第48話「悠久なる傲慢の重圧」
ゴゴゴゴゴゴッ……!!
凄まじい軋み音が四方八方に響き渡った。ドワーフと傭兵は重厚な両開きの扉に肩を押し当て、筋肉を限界まで軋ませていた。岩と金属が石の床に擦れ、何世紀もの放置の重みで悲鳴を上げている。
ついに封印が破られ、一行が足を踏み入れると、全員が息を呑んだ。出迎えたのは、圧倒的なスケールの光景だった。長い階段が数メートル下の吊り下げられたプラットフォームへと続き、そこから途方もなく巨大な古代の広間が姿を現したのだ。
内部の構造は、岩をくり抜いて造られたピラミッドや巨大なジッグラトを思わせた。各階層は、大人の背丈の倍はある巨大な一枚岩のブロックで構成されている。表面には豊かな彫刻と神秘的な刻み目が無数に施され、悠久の時を生きる松明の不気味な光にぼんやりと照らし出されていた。その揺らめく炎は、まるで時代の流れそのものに抗っているかのようだった。
最初の階段を下り、一行はプラットフォームに到達した。そこは分厚い胸壁に守られた展望台のようになっており、遥か下にある宮殿の真の床面を見下ろすと、目が眩むようだった。その中央の踊り場からルートは二手に分かれている。プラットフォームの左右に新たな階段が連なり、側面の壁に埋め込まれた別の荘厳な両開き扉へと薄暗がりの中を沈み込んでいた。
荒々しい幾何学模様の階段とむき出しの岩壁を除けば、その石の深淵には橋も近道も見当たらなかった。
「ホコリと忘れ去られた時間の匂いがプンプンしやがる……」ヴェルンが目を細め、千年の時を刻む壁を品定めするように呟いた。
「どうやら、我らの最終目的地はこの広間の底で眠っているようだな」グンダーは胸壁の端に近づき、底知れぬ深さを観察しながら結論づけた。
「ここから飛び降りられるんじゃないですか?」フェンリエが尋ねた。彼女は古い岩壁の縁にしがみつき、体を少し前に乗り出してから、精霊へと視線を戻す。「グンダーなら、私たちを安全に下まで運べますよね?」
グンダーは黙って紫の瞳を細めるだけだった。しかし、その答えは傍らから、ぶっきらぼうで不機嫌な声として返ってきた。
「そいつは不可能じゃ、お嬢ちゃん」グリムが即座に鼻を鳴らした。ドワーフはリリムドールから返されたばかりのモノクル越しに深淵を睨みつけ、環境の目に見えない気流を評価していた。
「どうしてですか?」少女は再び精霊に注目して問い詰める。
「空気に染み付いた、この圧倒的なエネルギーの密度のせいだ」グンダーは重く、揺るぎない声で答えた。彼らを取り巻く空気には、溶けた銅のような刺激臭と絶え間ない静電気のようなものが漂っており、呼吸するたびに肌を不快にチクチクと刺した。「余の能力についての見立ては正しい。余単独であれば、無傷で到達できるだろう。だが、この圧力の中で貴様ら全員を運ぶのは不可能だ」精霊の瞳が刃のように冷たく鋭くなる。「地面に触れる前に、貴様らは死ぬぞ」
ゾクッ……!
激しい悪寒が少女の背筋を走り抜け、彼女は頭の先から爪先まで震え上がった。事態の深刻さを理解したヴェルンは、すでに苛立ち混じりの長いため息をついていた。
「じゃ、じゃあ、私たちはどうやって降りればいいんですか?」フェンリエは急に涙ぐんだ声で尋ねた。
「たぶん、秘密はあそこにある構造物にあるんだろうぜ……」ヴェルンは背後の両開き扉へ親指を向けながら呟いた。
「下の階層に脱出ルートらしきものが見えるな……」リリムドールが自身の目にモノクルのレンズを合わせながら付け加えた。「俺たちは、どちらかの側面の通路を抜けて、底までの道を見つけるべきだろう」
「道は二つ。こっちは大所帯だ」ヴェルンは無造作に肩をすくめた。「二手に分かれようぜ」
「却下だ」グンダーが即座に切り捨てた。その厳しい声は、絶対的な権威を帯びて反響する。
「分かってる、分かってるって……」傭兵は胸の前で両手の手のひらを向け、防御の姿勢をとりながら言い返した。「お前はフェンリエと一緒だろ?俺はドワーフのオッサンたちに同行する。問題ないだろ」
「ならんと言っている」グンダーは頑として譲らなかった。ヴェルンは精霊に胡散臭げな目を向けた。その拒絶に本気で混乱しているようだ。「ここにある危険は、機械的な罠や隠された呪文の比ではない。この領域は神格によって築かれたものだ。どんなおぞましい怪物が影に潜んでいるか分からんのだぞ。常に陣形を維持し、行動を共にする必要がある」
ヴェルンは真剣な眼差しで精霊を見つめ返した。彼の目には苛立ちの火花が散っていたが、警告の深刻さは理解できた。グンダーの口調は絶対的であり、冗談や議論の余地は微塵もなかったのだ。
パンッ!
