結晶へと変質していく。グンダーが魔法を唱える魔狼に向かって掌を突き出すと、結晶は数百の鋭利な破片へと砕け散った。
パキィィィン!!
それは刃の雨となって悪魔に降り注ぎ、その体を原型を留めない醜悪な肉塊へと挽き潰した。
「グンダー!」
背後からフェンリエの警告の叫びが響く。精霊がそちらへ顔を向けた瞬間、頭上から漆黒の光の柱が彼を直撃した。
ズズズズズズ!!
その一撃は圧倒的な重圧と恐るべき密度を伴い、腐敗したエネルギー特有の、静電気と金属が混ざったような悪臭で空間を埋め尽くした。だが、その暴力的な圧力にもかかわらず、防御は既に完了していた。グンダーの頭上に新たな水の盾が浮かび、闇の閃光の重圧に耐えていた。
遥か頭上には、真の脅威が滞空していた。馬車ほどの大きさの、肉の球体のような姿をしたグロテスクな悪魔が闇の中に浮かんでいる。その怪物の中央には単眼があり、黄金色の病的な瞳孔からドロドロの血の涙を流していた。球体の周囲には無数の触手が蠢き、精霊への連続攻撃を支える不吉なエネルギーを脈打たせている。
グンダーは掌を上に向け、防壁を維持し続けていた。彼が手首を軽くひねると、盾の水分が爆発的に膨張し、底なしの魔法の奔流へと体積を増した。相手の動きを察知した悪魔は、すべての触手を精霊へと伸ばす。漆黒の光線がさらに太くなり、破壊力を増していく。
だが、グンダーは無類の自信に満ちた、恐ろしく洗練された穏やかな笑みを浮かべた。
精霊は指を曲げ、自らの手を拳銃の形にする。彼はゆっくりと腕を上げ、その怪物に狙いを定めると——発砲の反動を模して手を跳ね上げた。
ドシュゥゥゥン!!!
黒い閃光は一瞬にして消滅した。巨大な肉の球体は、側面から側面へと完全に貫かれた大穴を空けられ、天井から墜落した。魔狼たちを葬ったのと同じ、あの異常な圧縮水流魔法によるものだった。
戦闘の終結を目の当たりにして、グリムが長々とした口笛を吹いた。グンダーはすでに一団の前に優雅に降り立ち、腰に手を当てて、満面の誇らしげな笑みを浮かべている。
その後ろで、フェンリエは深くため息をついた。
(……まったく、心臓に悪いよ……僕の寿命が縮むかと思ったじゃないか……)
今度は、深く静かな安堵の混じった息が彼女の肺から漏れ出た。リリムドールは、首を切り落とされた魔狼の残骸に慎重に近づいた。異様に青白かった死骸はすでに形を崩し始めており、ゆっくりと黒い灰に変わって広間の湿った空気を漂っている。
「この魔物たち……適切な買い手がいれば、ちょっとした財産になる部位があるな」ドワーフは顎を撫でながら、品定めするような目で言った。「珍しい素材を扱う商人や錬金術師なら、この爪や牙に結構な額を出すはずだ。俺の目利きに狂いはないぜ」
その言葉に、ヴェルンの目が一瞬で輝いた。傭兵としての本能が、どんな警戒心よりも強く働いたのだ。彼は大股で精霊に歩み寄り、純粋な金銭欲に満ちた笑みを浮かべた。
「おい、砂場トイレの愛用者さんよ……」ヴェルンは馴れ馴れしくグンダーの肩に寄りかかり、声をかけた。「俺の相棒なら、このお宝たちが灰にならねぇようにする保存魔法くらい、知ってるよな?」
グンダーの猫のような目もまた、全く同じ強欲さを反射して輝いた。精霊は歯をむき出しにして、ニヤリと笑う。
「余を誰だと思っている。無論だ、この酔いどれ小僧」
数秒後、この奇妙な二人組は死骸の横にしゃがみ込み、恐ろしく滑稽な連携作業を始めていた。グンダーが獣の足に光り輝く停滞魔法をかけて魔法的な腐敗を食い止める横で、ヴェルンが外科医のような手つきで巨大な鎌の爪を切り落とし、金になりそうなものを次々と自分の袋に突っ込んでいく。
フェンリエは、完全に感情を失った顔でその光景を眺めていた。彼女の半開きの目は、危険地帯のど真ん中で魔物の死骸を切り刻んで無邪気に喜ぶ二人を、静かに裁いていた。
(……お金が絡むと、あの二人は妙に気が合うんだよね……僕には理解できないよ)
仲間たちを無視しようと、先触れの少女は再び朽ち果てた巨大な木製の書棚へと注意を向けた。彼女の好奇心は、歴史から忘れ去られた古書のひとつに惹きつけられた。
そっと、分厚い表紙のその本を引き抜く。しかし、彼女がそれを開こうとしたまさにその瞬間——長い時の流れで乾燥しきっていたページが崩壊した。紙はきめ細かい灰色の粉と化し、彼女の指の間で完全に崩れ落ちてしまったのだ。
バサッ……!
