テスト休み
4日間のテスト期間が無事終了して、晴れてテスト休みに突入して、金土日の3連休だ。
気分はもう晴れ晴れだ。
成績が気にならねえとは言わねえけど、久しぶりに同中の友だちとも遊ぶ約束があるし、ちょっと気を抜いてゆっくりしよっと。
「遥、久しぶりだなー! 元気だったか?」
「元気元気! そっちは高校どうだ?」
「あーまあ、思ったより大したことない。もっとガッツリかと思ってたけど、意外と平気」
「そうなのか。なんか余裕だなー、じゃあレギュラーいけそうか?」
「いやー、それはちょっとムズイかも? 人数多いし競争激しいからさ」
同中からスポーツ推薦で別の高校行ったヤツと、たまたま予定が合ったし、久しぶりにいっしょ遊ぶぞ。
雨宮琢磨、サッカー部だ。
琢磨の家来るのも久しぶりだなー。
それにしてもさ、高校生なってもきったねえ部屋だな。雑誌とか、ちょっとは片付けろよな。
「でもよかったのか? 琢磨の方はテスト期間なんだろ?」
「平気平気っ、テストそこそこでいいから、おれは」
「そっか? じゃとにかく対戦始めっか! 俺こいつな?」
琢磨とは彼方と俺と、幼小中といっしょだったから、いわゆる幼馴染っつーやつだ。
よく3人で悪戯して、大人に怒られた。
彼方と琢磨はいつも率先して悪戯して、俺はよくそれに巻き込まれて怒られた。
忘れられねえ思い出とか、いっぱいありすぎっつーぐれえあるヤツで、一番酷え目に遭ったのは川に落っこちた事かな?
頭から落っこちて全身ずぶ濡れになって、泣きながら家帰って、さらに危ないだろっつって親に怒られたっつーかわいそうな話。
あん時はマジで3人ともしょんぼりだったしな。
「そういえば、卒業してから会ってないけど、彼方は元気なのか?」
「元気だぞー。あ、そだ。彼方、彼氏が出来てな。もう俺、超絶びっくり」
「は? 彼方に彼氏が? どこの物好きだそれ? どんなヤツよ?」
「俺のクラスのヤツなんだけど、滝っつーヤツ。滝慶太。すげえ美形が彼方の彼氏」
「はぁ? 美形の彼氏?? マンガじゃないんだし、ウソつくにしても、もうちょっとリアリティが欲しいぞ?」
「いやそれが、冗談みてえな話だけど、事実なんだよ。しかもなんか愛されまくりだ」
「いやいや、それあり得ないだろー。彼方が愛しまくりってのも、なんか想像つかないけどさー」
「ほんとなんだって! 毎日いっしょに昼休みにメシ食ってるし、今日もデート行ったし」
「…ほんとに彼方が?」
「マジな話だ。世界の七不思議かと思うけどな」
「信じらんねえ。鼻タレ彼方だぞ?」
「おい。今はさすがにもう垂れてねえだろ。それ以外は相変わらずだけどさ」
「相変わらずってじゃあ、恋に目覚めて普通に喋ったりとかは?」
「ねえな。相変わらず変テコな喋りで、着ぐるみパジャマだ」
「マジか、あのまま変わってないのに彼氏が…マジか?」
「しかも出来た男っつー謎だ。滝ってすげえ美形だし、運動神経も頭いいし、モテるだろうにさ」
「なんかの陰謀とかじゃないの?」
「何の陰謀だよ」
「フリーメーソンとか、クークラックスクランとか? 関わってそうだろ、彼方だし」
「おい。いくら俺の姉がマジカルミラクル不思議な生物彼方ちゃんでも、さすがにそれはねえぞ?」
「そうだけどさー、えー、彼方が彼氏ねえ…おまえはないの? 彼女とか」
「俺は今んとこ何もねえ。女子とは喋るけど、変わってねえぞ」
「高校にかわいい子いるだろ?」
「かわいい子は存在するけど、関われるわけじゃねえじゃんかよ」
「何、関わってないのかよ、そこは関われよ、話しかけろよ」
「何話すんだよ。話しかけるキッカケもねえのに」
「お嬢さん、高等数学についてちょっと話しませんか? とか、おまえならそういう話出来るだろ?」
「頭のおかしなヤツだろそれ。そんな話しかけ方するヤツと、かわいい女子が喋りてえわけねえだろ、バカ」
