第3話 「錆雲の上」
薄汚れた窓の隙間から、朝の最初の光がスッと差し込んでくる。湿った木と壁に染み付いたカビの匂いがする部屋に、金色の光の筋がいくつも伸びていた。冷たい朝の空気は、目覚め始めた下の街の遠い響きを運んでくる。遠くで歯車がギシギシと軋む音や、路地裏から上がってくる人々のざわめきが微かに聞こえた。
ベッドの傍らでは、グンダーがすでに起きていた。昨日の怠惰な姿とは裏腹に、彼は音もなく効率的に動き回っている。黒い短髪が縁取る集中した顔で、彼は旅支度を整えていた。猫のような縦長の瞳孔を持つその目が、隣のベッドに向けられる。そこでは、白いシーツの下で小さな山がもぞもぞと動き、一日の始まりを拒むかのように薄い布を揺らしていた。
「おい、もう日が昇っているぞ」グンダーの声は穏やかだが、断固としていた。
**ううーん…**と、くぐもった細い声だけが返ってくる。彼の目は焦れったそうに細められた。
「二度とは言わんぞ!」彼はそう唸ると、無造作かつ素早い動きでシーツをバサッと引き剥がした。
そこには、突然の寒さにキュッと身を縮こませた一人の少女が横たわっていた。まだ固く閉じられた目、その繊細な顔には純粋な眠気が張り付いている。
「さむいー!」彼女は不満そうな子供のように、舌足らずで甘ったれた声で文句を言った。
「やれやれ…」グンダーが応えたのは、それだけだった。いつもの日課の重みが、彼の言葉に滲んでいた。
少女はまだ目も開けぬまま、ベッドの上にのそりと起き上がる。彼女が身につけているのは、袖なしの簡素な白い寝間着だけ。それは、夜の間に起きた変化をほとんど隠せていなかった。腰や脚の柔らかな曲線、華奢で繊細な肩…昨日のほっそりとした少年らしい体つきは裏切られ、女性的なラインが戻ってきていた。
「今夜はずいぶんと伸びたな、イングリッド…」グンダーは彼女の後ろからベッドに膝をつきながらコメントした。彼の左手が、手慣れた様子で彼女の髪に触れる。軍隊式の短髪はほとんど崩れ、彼の髪に届きそうなほど目に見えて長くなっていた。
毛先は鮮やかな緋色を保っているが、最も衝撃的な変化はその根元にあった。頭皮から純粋な雪が広がるように、月光のような白に近い灰色が、新しく伸びた部分をすべて染めている。彼女を支配した魔術的な不安定さが、クッキリと刻んだ傷跡だ。
「……トムと呼べ……」彼女は眠たげな甘え声で、もう一つのアイデンティティを拒絶した。
「心配するな、トム」グンダーは、その名を皮肉な譲歩のように響かせながら、フッと優しく笑った。「近くに生命の気配はない。それに、万が一誰かがお前の朝の癇癪を聞きたがったとしても、無理な話だ。ここに着いてすぐに、この部屋には防音の結界を張っておいたからな」
その言葉に、イングリッドことトムは、またうーんと眠そうなうめき声を漏らした。グンダーは右手で鋼の鋏を掲げる。その刃が朝日にキラリと光った。彼は一連の正確で素早いカットで、彼女の髪をチョキチョキと刈り始めた。白と緋色の小さな毛束が、ハラハラと静かにシーツの上に落ちていく。彼女の頭が次第にカクンカクンと揺れ、眠気に負けそうになったところで、彼が警告した。
「おい!寝るな!耳を切り落とすぞ!」
彼が終わる頃には、彼女の髪は再び厳格な軍隊式の短髪に戻り、根元の白い染みは一層際立っていた。まだ眠そうな表情のまま、彼女は彼の次の命令に従った。
「腕を上げろ」
イングリッドはそろりと腕を上げる。グンダーは彼女の頭上から寝間着をスポンと引き抜き、下着だけの姿にした。彼女の腕が眠さのあまりだらりと下がり始めたが、彼の厳しい一瞥でピシッと元の位置に戻った。彼女の後ろに立ち、彼は厚い布地の補正帯を手に取る。グッと力強く一引きすると、彼はそれを彼女の胴に巻きつけ、胸が完全に平らになるまで締め上げた。
「ぐっ!」イングリッドは息を詰まらせ、肺から空気がヒュッと押し出された。
「きつすぎたか?」彼は、同情の欠片もない声で尋ねた。
