親友
琢磨を説得し始めて今日で一週間、電話やメッセージじゃ拉致開かねえから、拉致開けるために琢磨んちの前で待ち伏せしてやった。
「よっす。琢磨、ばんわー。久しぶりだな」
「………遥。わざわざおれんちまで説得しにきたんだ?」
「うん。俺の気持ち、ちゃんと顔見て話してえって思ったからな」
「ふーん…つかさ、ねえちゃんにでも言って先部屋上がっとけばよかったのに」
「そんなこと言って、前に勝手に上がってゲームの記録消した時激怒だったじゃんか。あ、おばさんお邪魔しまーす」
「ゲームの記録消すのはダメだろー。おれの努力を無に帰したのはムカつくって」
俺んちから3軒しか離れてねえ琢磨んちに上がって、部屋でなんとなくまったりする。久しぶりだなー琢磨んち…
中学の時はしょっちゅう来てたのに、3日と空けずどっちかの家で遊んでたっつーのに、来るのは1学期の中間テスト休み以来か…
ここんとこ毎日、電話では喋ってたけど、久しぶりの琢磨の部屋っつーのは、なんか変な感じだな。相変わらずきったねえ部屋。
「んで? どうやって説得するか考えてきた? 言っとくけど、おれは折れないつもりだけど」
「ちょっとは考えてきたぞ。琢磨がこれで納得するか分かんねえけど、今日は俺の気持ちを知ってもらおうと思ってるんだ」
「ふーん? いかに遥があの極悪人を好きかって事か。そんなくらいじゃ効かないけどな」
「まあ話聞けって、感想は聞いてからでいいから。俺な、弥勒がやだつったから断ったって言ったろ?」
「言ったな。好きだから遥が女と付き合うの嫌だって言って、遥がじゃ断るってした。そう聞いた」
「その時のセリフとセリフの間の話しようかって思ってな」
「誘惑犯が好きだから女出来るの嫌って言ってから、じゃ断るって遥が言うまでの話か」
「俺と弥勒はあの日、俺んちで母さんのメシ食う予定でな……」
俺はあの日あの時の、俺と弥勒の俺の中でのあった記憶を、琢磨にゆっくり一個ずつ、一つ残らず丁寧に説明し始めた。
俺の部屋でアルバムを見てて、まだ俺と彼方ばっかの頃のページだった事から、一つずつ残らず全部伝わるように丁寧に話す。
弥勒が髪染めに失敗して緑髪なったばあさんの写真見てた事まで、全部全部、あの日あの時の事が分かってもらえるように話してく。
俺がばあさんの写真を見て「ファンキーだろ?」っつって、笑いながらふと顔を上げたら、弥勒と、はたっと目が合ったんだ。
最初、俺の目のじっと見つめて弥勒が、ひと言「好きや」って言った時、俺それ聞いて呼吸が止まった。時間止まったかと思ったぞ。
「んで、目がちょっとウロってした。言われた事分かるのに分かんねえってなった。したら」
弥勒がすーっと視線外して顔少し下げて「悪い。おまえに彼女が出来るとか、やっぱ嫌やし…言うとく」そう苦しそうに吐き出した。
言葉が出てこねえ俺の前で、弥勒は「オレと付き合えとかは言わんけど、オレが……すまん。気持ち悪いな、こんな話」って言った。
その顔見て、弥勒が本気なんだって事が分かったり、我慢出来なかっただけで、俺を困らせたくて言ったわけじゃねえ事理解した。
言わねえ方がよかったかな? っつー後悔だとか、それでもっつー想いとか、色んなもんがその時の弥勒の表情にあったんだ。
「そん時、俺の目は、どんな画素数の高え高感度カメラより、よく見えてたぞ」
びっくりするぐれえ何もかもが鮮明な視界の中で、なんもかんも止まってるぐれえゆっくりに見える速度の中、弥勒が顔逸らしてて。
酷く辛そうな弥勒の表情見て俺が思ったのは、弥勒の気持ちが痛えのやだから相手…俺に告ってきたあの女子は断ろう、だった。
「それを最初に考えて、ん? 告られた子断るっつーのはつまりどう言う事だ? って考えた。そっから……」
ああ今俺、自分の気持ちの種類がどうとかより、弥勒と仲良くしてえっつーのが最重要だなって、弥勒と仲良くねえのやだって。
「だから俺、真っ先に俺は、弥勒が好きっつーのと違うだろうけど、弥勒が好きだって言った」
琢磨は黙って聞いてくれてるけど、俺の言いてえ事ちゃんと伝わるかな? 告られたの断るってのは、俺が提案したの分かるか?