「いや、おれ女子と喋ったりしないから、よく分からないし」
「彼方と喋るじゃん…あれが女子かは疑問だけど、マネージャーとかいねえのか?」
「マネージャーは男だよ。女子マネージャーとかファンタジーかマンガの世界の話だし」
「男子マネージャーって…夢がねえな。そいつなんでサッカーやんねえでマネージャーなんだ?」
「中学で膝やったらしい。サッカー部員は無理なんだと」
「そりゃ気の毒だな。じゃマネージャーは男でしょーがねえけど、クラスにいねえのか?」
「おまえといっしょだよ。存在するけど関わってない」
「関われよ、他人の事言えねえけどさ…むー。なんか花のねえ生活だな、俺もおめえも」
「遥は他なんかないのか? 高校行って変わった事とか」
「あ、友だちは出来たぞ。なんと、アメリカ帰りの帰国子女だ。すっげえデケえの。超絶デケえ」
「へえ。英語ペラペラ?」
「超絶ペラペラ。普段の横文字の発音がよくてさ、たまに日本語がおかしな感じで笑えるヤツ」
「例えば例えば?」
「アメリカとか、ハイスクールとか、ファーストネームとか、とにかくそのあたりはすげえ流暢なんだよ」
「あ、結構えって思う感じか?」
「そそ。え?って思うけど突っ込むほどはおかしくねえから、こっそり面白えって思うんだよ」
「なるほど、自分だけでこっそりか。おまえそういうの多いもんな」
「弥勒っつーんだけどさ、そいつ料理が上手いヤツでな……」
俺は転校生の弥勒と、どんな風に仲良くなったとかから、色々いっぱい全部ぐれえ、ずっと会えてなかった分を琢磨に話してく。
強烈なインパクトの初対面から、料理教えてくれるから、目が青くて生活指導に目ぇつけられた事、テスト期間中の事とにかく全部。
伊東藤本の事もちょっとぐれえは教えてやる。
テスト2回ともで被害を受けた被害者としては、ちょっとぐれえいいだろ。
「ふーん。仲良いヤツ出来てよかったじゃん?」
「いやもうほんと、それ思う。今日も夕方からメシいっしょに作る約束してるしな」
「えー? 今日は泊まってかないのか。久しぶりなのにさー、ぶーぶー」
「ごめんな? 先に弥勒と約束してたし、それはムリだ。今度弥勒もいっしょに遊ぼうぜ」
「アメリカ帰りの195で青い目で料理の出来る格闘家と大乱闘か?」
「その言い方だと字面のインパクトがすげえな。たしかに弥勒はそうだしゲームは大乱闘だけどさ」
「いや、その弥勒におれも興味深々だ。そんな強烈な個性のヤツ、すげえ会ってみてえ」
「そだろ? 個性的だけどいいヤツだから、いっしょに遊んだら絶対楽しいぞ」
「だろうな。でもあれだ、うわーとか思って、じろじろ見過ぎても怒んなって言っとけよ?」
「大丈夫だよ。俺も最初にそれはやったから、そんなことで怒るヤツじゃねえって」
「ほんとかよ? ハイキック一発で頭蓋骨爆散したりするヤツだろ?」
「言ってねえだろ、そんな事は。琢磨の方はどんな感じだ? 仲良いヤツとかは?」
「気の合うのはいるぞ。同じ部活だしクラスとか違うけどな」
お互い新しい友だちの事を色々教え合うっつーのもなかなか面白え。
そっか、琢磨も部活で新しい友だちが出来てよかった。
時々、中学の時の話したり、他の同級生の話したり、琢磨とは話題が尽きねえ。
なるほど、レギュラーのライバルは3人もいるのか。
「そのうち1人は3年だけど、残りは2年だし競争激しいんだよ」
「実力があっても2年に勝つのは難しいよな」
「でも、試合の応援は来いよ? レギュラーはまだだけど、遥が来るって思ったら、おれ気合い入るからな」
「行く行く。見に行くからな。でも絶対レギュラーは狙えよ。試合いつだ?」
ゲームしたり色々喋ったり試合の応援に行く約束したり、琢磨といっぱい遊んで俺は満足して帰った。
すげえ楽しかったー!
