第23話「あの黄金の日」
その部屋は、どこか懐かしい空気に満ちていた。
貴族にふさわしい広大な寝室。静寂を破るのは、窓の外を渡る風のサラサラという音だけ。大きな窓は開け放たれ、重厚なベルベットのカーテンは端に寄せられている。午後の陽光がサンサンと降り注ぎ、空間を我が物顔で満たしていた。
黄金色の光がすべてを温め、磨き上げられた木の床を照らし、天蓋付きの大きなベッドへキラキラと降り注ぐ。純白のリネンのシーツは、神々しいほどの輝きを放っていた。
この安らぎの風景の中心で、若き騎士はオーク材のマネキンの前に立っていた。
「失礼いたします、若様」
古くからこの家に仕える老執事、リゴの手つきは手慣れたものだ。カチャリ……手袋をはめた指先が、黄金の肩当ての留め具を外す。
金属の重みが、少年の肩から取り除かれた。執事は無言の一礼と共に武具を台に置き、白いマントへと向き直った。彼はサワサワと生地を撫で、赤き獅子の紋章が最も威厳を持って見えるよう、ピシッとひだを整えようとする。
「いいよ、リゴ」
少年の声は柔らかく、執事の集中を解いた。「そこに置いておいてくれればいい。畳む手間なんて要らないさ」
リゴの手がピタリと止まる。彼は崇拝に近い眼差しでその布を見つめた。
「しかし、わたくしの若様……」リゴの声は、抑えきれない義憤でプルプルと震えていた。「これは王国の象徴……『赤き獅子』の誇りが……」
「ただの布切れさ、リゴ」
少年はクスクスと優しく笑った。その笑いに傲慢さは微塵もない。彼は振り返り、老人に安心させるような笑みを向けた。
「戦場じゃ、名誉よりも邪魔になることの方が多いからね。名誉はそれを纏う者にあるんだ。布そのものじゃないよ」
リゴはハァと、主人の優しくも合理的な理屈に負けてため息をつき、身支度を終えた。
最後の一片が外されると、老執事は深々と一礼し、カツカツと足音を立てて退室した。ドアがカチャリと静かに閉まる。
一人になった少年は、薄手のリネンのシャツとズボンだけになり、ようやく真の自由を感じた。黄金の鎧の重み――物理的なものも、象徴的なものも――が消え去ったのだ。
「ふぅーっ……」
彼は満足げに長い唸り声を上げ、大きく伸びをした。両腕を天に突き上げると、数日間の遠征と緊張で固まっていた関節が、ポキポキと抗議と安堵の音を立てる。
その時だ。
コトッ。
乾いた音がした。木と木がぶつかる、ごく小さな音。床の近くからだ。
少年はストレッチの途中でピタリと止まった。顔は窓に向けたままだが、その赤い瞳だけがギロリと動き、刃物のように鋭く音の元を捉える。
ベッド脇のサイドテーブルからだ。
少年の口元に、ニヤリと微かな笑みが浮かぶ。彼はリラックスした姿勢を解き、歩き出した。スッ、スッ……その歩みは遅く、計算されている。それは獲物に忍び寄る捕食者のようだが、実際にはただ遊んでいるだけだ。
彼は家具の目の前で立ち止まった。
一瞬の静寂。シーン……
突然、小さな手が何もないところからニュッと現れ、彼の足首をガシッと掴んだ。
「うわぁぁぁ!」
若き騎士の叫びは、三文芝居のように大袈裟だった。彼は巨人に殴られたかのようにバランスを崩し、グラッと床に向かって倒れ込むふりをした。
そして、攻撃が来た。
バッ!
ベッドの下から小さな影が爆発するように飛び出し、子供じみた雄叫びと共に彼の胸を目掛けてドーンと跳躍した。
完璧な罠だ。相手が他の誰かならば。
小さな影が宙に浮いたその瞬間、少年は動いた。シュバッ!それは残像を残すほどの速さ。本物の戦場で鍛え上げられた反射神経は、素人の目には追えない。
彼は倒れなかった。代わりにクルッと回転し、腕を伸ばした。
ガシッ。
攻撃者は空中で静止した。
若き騎士は彼女を空中で迎撃し、ドレスの襟首を掴んでぶら下げていた。小さな生き物は重力からの突然の解放に固まり、ブラブラと虚しく手足を揺らしている。
彼は彼女を目線の高さまで持ち上げた。
目の前で、悪戯好きな子猫のように吊り下げられているのは……一人の幼女だった。
その茶色の瞳は深く、不満と悪戯心でキラキラと輝いている。赤みがかった長い髪は顔の半分を覆い、埃っぽい隠れ家に押し込められていたせいでボサボサだ。
少年はフワリと優しく彼女をベッドに下ろした。
少女はすぐにスクッと立ち上がる。泥のついた革靴が、真っ白なシーツにギュッと沈み込み、リゴが見たら卒倒しそうな小さな跡を残す。
少年は気にしなかった。無限の慈愛を込めて手を伸ばし、彼女の乱れた髪をサワサワと直し、目にかかる毛を払いのける。
「人を驚かすのは良くないことだよ?知ってるよね?」彼は叱ったが、その声色は甘い。
少女はプクーッと頬を膨らませ、愛らしく腕を組んで抗議した。
「だってお兄様、全然転ばないもん!」
「僕がバランスを崩さないからって、使用人を驚かせていい免罪符にはならないよ!」彼は腕を組み、精一杯「責任ある兄」のポーズを取ってみせた。
返ってきたのは、聞く耳を持たない頑固な沈黙だった。イングリッドはジローッと、子供特有の鋭い不満の視線を彼に突き刺す。
そして、カオスが始まった。
ドスン!ドスン!