「わかりました!」フェンリエが両手を打ち鳴らし、乾いた音を立てて緊張を破り、一行の注意を引いた。「まずは私の後ろにある扉から、みんなで一緒に行きましょう!もしダメだったら、戻ってもう一つの方を試せばいいんです!」
(もしヤバかったら、とっとと引き返せばいいだけだ……)彼女は内心でそう割り切っていた。
「やっとお前さんから、まともな案が出たわい、お嬢ちゃん」グリムがぶつぶつ文句を言いながら、重い足取りで少女の横を通り過ぎる。
立体地図を投影するアーティファクトを手に、熟練のドワーフが先頭に立ち、まとまった一行を右側の荘厳な階段へと導いていった。
◇
ギギギギッ……!
岩が床を擦る荒々しい音が、古い壁に響き渡った。今回は熟練のドワーフだけがその役割を引き受け、重厚な両開き扉の片方だけをこじ開け、もう片方は完全に閉ざされたままにしておいた。
人が通れるほどの十分な隙間が開くと同時、グリムは力強い足取りで先頭に立った。その小さな目はすでに周囲の暗がりを鋭く評価している。
「ここは上とは違うようじゃ。サディスティックな罠は仕掛けられとらん」彼はタコだらけの手についた埃を払いながら言った。
通路は巨大な石壁に突き当たっており、完璧に区画された回廊を形成していた。
敷居をまたぐと、一行は分岐点に直面した。右側はトンネルが数メートル伸びた先に入口があり、そこから左へとカーブしている。
反対に、左の道はすぐに急な曲がり角で途切れ、強制的に右へと引き返させる構造になっていた。しかし、その第二のルートで何よりも不穏だったのは、床や壁に投影される長く歪んだ影のマカブルな舞踏だった。それは、すぐ先で何かが蠢いていることを如実に物語っていた。
戦術的な慎重さを選び、彼らはまず安全そうな左の道を進んだ。狭い角を曲がると、そこには小さな岩の胸壁があった。その即席のバルコニーから見えた光景は、施設の内部構造と下層階をむき出しにし、再び全員の息を呑ませた。
そこは、時に忘れ去られた巨大な図書館だった。タイタンが闊歩するような広間の円形壁は、遥か下方の薄暗がりへと消え去り、黒ずんだ木と腐食した金属の棚で完全に埋め尽くされている。それは見渡す限り上へと這い上がっていた。
数万冊にも及ぶ黒い装丁の魔導書、黄ばんだ羊皮紙、不可思議な記録が、閉所恐怖症を誘発するような無秩序さで眠っている。螺旋階段や崩れかけた吊り橋が、混沌とした蜘蛛の巣のように広間の空中を行き交っていた。
光源は、柱に埋め込まれ、何世代にもわたって決して消えることのなかった先程の松明だった。それらが葬送のような光を放っている。空気は濃密で、カビ臭い紙の息苦しい匂いと、腕の産毛を総毛立たせる目に見えない静電気が充満していた。
「あれは……何ですか?」フェンリエは指を差した。冷たい岩の壁を強く握りしめた彼女の指の関節は、真っ白になっていた。
(……冗談だろ、おい……)彼女は恐怖で引きつる顔を隠しながら、頭の中で毒づいた。
「どうして今まで姿を見せなかったのか、不思議に思ってたところだぜ……」ヴェルンが重いため息をついた。首筋を擦る彼の顔には、純粋な疲労と先の思いやられる苛立ちが浮かんでいた。
「先ほどグリム殿が言っていた、罠がない理由がこれで完璧に説明がつく」グンダーが非の打ち所のない、落ち着き払った声で補足した。精霊は礼儀正しく少女の隣まで進み出ると、壁に手を置く。「あれは、このような放棄された遺跡が、何世紀にもわたって淀んだ高密度の魔力に浸かり続けた果てに生まれるものだ」
リリムドールとグリムも縁に近づいた。
ゴクリ……