「うん…もっと丁寧にやれよ…痛い…」彼女は張り詰めた声で訴えた。
「痛くしてやってるんだ!さっさと目を覚ませ!」
彼女はプイッとそっぽを向いた。グンダーはベッドから立ち上がり、すでに用意していた服を彼女に投げつける。厚い生地のシャツが彼女の隣に落ち、ズボンは顔面にバサッと当たった。
完全に服を着替えた後、彼女は小さな化粧台の上の割れた鏡に映る自分を見つめた。断片化した姿は、心をかき乱す不協和音だった。ゆったりとした男物の服を着ているが、狭い肩と腰の微妙な輪郭が、まだ体の女性的な曲線を物語っている。そして何より、髪が、刈り込まれているにもかかわらず、あの不自然な白さでギラリと光っていた。見せかけは不完全で、脆い。
その時、部屋の空気がズンと重くなった。彼女は、グンダーの低く響く声で唱えられる、未知の古語による詠唱を耳にした。いつものように、イングリッドは彼の方を向く。呪文を唱えるグンダーは、人差し指を少女の額にトンと当てた。彼の猫のような瞳が、青みがかった強烈な紫の光でギラリと輝く。
魔術が彼女をフワリと包んだ。幻影が第二の皮膚のように体に定着するのを感じる。肩幅が広がったように見え、腕や手の筋肉は細いながらもより男らしい輪郭を得た。腰のラインは真っ直ぐになり、脚は柔らかさを失い、より引き締まって見えた。彼女の体は変身した。いや、変身したように『見えた』。幻影の下では、イングリッドはまだ少女のままなのだから。
彼女は鏡に向き直った。顔の変化は少ない。首が少し太く見えるが、顎、唇、鼻、そして何よりも、長くて睫毛の多い大きな目はそのままで、彼女の偽りの中で最も隠すのが難しい部分だった。
彼女はギリッと眉を寄せ、もどかしい懸念が顔に浮かぶ。だがその時、最後の変化が現れた。彼女は目をカッと見開き、安堵の笑みが唇に浮かんだ。ゆっくりと、紙にインクが広がるように、白い髪が色を取り戻し、彼女がよく知る深い緋色に染まっていく。月の斑が消えた。トムが戻ってきたのだ。
「ふぅーっ!」グンダーは芝居がかったため息をつき、存在しない汗を拭うかのように腕で額をぬぐった。彼は大げさな誇りで胸をドンと張る。「余の優れた手による、また一つの偉業が成し遂げられたな!」
「はいはい。ご苦労、グンダー」トムは、乾いた声の中に諦めを滲ませて答えた。
抑制の儀式が終わり、粗末な朝食――宿が茶と呼ぶ、硬いパンと得体の知れない味の温かい液体――をガツガツと済ませると、二人はついに下層都市の灰色の光の中へ出た。通りはすでに混沌としたエネルギーでごった返していた。石炭の燃える匂いと熱された金属の匂いが、地面の格子から漂う下水の悪臭と混じり合う。顔を汚した労働者たちが狭い通路でひしめき合い、金床を叩くハンマーの音が、彼らの旅路に絶え間ない工業的なサウンドトラックを奏でていた。
二人は数分間黙って歩き、トムが忘れられた巨人の骨のようにそびえ立つ、錆びた金属の構造物を眺めていると、ガラスの破片のように鋭く低いグンダーの声が、周囲の騒音を切り裂いた。
「少しは慎重になれ、トム」
「僕が何をしたって言うんだ?」トムは、体の幻影と同じくらい偽りの無邪気さを声に込めて、地面の油っぽい水たまりに視線を落としながら言い返した。
「昨夜、あの男の挑発にまんまと乗せられたな」グンダーの声は、警告から明らかな叱責へと変わる。「お前は演技を放棄し、封印を解いてしまった。今やあの男はお前のことを知っている!奴は『斑』(はん)が顕現するのを見たんだぞ」グンダーはピタッと足を止め、トムも止まらざるを得なかった。彼は振り返り、その顔に浮かぶ苛立ちは冷たく、本物だった。「一体、あの酔っぱらいに何の用があったんだ?」
「彼は『賢者』だった…」トムは、通りの騒音にかき消されそうなほど小さな声で、視線を落としたまま呟いた。