フェンリエはショックで目を丸くした。大人が気づく前にイタズラの証拠を必死に隠そうとするパニックになった子供のように、彼女は不器用に破片をかき集め、粉を棚の隙間に押し戻そうとした。
「お前さん、そこで何をしとるんじゃ?」
グリムのしゃがれた厳しい声が書棚の間に響き渡り、彼女の現行犯を捉えた。少女はピタリと固まる。ずんぐりとしたドワーフは腕を組み、深く咎めるような視線を彼女に向けた。
「儂らの仕事はここの偵察じゃぞ。その細っこい指を色んなとこに突っ込むんじゃない!」グリムは太い指を彼女に突きつけた。「ここの代物はどれも古くて腐りかけとるんじゃ。それに、こういう本には呪いや罠の魔法が仕掛けられとるかもしれんじゃろうが。全部そのままにしとけ。調査員が来たら、奴らに任せればええんじゃ!」
頬を膨らませて、明らかにムスッとした顔になりながら、フェンリエはボロボロになった表紙の残骸を棚の空いたスペースに戻し、手袋を叩いて汚れを払った。
「あの気難しいドワーフの言う通りだぞ」魔法の収穫を終え、立ち上がって手を払いながらグンダーが同意した。
ヴェルンは最後に戦利品を詰めた袋をベルトに縛り付けると、価値あるアイテムでパンパンに膨らんだ革袋を満足げにポンポンと叩いた。彼は精霊と共犯者のような視線を交わす。グンダーはコートの襟を正し、再び揺るぎない、洗練されたリーダーとしての姿勢を取り戻した。
「さて、先へ進むとするか」
◇
その後、一行はその広大で腐れ果てた知識の穴の隅々まで探索した。書庫を進むにつれ、それはもはや機械的な狩りへと変わっていた。道中でさらに悪魔を討ち倒し、残骸を後にするたび、傭兵と精霊の戦利品袋はますます重く、パンパンに膨れ上がっていった。
だが、戦闘の初期の昂揚感は、すぐに疲労へと取って代わられた。そこは巨大な書棚と粉々になった古書が織りなす、息が詰まるような迷宮だった。無情にも時間は過ぎていく。深淵の怪物たちを八つ裂きにすることすら、今や単調で完全に機械的な作業と化していた。
出口の兆候すら見つけられないまま、彼らはやがて書庫の中心エリアへと集まった。そこでは巨大な書棚が後退し、石の床にぽっかりと広い円形の空間を作り出していた。その開けたスペースは、ようやく一息つける小さな避難所となった。顔を上げると、遥か頭上に、彼らが降りてきたあの胸壁が見える。
円形の広間には、不満の呟きが響き渡っていた。彼らはレバーや隠し扉、岩に刻まれた謎解き、あるいは隠された封印の魔力残滓を絶え間なく探し求めていたのだ。
フェンリエは空っぽの棚の縁に腰掛け、休息を取っていた。『先触れ』の内なる静寂は、突如として空気の揺らぎによって破られた。彼女の瞳が、青い炎の輝きを捉えたのだ。それはちっぽけだが、催眠術のような輝きを放ち、一行のど真ん中で優雅に揺らめいていた。他の誰も、その存在に気づいている様子はない。
名状しがたい本能に突き動かされ、少女は木枠から滑り降り、その幽霊のような光に向かって歩き出した。常に鋭い感覚を持つグンダーは、フェンリエの無言のトランス状態に気づき、好奇心に満ちた視線で彼女の足取りを追った。精霊は、ヴェルンとグリムが険悪な言葉を交わし、リリムドールが熱くなった場を必死に身振り手振りでなだめようとしている隣の騒ぎなど、ほとんど気にも留めていなかった。
フェンリエは青白い指を伸ばした。彼女の肌が炎の表面に触れた瞬間——その異常は青白い光の閃光とともに爆発した。
カッ……!!