唾を飲み込み、フェンリエは勇気を振り絞って再び下を覗き込んだ。
「悪魔だ……」グンダーは鋭い冷酷さをもって答えた。
下層の巨大な本棚の間を這い回り、その忌まわしき怪物どもが長きにわたる闇をパトロールしていた。一匹の獣は、異形に歪んだ狼のような気味が悪いシルエットを持っていた。体毛は一切なく、細い骨の上に青白く透き通った皮膚が張り付いている。足の先は黒いキチンの長い鎌になっており、一歩進むごとに石を引っ掻き傷つけていた。そして、鋭い牙がびっしり生えた左右二つの顎に裂けたような鼻面で、周囲の埃の匂いを嗅ぎ回っている。
その獣のすぐ真上を音もなく浮遊していたのは、壁に不規則な影を投影していた元凶となる恐怖だった。馬車ほどの大きさがある肉の塊のような球体。その中心には、充血した黄金の虹彩を持つ巨大な単眼が鎮座している。周囲には何十本もの棘だらけの触手が這い回り、狂乱する毒蛇のように濃密な空気を鞭打っていた。
ドンッ!
「よし。どれだけクソッタレな状況かは理解したわい」グリムがぶつくさ言いながら、ブーツの底を石の床に打ち付け、一行の硬直状態を破った。「ここで上からヨダレを垂らして見ていても、下には着かんぞ。さっさと行くじゃ」
◇
右の道へ戻ると、左の分岐だと思われていた先は暗い階段へと続いていることが判明した。階段を下りると、先ほどと全く同じ建築様式の回廊に出た。天井は数メートルの高さにそびえ立っていたが、幅はせいぜい四、五メートルと狭い。扉も、窓も、隣接する部屋もない。ただ冷たく彫り込まれた岩のブロックが壁を形成しているだけだった。
トンネルは基本的に直線的な軌道を描いており、時折急なカーブや新たな下り階段が点在していた。それは彼らを容赦なく、ただ一つの目的地へと押し流していく。
進むにつれて、下層の図書館から放射される魔力の圧力は圧倒的なものになっていった。放棄された遺跡が彼らを歓迎することに決めたのは、まさにその手で触れられそうなほどの緊張の瞬間だった。
長い回廊の突き当たり、左側に巨大なアーチが見え、一行は足早になりかけた。だが、その敷居を跨いで新たな空間へと足を踏み入れる直前、グリムが即座に立ち止まり、全員を同時に強制停止させた。
ピタッ!
「感じるか?」グンダーが尋ねた。精霊は静かに歩み寄り、ドワーフの前に立った。
「儂のように、一生涯を厄災まみれの穴ぐらで探索しとると、こういう感覚には慣れてしまうもんじゃて……」ベテランのドワーフは荒々しい唸り声で答え、重い足取りで二歩後退し、息子の背後をカバーした。
ヴェルンは一言も発することなく、フェンリエの肩に手を置き、一歩前に出た。傭兵の無言の接触と防御的な態勢は明確なメッセージを伝え、少女が戦闘態勢に入るにはそれで十分すぎた。
カチャッ……!
彼女は右腕を正確な角度で持ち上げた。くぐもった金属音と共に、袖の下の機構から小さな銀色の棒が射出され、宙を舞うそれを少女は見事に掴み取る。魔力が金属合金を流れ、武器は瞬時に拡張された戦闘形態へと実体化した。フェンリエは足場を固め、両手でそれぞれ柄の端を握り、中間部分を自身の背中に預けるように構えた。
ヴェルンはそのまま歩みを進め、グンダーの隣に陣取ろうとした。しかし、精霊は横柄に腕を上げ、元騎士にそこで止まるよう断固たる仕草で要求した。
傭兵は目を細め、精霊の背中を睨みつけた。
(……何様のつもりだ?)彼は内心で舌打ちをした。
「貴様ら二人は、ドワーフたちを守るだけでいい。番犬どもは余が処理してやろう」グンダーは青白い顔を振り向くことすらなく命じた。
バサバサバサッ!