グンダーの顔から苛立ちがスッと消え、突如として強烈な集中力に取って代わられた。「ほう?『賢者』だと?」彼は手を上げ、考え込むように指を顎に当てる。その猫のような目が、情報を処理しながらキュッと細められた。『賢者』。すでに複雑すぎるゲームにおける、危険なジョーカーだ。
「もういいだろ、その話は!」トムは、自分が見透かされたように感じて抗議した。
グンダーは彼女を完全に無視し、計算に没頭していた。人の流れの真ん中で立ち止まる二人の囁きは、好奇の視線を集め始める。群衆の中には、昨夜の酒場にいたような、見覚えのある顔がいくつかあった。トムは募る苛立ちでグンダーを睨みつけていたが、彼女の態度に何かが変わっていた。肩はより真っ直ぐになり、顎は上がっている。不満はそこにあったが、それは甘やかされた子供の癇癪ではなく、対等な者の不満だった。
その微妙な変化を、グンダーは見逃さなかった。彼は横目で彼女を見て、その目に驚きの色がキラリと浮かんだ。「おや?昨夜の小僧の言葉を、実に素直に受け入れているじゃないか」
「男らしく見られたいなら、まず自分が男だと認めなきゃなって言われたんだ」トムは、髪と同じように顔をカァァと真っ赤にしながら認めた。「で…まあ…お前も知っての通りだ!」
ゆっくりとした、本物の笑みがグンダーの顔に広がり、彼は小さくも確かな誇りを感じた。「なるほどな…」彼は手を上げ、トムの短髪の上にポンと置くと、愛情を込めてわざとわしゃわしゃとかき混ぜた。「そうだ。いい子だ」彼は堪えた笑いと共に言った。
トムは彼の手をパシンと叩いて払いのけた。「だったら、昨日だってもっと早く来いよ!」彼女は羞恥心を隠すために話題を変えた。
「おい!あのガキだ!」
しゃがれた聞き覚えのある声が、空気を切り裂いた。昨夜と同じ三人のチンピラが群衆から現れ、道を塞ぐ。リーダーは折れた腕を汚れた吊り布で固定し、その目は憎しみと屈辱でギラギラと燃えていた。
「今日はあの酔っぱらいもいないようだな」一人が、残酷な笑みを浮かべて言った。
「今こそ復讐の時だ!」リーダーが唸る。
だが、トムとグンダーの注意は別の場所にあった。彼らは三人の男たちを風景の一部であるかのように無視し、自分たちの口論を続けていた。
「何だと?助けは要らないだの、一人でやれるだのと言っているのは、どこのどいつだ?」グンダーは肩をすくめ、軽蔑するように目を閉じてフンと鼻を鳴らした。
「そりゃ…そうだけど!」トムは声を荒げた。「でも、『あれ』が起きた時は別だ!」
「俺たちを無視するんじゃねえ!」三人目のチンピラが、額に血管をピクピクさせながら叫んだ。
彼らは無視された。グンダーは片目だけを開け、その縦長の瞳孔にからかうような光を宿す。「だが、余はそうしたぞ。余が現れたのは、『あれ』が起きた時だけだ…」
「だったら、その前に動け!」
屈辱にカッとなったリーダーは、動く方の手で短剣を抜き、グンダーの胸に突きつけた。「このクソ野郎ども!ふざけるのも大概にしろ!」
ほんの一瞬だけ、グンダーは彼を見た。その顔は穏やかで、退屈しているかのようだ。彼の唇が動き、怒りも力みもなく、しかし周囲の音を吸い込むかのような絶対的な権威を込めて、一つの言葉を紡いだ。
「――倒れろ」
すぐに、グンダーはトムに注意を戻し、何事もなかったかのように挑発を再開した。まだグンダーに腹を立てているトムもまた、彼を無視していた。
だが、残りの二人のチンピラは違った。彼らは見ていた。リーダーの目が、陶器の人形のようにうつろになるのを。彼の体がフニャリと弛緩し、短剣が指から滑り落ちてカランと音を立てるのを。彼がアスファルトに叩きつけられる前に、完全に力を失い、芋袋のようにドサッと崩れ落ちるのを。抵抗も、音もなかった。彼はただ…機能停止した。
恐怖の沈黙が、彼らの周りにシンと広がった。残された二人のチンピラは、恐怖で青ざめ、ガチガチに凍りついていた。
「行くぞ」グンダーはついにそう言うと、トムの肩をポンと叩き、歩き始めた。「『番人』の摂政官がお待ちかねだ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