魔法の突風が広間の中心を吹き抜け、少女の髪と服を激しく揺さぶる。突然のまばゆい光が空間全体を覆い尽くし、言い争いをかき消した。全員が驚愕して顔を向ける。
光が収まると、フェンリエの目の前に荘厳な『アクセス・ポータル』が実体化していた。その古代の構造物は、宮殿の入り口で見つけたあの仕掛けと酷似していた。だが、中央に槍があるのではなく、長く面取りされた半透明の結晶が床からそびえ立ち、その機械の柱としての役割を果たしている。基部に刻まれた巨大なルーンの輪の上には、小さな球状の結晶が浮かび、彼らを引き寄せたのと同じ青いエネルギーを脈打たせていた。
一行は畏敬の念に打たれたように沈黙したまま近づいた。「先触れ」の少女は、宙に浮く球体へと手を伸ばす。
ブゥン……!
ほんの少し触れただけで、オーブは羽音のような音を立てて自らの命を宿し、流れ星のように天井へと向かって発射された。それは瞬く間に胸壁のラインを越え、垂直の暗闇の中へと消えていった。
その直後、眠っていた歯車が目を覚ました。ポータルの重い石の輪が互いに重なり合って回転し始め、重低音の摩擦音を響かせる。
ゴゴゴゴゴゴ……!!
速度は急激に増していく。神秘的なシンボルが白熱した色に輝き、蓄積されたエネルギーの密度によって周囲の空気を歪める。長い結晶から光が溢れ出し、無慈悲な魔法の奔流が五人を飲み込んだ。
彼らの周囲で、現実が砕けたガラスの鏡のように粉々に砕け散った。空間の欠片が、輝く渦の中で断片化していく。
パリンッ!!
瞬きする間に、カビ臭い書庫の冷たい空気は消え去っていた。彼らは再び宮殿の大階段、まさに石の道が二つに分かれていたあのプラットフォームに立っていた。あまりにも突然の場面転換に、一瞬だけ体が重く、方向感覚を失う。
今、岩の床のすぐ右側には、新たな「アクセス・ポータル」の構造物が荘厳な姿で彼らを待ち受けていた。低い壁の縁から深淵の広がりを見下ろすと、下の階の深い暗闇の中で、灯台のように点滅するあの青い水晶のオーブの孤独な輝きを確認することができた。
理解が、同時に一行へと降りてきた。宮殿の謎が、その機械的な論理を今まさに明らかにしたのだ。次に何をすべきか、その思考は完全にクリアになっていた。五人は一斉に顔を向ける。
全員の絶対的な焦点は、左の道の突き当たりで、重苦しい沈黙の中で彼らを待ち受ける、閉ざされた巨大な両開きの大扉へと注がれていた。
おはようございます、こんにちは、こんばんは、わるー……コホン! エーテルです!
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