精霊の豪華な紫と金のオーバーコートが、回廊の奥底から発生した幽霊のような突風に煽られ、激しく鞭打ち始めた。静電気と腐敗した魔力の匂いがトンネルに充満する。彼らの目の前で、黒ずんだスミレ色の炎が何もないところから弾け、空気そのものを引き裂いた。
ボワァッ!
フェンリエは目を丸くし、ブーツの底が振動するのを感じた。何千年もの厚い埃の層、瓦礫、そして散らばった小石が石の床を擦り始めた。忘れ去られた破片はゆっくりと浮遊し、まるで自らの意志を持っているかのように幻の炎へと引き寄せられていく。
カタカタカタ……!
暗い炎の地獄の中で、人型の骨格が再び立ち上がり始めた。それらは腐食した鎧を身に纏い、何世紀も前に消滅した帝国の錆びついた武器を握りしめていた。
「す、スケルトンです!」少女は息を呑んだ。声のトーンが上がり、その瞳は純粋な魅惑に輝いている。「私たち、本物のダンジョンにいるんですね!!」
(マジかよ、テンプレ通りのダンジョンじゃん!!)彼女は恐怖よりも興奮で胸を高鳴らせていた。
「お前さん、頭のネジが飛んどるんじゃないか、お嬢ちゃん……?」グリムは深く呆れ返り、首を横に振りながら鼻を鳴らした。
「この手の霊廟での常套手段だな……主の腐り果てた栄光を守るため、死者を土の底から這い戻らせるとは」グンダーは冷ややかに呟いた。「哀れすぎて言葉も出ん」精霊の猫のような瞳孔が開き、絶対的な軽蔑を放っていた。
スケルトンの歩兵部隊は、不格好だが容赦ない足取りで精霊に向かって行進し始めた。ギザギザの剣が振り上げられ、槍が前方に突き出される。ボロボロの外套をまとったアンデッドたちは不気味な杖を引き抜き、耳に聞こえない魔法の詠唱を始めた。
「消え失せろ」
その命令は、怒りも労力も伴わずにグンダーの唇から発せられた。それは、単なる「現実の宣言」であった。
パキッ……!
空気が弾けた。黒い炎は瞬きする間に消滅した。彼らを支えていた冒涜的な魔力との繋がりが絶たれ、怪物たちの整合性は一瞬にして崩壊した。
ガシャァァンッ!
鎧は無用の長物と化して音を立てて落下し、何十もの頭蓋骨や肋骨が石板に叩きつけられ、無害な白い粉へと還元された。
フェンリエと二人のドワーフは、完全に呆気にとられて瞬きをした。一行の緊張は数秒で空気が抜け、少女とリリムドールは同時に肩を落とした。彼女は未遂に終わった戦闘へのフラストレーションに溺れてため息をつき、彼は純粋な安堵から深呼吸をした。
ヴェルンは首の後ろを掻いた。面倒な力仕事を精霊に丸投げできるという彼の最初の直感は、今、見事に的中したのだ。
「結局のところ、魔法は魔法に過ぎん。常に、より強大な力を持つ者が勝つのだ」グンダーは、揺るぎない優越感に満ちた声で、むしろ自分自身に言い聞かせるように呟いた。
パパンッ
グンダーは両手で自身のオーバーコートの襟元を払い、初歩的な呪文で簡単に綺麗にできるはずの、架空の埃をはたき落とした。精霊は顎を高く上げ、信じられないほど誇らしげな笑みを浮かべて仲間たちを振り返った。
「ただの原始的な召喚術に過ぎなかった。余の手におえない代物では断じてない!」
「ほんなら、行くとするか……」グリムはぼやきながら再び先頭に立ち、小刻みな歩幅で一行を置いて歩き出した。「そこの気取ったお坊ちゃんが汚れ仕事を引き受けてくれるんじゃから、尻尾を巻いて怯える理由もなかろうて」
こうして、一時的に士気を取り戻した一行は石のアーチをくぐり抜け、ついに恐るべき悪魔たちが待ち受ける巨大な空中図書館へと足を踏み入れたのだった。
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