柔らかいマットレスが悲鳴を上げる。行儀作法もシーツの清潔さも完全に無視して、少女はベッドの上でピョンピョンと飛び跳ね始めた。
「嘘つき!お兄様の嘘つきーっ!」
彼女は跳ねるたびに叫び、赤い髪をバサバサと振り乱す。リゴが完璧に整えたベッドは、瞬く間にグチャグチャの戦場と化した。
「イングリッド……」彼はハァと溜息をつき、額に手を当てた。
「約束したもん!」彼女はさらに高くビョーンと跳ね、涙声で訴えた。「金色の鎧着て行っちゃう前に、言ったもん!湖に行くって!『戻ったらね、イングリッド』って!」
彼女はピタッと跳ねるのを止め、ハァハァと肩で息をしながら、涙でウルウルした瞳で彼を睨みつけた。
「もう戻ってるじゃん!ここにいるじゃん!なのにずっと、つまんないお家で、つまんないお爺ちゃんたちと話してばっかり!お兄様なんて、言うこと全然守らない!全然連れてってくれない!」
その非難は、遠征で受けたどんな剣撃よりも深く、ズキンと若き騎士の胸を打った。彼は真っ赤になって怒る妹を見つめた。小さな拳が、体の横でギュッと握りしめられている。
真実は単純だ。彼女はずっと待っていたのだ。彼が行軍し、平和を交渉していた数ヶ月の間、彼女はその小さな約束を宝物のように抱きしめていたのだ。
彼の困り顔はスッと溶け、罪悪感と優しさに満ちた笑顔へと変わった。
彼は一歩踏み出した。彼女が再びギャーギャーと暴れ出す前に、両腕を伸ばして彼女の腰をガシッと掴み、癇癪を止めてベッドの端にトンと座らせた。
「明日だ」
その言葉は低く、確固としていて、彼女の感情の嵐の中の錨のようだった。
イングリッドはパチクリと瞬きをした。文句を言おうと開いた口が、ポカンと開いたまま固まる。彼女はズズッと鼻をすり、手の甲で顔を拭った。
「え……?」
少年は彼女の前にスッとしゃがみ込み、視線を合わせた。濡れた頬に張り付いた髪をサラリと直し、微笑む。
「明日。日が昇ったらパッとすぐに行くよ。将軍とも話さないし、鎧も着ないし、会議もなしだ」
彼は彼女の小さな手をギュッと包み込んだ。
「湖に行こう。僕と、君だけで」
イングリッドの目がカッと見開かれる。疑いと希望が戦っていた。
「ほんと?約束?」
「約束する。騎士の誓いだ」
パァァァッ!
部屋全体を照らすような眩しい笑顔が、不機嫌だった少女の顔に弾けた。彼女はガバッと前に飛び出し、彼の首にギューッと強く抱きついた。その勢いで、彼はふかふかの絨毯の上にドテッと尻餅をつく。
「絶対だからね!そうじゃなきゃ、お母様に言いつけちゃうから!『お兄様は王国のマントが嫌いだ』って!」
「それは卑怯だぞ!」彼は叫んだ。その顔にはギョッとした衝撃が浮かんでいた。
裏切りだ。彼自身の言葉を逆手に取り、あの絶対的で恐ろしい母親の権威を振りかざすとは……残酷で、効率的な、達人の戦術だった。
イングリッドに反省の色はこれっぽっちもない。
彼女は彼が顔を見える位置までスッと体を離した。唇にはニシシと勝ち誇った笑みが浮かび、茶色の瞳は勝利に輝いている。彼女はエヘンと顎を上げ、小さな胸を誇らしげに張った。その姿は、敵将を追い詰めた女帝そのものだった。