上層都市への道は階段ではなく、飛翔だった。恐怖でガチガチに固まった二人のチンピラを後にし、グンダーはトムを小さな広場の中心にある円形のプラットフォームへと導いた。投入口に数枚の硬貨がチャリンと音を立てると、金色の金属とガラスでできた鳥籠が天から降りてきた。その歯車は、下層都市の混沌とした軋み音とは正反対の、滑らかで心地よい唸り声をブーンと立てながら回転していた。
鳥籠はスルスルと上昇を始める。それを吊るす金属から離れる瞬間にガタンと小さく揺れた。歯車がギィィと回転する音が響く。トムは上を見上げ、黒い鋼の鎖が自分たちを引っ張り上げていくのを見つめていた。
上昇はめまいがするほど速く、金色の金属とガラスの鳥籠の中での静かな飛翔だった。少女は透明な壁に顔をぴたりと押し付け、純粋な感嘆のため息をはぁーと漏らし、一瞬パネルを曇らせた。
「グンダー…すごい、高いよ…」彼女は目をまん丸に見開きながら囁いた。その瞳には、錆と生命の複雑な模型へと変わっていく下層都市が映っていた。ついさっきまで彼女の世界の全てだった、屋根と密集した通りの巣が、今や遠い蟻塚のように小さく見えた。
「ただのエレベーターだ、トム…落ち着け」グンダーは彼女を見ずに応えた。その穏やかな声は、少女の興奮を鎮める錨のようだ。しかし、彼の猫のような目は止まってはいなかった。彼は景色をじろりと見渡し、認めはしないが、低い太陽を背景にした風景、街を囲む砂漠と不毛な山々が、胸の内に静かな感覚をもたらしていた。
彼女は下を見下ろし、光がほとんど届かない目がくらむほどの深淵、その全てを支える土台となっている忘れられた悲惨の井戸、絶対的な暗黒の『奈落』を垣間見た。背筋にゾクッと悪寒が走った。
その時、一種の垂直なトンネルを通過し、黄色がかった霧の層を突き抜けると、光が波のようにザパンと彼らを打ちつけた。
カプセルがプシューと音を立てて開き、彼らを迎えた空気は清潔で、新鮮で、未知の花のかすかな香りがした。トムは一歩外へ踏み出してピタッと止まり、呆然と口を開け、息を呑んだ。そこは、黄金に輝く世界だった。
ここのエネルギーは、生命と色彩と野望の交響曲のように、目がくらむほどの強さでジンジンと振動していた。磨かれた鋼の塔と青銅の螺旋が、完璧な青空を引っ掻くようにそびえ立っている。ありえない色彩の花々で満たされた空中庭園が、優雅な建造物からわさわさと垂れ下がっていた。
「あれ見て!」彼女はプラットフォームの端までタタタッと駆け寄り、建物の正面に彫られた金属の樋を流れる、水晶のような水の滝を指差して叫んだ。「水が…壁を伝って流れてる!どうなってるの?」
「人間の工学も大いに進化したものだな…」グンダーは、声に驚きの色を滲ませて言った。彼は近づき、彼女を導くようにその肩にぐっと手を置いた。「だが、集中しろ。観光に来たわけではないぞ」
しかし、集中するのは難しかった。細部の一つ一つが驚異だった。広い大通りを埋め尽くす人々は、街そのものの脈動だった。非の打ち所のない仕事着を着た男女、ゲラゲラと大声で笑う友人たちのグループ、散歩する家族連れ。緋色の髪の少女は、一つの場所にこれほど多くの笑顔を見たことがなかった。彼女はその場所の本質を直感的に理解した。ここは目的地であり、誰もが働き、買い、夢を見るためにやってくる舞台なのだと。
建物の壁は生きており、催眠術のような映像で踊るホログラムや発光パネルで覆われていた。
「ああいう場所は何なの?」少女は、「王の気まぐれ」と書かれた看板の前で立ち止まり、尋ねた。看板では、金色のカードのデッキが魔法のように空中でシャッフルされていた。「魔術師のギルドか何か?」
「そんなところだろうな」グンダーは、彼女が歩き続けるように腕を優しく引きながら、低く鋭い声で答えた。「硬貨を消し去る類の魔法を実践するギルドだ。本物の魔術師がやることではない!」
