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この恋のために  作者: ひなた真水


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35/41

愛の数学

「やや、ミロクではなすか。体育だったなりか?」

「おう。彼方、身体動かすと11月下旬でも余裕で汗出るな。遥ならまだ着替えとるで」

「うむり。対決ご苦労3なりの。手強すだったであろ? かなタソ労うするなりよ」


 150ちょっとしかない低い身長の彼方が、オレの肩を背伸びするように、ぽんぽんと叩いて労ってくれる動作をする。


「最強っちゅうぐらいや。あれが参戦したらと思たら怖なるな」

「参戦するなりか?」

「分からん。オレはして欲しないけどな。どうせ遥のことやから、精一杯悩むやろうし」

「それはそれでよろしね。かなタソ、はるタソ幸せするがよろしと思うなり」

「どっちに転んでもそれなりやってか?」

「どちらさまでも、いっぱい頑張るであろ? もちろん、かなタソ一番の幸せ者であるが」

「おまえのお眼鏡に叶う相手は、あいつだけなんけ?」

「かなタソ知るで一番はあやつなり。他は大した事なす。少々かわゆす程度の有象無象なり」

「特筆点のかわいさで彼方下回る程度なら、敵やないわ。あいつの身近でもない上に、なんやろ?」

「その息なり。幸せしとくれより、幸せしたすがよろしね。せいぜい頑張るよろし」

「あ、弥勒ー。次は移動だぞ、いっしょ行かね?」


 いつものように、ちょろっと寄ってきては、わりと重要なこと教えてくれる彼方は、慶太見つけてちょろちょろ走って行った。

 ちゃっかり自分が一番幸せやとか、ノロケて行く辺りが彼方らしいな。

 遥もあのぐらいは愛されて当然やってか?

 ま、あいつ、中学の時は言い寄ってくる男に、全く見向きもしてなかったらしいし、そう思うと慶太も愛されとるみたいやけど。



 実際の所、遥はめちゃくちゃモテるヤツやしな。

 本人があの感じで琢磨のガードも堅かったせいか、あんま自覚しとらんけどモテる。

 むしろモテへん要素がないっちゅうヤツや。

 母親譲りのかわいい系美人な顔してるし、元卓球部の部長で運動神経もええ。

 成績は普通程度の高校の3位で、数学者の息子やし勉強も出来る上に、クラス代表で女装するノリの良さも持ってる。

 育ちの良さを感じる言動と、相手を思いやる優しさと、あかん時はあかんっちゅう強さを持ってるから、好かれん方がおかしい。

 視力が悪いのと、どこ行っても見られる色のせいで、自分が注目されてる感覚が麻痺しとるだけで、基本廊下歩くだけでキャーや。

 中学の時は手紙類は抹殺されてて、電話の類いは番号交換したヤツ以外着信拒否、琢磨のガードもあったせいで彼女出来んかったけど、彼方曰く鬼モテやったらしい。

 さすがに上履き盗まれたっちゅう話は冗談かと思ったけど、そんな事件もあったそうや。

 好きな男の上履き盗んで喜ぶ女はアホやと思う。

 遥がドン引きしたおかげで1回だけやったっちゅう事やけど、オレもその話には引いた。

 そらこっそり縦笛舐めへんか? とか聞かれるわけや。

 実際そういう目に遭うてるんやしな。オレそんなこと絶対せんけど。



 琢磨もたいがいなヤツやけど。

 中学のサッカー部を率いて全国出場してベスト4て、遥の応援やったとしてもけっこうすごいわ。

 なんぼ遥の応援があったとしても、予選敗退の部の全国ベスト4入りは、並大抵の努力では出来んし、相当頑張ったはずや。

 スポーツ推薦がきて当然やて遥も自慢してたし、彼方からも相当モテるて聞いてるし。

 とりあえず遥の隣におって、恥ずかしいて思われんのだけは嫌やし、日本やとまだ後ろ指指される事もあるから、オレも気張るで。



「聞いてくれよ、弥勒ー。うちの母さんがまたボケててさ」

「なんや? またとんでもないチャレンジ料理でも食わされたんけ?」

「のんのん。母さま自分モテる自覚足らなすなり。自転車屋さん危険なりよ」

「彼方のお母さん、自転車屋でなんかあったの?」

「ママチャリの空気入れると、いつもオマケしてくれるって、明らかそれ次も来てくれっつー事だろ?」

「空気入れ代金オマケはよろしが、商店街福引券はやり過ぎなり。危険スメルなり。むー」

「彼方のお母さんって彼方の次くらいに美人だもんねー。彼方も気をつけてよ?」

「それをいい人っつー母さんになんつって危険知らせりゃいいか、彼方と悩んでんだよ」

「あーでもあれや、まだそこまでの危険ではないんちゃうけ? 自覚して欲しいとこやけどな」

「その微妙なのが問題なんだよ。そこまで危なくはねえけど、これ以上はダメっつーの?」

「うむり。もし福引当たるすれば、そやつの株上がるなり。かなタソむー」

「俺もむー」

「ほなあれや。もらうのは割引券までにせえ、とか?」

「もらった福引で当てるのは悪いしって、そういう風に言うってのはどうかな?」

「ふむり…母さまそれ聞く思うなり?」

「危機感ねえだけだし、当たった後の事言うのはいいかもな」

「若いよな、遥のおかん。まだ40前やったっけ?」

「当時准教授だったお父さんが一目惚れしたんでしょ? 熱烈アタックだったって」

「母さまミスキャンパスだったなりからの。かわゆすモテモテだったなり」

「父さん超絶文系の母さんにU-I<2(2U-I)って書いたラブレター送ったっつーから、かなりバカだろ?」

「うむり。(x^2+y^2−1)^3=x^2y^3とかもあったなりの。母さま分かるわけなす」

「えーと? 彼方、その2つは有名な公式なのかな?」

「む。有名なりよタキ。(x^2+y^2−1)^3=x^2y^3グラフはハートなりからの」

「U-I<2(2U-I)は解くとI<3Uになるぞ。つまりI♡Uだ。母さんこんなの絶対解けねえけどな」

「彼方のお父さんって、かなりロマンチストなんだね。おれも今度探してみようっと」

「おまえら、ほんま日常会話に数式出てくるよな。仲良しが220と284やったっけ?」

「うむり。タキとかなタソ48と75なり」

「だったら俺は今んとこ6とか28だ」


 普段からわりと、遥は数字に反応するけど、彼方と喋ってる時が一番多いな。

 嬉しい時も怒ってる時も、2人やとわりと数字と数式。

 エアコンの温度設定が素数やったり、お釣りが2のペキ乗で喜ぶから、最初は色々びっくりする事も多かった。

 だいぶオレも慣れてきたけど、まだまだこうやって知らん数式がいくらでも出てくるから、もっと色々知りたなっていく。

もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者は泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ

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