ピンポーン―――
「弥勒、お待たせーっ。悪いな、買い出し任せちゃって」
「おう。ツレどうやった? 元気やったけ?」
「元気元気。部活楽しくやってそうだったぞ。練習試合見に行く約束したんだ」
「へえ。部活サッカーやったっけ。その試合に出るんけ?」
「分かんねえ。まだレギュラーじゃねえし出ねえかも」
俺が琢磨んち行ってから行くって言ったせいで、今日は弥勒に買い出し任せちゃったから、その分メシ作るのは頑張って作るぞ。
「弥勒、今日のメニューはなんだ?」
「今日は丼物やってみよか。わりと簡単やしな。親子丼」
親子丼は油使わねえから、非常に俺向きなメニューらしいな。
それに、丼はいっぱい食えるし、弥勒向きでもある。
「む。玉ねぎか、今日は負けねえからな?」
「そんな多ないし、どうもないて。カレーん時大丈夫やったやんけ」
「それもそだな」
切るのは玉ねぎに三つ葉と鶏肉、
3つだし出来るだろって思ってたんだけど、鶏肉がクセ物だ。すげえグニャグニャしやがる。
「むー。これがひと口大なのか。あ、ちょっとちぎれた」
「……ちぎれ? いや、気にすんな。肉やし目立たん」
ちょっと肉ちぎれたけど気にしねえで、鍋に水入れて火にかける。
あとは材料に火通して味つけて卵で閉じたら、出来上がりだ。
めんつゆって便利なんだな、色々使えるから1個あるのが正解か。
ふむふむ。弥勒は色々知っててすげえな。
さすがに今回はそこそこ順調だったけど、副菜とかまでは手がまわんねえから、弥勒が作っといてくれたのを、いただきます。
「どうだった俺。今日はちゃんと出来てただろ?」
「おう。これぐらいのレベルがちょうどええみたいやな」
「俺も肉以外は一人でも出来そうかもって思ったぞ」
「いや、肉も切れるようになれや」
「それはまだ練習が必要だ。あ、今日琢磨がな…」
2人で親子丼食いながら、俺が琢磨んちで遊んだ時の話をするぞ。
俺、弥勒のこと琢磨にいっぱい話したぞ。ん? その内容?
「弥勒がすげえデケえとか、横文字の単語が英語の発音とか?」
「ん? オレの発音て英語け?」
「英語じゃん。カタカナの発音じゃねえだろ?」
「そうけ? カタカナやと思うけど」
「超絶英語だぞ。あとな、料理教えてくれるとか、テスト前いっしょに勉強したとか、それから昼休みいっしょメシ食うとか、他に…」
「ちょ、喋り過ぎ喋り過ぎ。それ洗いざらい全部喋ってるっちゅう事やんけ」
「ええ? 別に隠す事じゃねえだろ? 悪口は言ってねえぞ?」
「いや、そいつにオレがめちゃくちゃ仲ええて思われても知らんで?」
「なんだよ。弥勒が俺と仲良く思われるのはいい事だろ? 弥勒は俺の事好きじゃねえのか?」
「好き… あ、あー、オレも、遥が好きやけどやな」
「だろ? 俺が弥勒の事好きで仲良いの隠すことねえじゃん?」
「そんで? そのツレ…琢磨は何か言うてたけ? オレの話聞いて」
「興味津々だから、そのアメリカ帰りの195で青い目で料理の出来る格闘家と大乱闘しようっつってた」
「オレの事、なんか並べた時の取り合わせが酷ない? 大乱闘って…」
「あ、ゲームの名前だ、それ。言っとくけど今のカオスなセリフは琢磨のだしな?」
「遥が作ったセリフやないんか。なんやちょっと変わったヤツやな」
「でも遊ぶと面白えぞ。今度、琢磨ともいっしょ遊ぼうぜ」
琢磨といっしょに遊ぼうぜって、弥勒にも誘った。
次遊べるのは先の話だろうけど、今から2人を会わせるのが楽しみだ。