「でも…でも…王様って?」トムは、腕を引かれながら、ほとんど泣きそうな声で抗議した。
「いいから、とっとと来い、この頑固者!」グンダーは、顔に苛立ちと焦燥が浮かび始め、文句を言った。
彼女は従ったが、その好奇心旺盛な視線はキョロキョロと全てを物色し続けていた。上を見上げると、商業都市のはるか上空に、別世界のものと思われる、穏やかで銀色の尖塔の先端が見えた。街の頂、静かで到達不可能なオリュンポス。「あそこには何があるんだろう?」
グンダーは街の頂上をちらりと見上げた。彼の猫のような目がスッと細められ、軽蔑の色が顔に浮かぶ。「余たちが関わるべきではない類いの連中だ」それがグンダーの唯一の答えだった。
彼らが歩いていると、黒い金属とスモークガラスでできた、静かで優雅な乗り物が大通りの端にスーッと滑り込んできた。歩行者の流れは、命令もなく、敬意の表れであるかのように自然と彼のために道を開けた。ドアが開き、銀色のドレスをまとった女性が降りてきた。その布地はまるで月光で織られたかのようだ。彼女は誰にも視線を向けず、その顔は退屈した美しさの仮面を被っており、豪華な店の入り口で制服姿のドアマンに迎えられた。
グンダーが歩調を保つ一方で、トムのペースは一瞬、ほとんど気づかれないほどぐっと落ちた。彼女の目はその女性から離れず、銀色のドレスが歩くたびに彼女の足首の周りをひらひらと舞う様子を追っていた。その布地はまるで生きているようで、街の黄金の光を飲み込み、液体の破片として返していた。
無意識に、少女の手は自身のズボンの厚い縫い目に触れ、指は彼女を隠すざらざらとした機能的な生地の感触を確かめた。それはほんの一瞬、驚嘆する少年の仮面の中のほんのわずかな隙間であり、その視線に驚きではなく、深く憂鬱な魅了が宿った沈黙の瞬間だった。女性が豪華な店の中に消えると、トムはぱちくりと瞬きをし、無理に視線を前に戻してグンダーに追いつくために歩みを速めた。顔には説明のつかない熱がじんわりと広がっていた。
歩みは彼らを商業の大通りから遠ざけた。噴水と群衆の心地よい音は、次第に重い沈黙に取って代わられた。彼らは、磨き上げられた黒曜石の板で舗装された、広大で厳格な市民広場に入った。その床は、空を暗い鏡のように映し出していた。そして広場の中心に、黄金の都市を繋ぎ止める闇の錨のように、その要塞はあった。
トムの胸でフツフツと泡立っていた興奮は消え去り、威圧的な感嘆の念に変わった。ここの空気はより冷たい。「あの場所…街の他の部分とは違うみたいだ」彼女は呟いた。
「違って当然だ」グンダーは彼女の隣で立ち止まり、その建造物に視線を固定して言った。「街の残りは絶え間ない見せかけだ。あれは、その創設後、王国が到来した後に来たもの。余たちが求めるものは…」
その建造物は黒曜石の刃のように、青みがかった黒い金属のモノリスとしてそびえ立っていた。鋭い角度と、光と音を吸収するかのような滑らかな壁を持つ。その建築は美しさではなく、純粋な権力を主張する、無骨で効率的なものだった。巨大な強化鋼の門の上には、ろ過された空気の中でぴたりと動かない旗が掲げられていた。街を象徴する大きな歯車。その中央には、下向きの剣を二本の槍が囲む盾の紋章。キサナトラの街の『秩序の番人』のシンボルだ。
二人の衛兵が、彫像のように微動だにせず入り口の両脇を固めていた。艶消しの機能的な灰色の鎧が頭からつま先まで彼らを覆い、その顔は個性のない兜で隠されている。彼らからじんわりと発せられる規律と危険の冷たいオーラは、彼らの本性を物語っていた。彼らは兵士であり、その存在は、鋼の門そのものよりも威圧的な、見えない壁だった。
あの場所は、街の黄金の夢が築かれた、冷たい鋼の土台だった。
グンダーが一歩前に出ると、少女はそれに続いた。彼らの足音が、広場の圧倒的な静寂の中にコツン、コツンと響き渡る。
「着いたぞ」彼は、何の感情も含まない声で言った。「『秩序の番人』総本部だ」