「俺な琢磨、弥勒が告ってくれて嬉しかったぞ。あの瞬間、告ってきた女子がどうでもよくなった。分かるか?」
「つまり、遥が告られた女子を断りたいって思ったって事か?」
「うん。もし弥勒が女だったらその場でOKしてた。それぐれえ嬉しかったんだ」
「でもあの不埒マンは、どう見ても男じゃないか」
「だから考えたぞ。適当出来ねえって。いい加減な気持ちじゃ、俺と弥勒の前にあるいくつもの山は越えてけねえ」
「………最初から、告られた時から好きだったけど、問題あったから、考えてたって?」
「そうだろ? 俺も後悔したくなかったけど、弥勒にも男の俺好きになった後悔させたくねえじゃん」
「おれは絶対後悔すると思うぞ」
「しねえ。よぼよぼじいさんになった弥勒でも、俺は好きだ。結婚もするぞ」
「は? 男同士でどうやって…って、あのけしからん男の国籍か!」
「えへ。弥勒、今はまだ国籍選んでねえけど、フランス国籍なら男同士でも結婚出来るんだ」
「………なんでそこまで本気になれるんだ? 出会ってまだ数ヶ月だろ?」
「分かんねえ。でもちゃんと全部考えたぞ。俺も責任取るけど、弥勒にも責任取らせる。男同士だからな」
「あのすっとこどっこいが、ちゃんと責任取るのか?」
「弥勒は責任取るヤツだ。俺が悩んだ時はいっしょに考える、俺だけで頑張る時も1番応援する」
「もしそうじゃなかったら? そしたら遥は1人で悩むのか頑張るのか?」
「もしそうやって弥勒の助けがねえ時は俺、1人で悩んで頑張って苦しいの抜けてから、文句言うぞ。ケンカだ」
「ケンカにならなかったら? 撲殺ブルーの気持ちが冷めた時はどうする?」
「泣く。いっぱい泣く。でも絶対後悔はしねえ。気持ちが変わらねえよう2人で頑張るけどそれでダメだったら泣く」
「遥が泣くのはおれ見たくない」
「見たくないかもしんねえけど泣くから、その時は琢磨、おめえに慰めて欲しいぞ。恋ってそういう物だろ?」
俺も弥勒も、両方が頑張ろうっつって思っても、上手くいかねえ時だってあると思うけど、それでも俺は弥勒といっしょがいいんだ。
「もし俺が恋に破れた時は、一番親友の琢磨を頼りてえから、頑張れって言って欲しい…ダメか?」
「どんな結果になってもいいから、頑張りたい、だからおれに認めて応援して欲しいって言いたいんだな?」
「うん…心配なのは分かるけど、俺が幸せになる方法はそれだけだって俺が選んだ事だ」
「遥が……っ…遥が、選んだ事なんだな?」
「うん」
「…っ、だったら気に食わねえけど、応援してやるっ! 相手が男だろうと、おれは遥の味方だっ!」
「ほんとか! やった! 俺、絶対超絶頑張るからな!」
「もし失敗だったら、だから言っただろって呆れながら慰めてやるよ」
「む。呆れながらか? 俺はもっと優しくがいいぞ?」
「甘えるんじゃないっ。おれが失敗するって言っても聞かないヤツは呆れながらだって」
よかった…琢磨が応援してくれるって、認めてくれた、味方になってくれた。
俺をすげえ心配しながらでも、応援してくれるって!
やった! やったぞ! 弥勒、俺頑張ったぞ! これでおめえと付き合えるっ!
今すぐ飛んでって弥勒に知らせてえぐれえだ! やったーっ!!
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