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この恋のために  作者: ひなた真水


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24/41

文化祭準備

 9月、2学期が始まって、文化祭準備をやり出す時期の、ロングホームルームっつーと、定番はクラスの出し物会議だよな。

 クラスのみんなで文化祭準備をどうやってくか、色々相談するっつーのは俺も異論ねえんだけど…


「───というわけで、ミスコン参戦者は、楠木遥に決定しましたーっ。みんな拍手ーっ」


 なんでこうなったんだ俺? いや、教壇に立ってるのが藤本っつー時点で、雲行きが怪しくはあったけどさ…女装するなら滝だろ…


「おれは裏方役が性に合ってるからね。そっちで頑張ることにするよ」

「いやマジ? ほんとに俺が女装やるのか?」

「はーい、もー決まったんだから、ごねないっ。あたしめっちゃ頑張って、遥かわいくするしっ」

「おい。寄ってくんな。おまえ出番ずっと後やろが。メイク係その①はあっち行け」

「もー弥勒くん、またあたし邪魔にするー。じゃ遥、あたしメイク超いっぱい研究しとくねっ」


 相変わらずさささっと来て、さささっと去る相沢に、弥勒はムカつくらしいけど、俺は正直それどころじゃねえ。俺、女装するのか。


「じゃまず、遥が絶対これだけは譲れないって部分はどこかな? あったら教えて」

「譲れねえ部分……スカート穿きたくねえ、とか?」


 っつーか、女装しねえ、にこだわりてえんだけど俺、いや、そういうわけいかねえっっつーのは、ちゃんと分かってるけどさ…むー。


「そっちじゃないでしょ遥。こだわってかわいくして欲しいの方だよ」

「むー」

「遥、みんなの意見で決めた事やろ? おまえも誰かに投票した。違うけ?」

「そだな。うん…分かった弥勒。俺頑張ってやる。滝、えーとな。俺、演出も大事じゃねえかと思うぞ」


 そうだよな、俺が投票した滝だって、決まったらやりたくねえとか、わがまま言ってみんなを困らせたり、盛り下げたりしねえよな。


「演出って、舞台のライト設定とかの打ち合わせはこっちじゃすぐには」

「その演出じゃねえよ。いかにキャッチーで分かりやすく見せるかっつー方だ」


 そう、やるなら本気、狙うは優勝だもんな。投票するヤツらに、いかにアピールするか、これは超絶重要だ。得票狙える女装がいい。


「なるほど、これほんまに女装け?から、ネタとして面白過ぎるでこいつって、まで色々あるな」

「そうそう。どの路線の女装でいくかっつーのは重要じゃねえか? 何か困った時は指針にもなるし」

「それはそうだね。じゃまずは基本方針から決めて行こうか。おれは本物の女子より、かわいいがいいと思うね」

「む。滝はネタ路線推しじゃねえのか。ネタ路線の方が簡単に点数取れそうだぞ?」


 投票するのは全校生徒以外に来場者もいるから、ちょっと面白の方が、分かりやすく評価される気がするけど、そうじゃねえのか?

 それに本格的にかわいくするっつったって、普段からやってる男の娘には勝てねえんじゃねえか?

 2年に、普段から女子制服着てるっつー、ガチの男の娘がいるって聞いたけど。


「いや遥ならイケる。本物よりそれらしいのを狙っていこうや」

「そうか? 優勝の規定はいかにかわいいかを競うわけじゃねえぞ?」

「遥くんなら、ウケより断然かわいいを狙うべきだって」

「そうだよ! 女子よりかわいい女装男子を狙っていこ」

「じゃ、女子よりかわいい女装男子にするにして、次はコンセプトを選ぼうぜ。制服とか系か?」


 しょーがねえ、2年の男の娘とかわいいで勝負か、やるならどんな系統でやれば勝てるか、みんなでちょっと真剣に考えねえとだぞ。


「お? 遥なんかちょっと、やる気になったみたいやんけ」

「うん。やるならとことんだ。文化祭なんだし、お祭り騒ぎしねえと損だろ?」

「ええ感じや。オレもやる事しっかり頑張るから、おまえも気張れよ」

「むーだけど頑張る」


 弥勒が自分の係の方、模擬店の相談しに行ったから、俺も気合い入れて、係のみんなと女装の相談していくぞ。むーだけど頑張る。

 俺のクラスの模擬店は匂いに釣られるヤツをイメージして、肉巻きおにぎりを販売する事になったから、弥勒はそっちのリーダーだ。


「やっぱ、やるなら遥くんの個性を活かしたいよね?」

「そうそう。遥くんの個性は強烈だから絶対いいね!」

「俺の個性っつーと、白い髪色か? でもカツラ付けねえとかでイケるのか?」


 俺はちょいっと自分の短え前髪を摘んでみるけど、この長さじゃ女装には向かなさそうだって思う。

 俺、髪が長え滝と違って、普通の男子の長さだしな。女子としたらベリーショートぐれえだぞ?

 でもこの色が活かせれば、俺は相当有利かもな。

 だって他のヤツがこの色やろうと考えたら、カツラ被るぐれえしかねえもんな。


「やり方次第じゃないかな? かわいい色の部分カツラをつけるとかで、バランス取ったりね」

「つけ毛とかもいいよね?」

「逆に自由に出来るかも!」

「例えばだけど、左右で色の違うつけ毛付けて、ツインテールとかどうだ?」


 桃色と空色とかの相性の良さげな色選べば、左右で色が違うのも、ちょっとコスプレっぽくて、いい感じの演出にならねえかな?


「それよりアップシニヨンが似合うと思うよ」

「前髪付けてバランス取ったらいい感じよね」

「それならむしろ、ちょっと手が届かないくらいの、綺麗な感じはどう?」

「いいね! まさに遥くんピッタリ」

「遥くんなら絶対きれいが似合うよ」

「ならあれだ。女子が憧れるお姫さまじゃなくて、ちょっと大人っぽくするのはどだ?」


 そうすれば2年のガチな男の娘とは、ちょっと違え雰囲気が出そうだと、俺は思い切って提案してみる。俺もブリっとよりいいし。


「アップシニヨンだし、大人っぽい方が映えるのは間違いないでしょ」

「ありあり! ブリブリかわいい女装男子よりいいよ」

「それいい! きれいで大人っぽい女装でいきたいね」

「俺、女子とするには身長高えじゃん? でもそれも大人のスラっとならいけそうだな」


 ちょっとスラっとしてて、髪をアップにまとめてる大人の女、例えば女教師とか?

 …ダメだ、あんまイメージがしゃんとしねえぞ。

 女教師って考えたら、俺の中じゃロッテンマイヤーさんが出てくるな。

 それはいい感じの女装とは言えねえ。なんかこう、もっと…

 アニー・サリバン? いや3重苦じゃ、やっぱあんまいい感じじゃねえよ。

 俺がイメージすると、どうもイギリスのガヴァネスが出てくるし……


「スラっとさせるの逆にありじゃない?」

「素材の良さも活かす感じに出来るしね」

「「それだったら付け胸やめちゃってもいいかもしんないねっ!」」


 む。おっぱい付けねえでいいっつーのはありがてえ。

 それはどう考えても気持ち悪い光景が浮かんでくるし、スラリとした長身美女でイケるならいきてえ。


「じゃあこういうのはどうかな? スリット入ったチャイナドレス」

「チャイナドレス! いいね最高だよ」

「まさにピッタリだよ! それいいね」

「ふむ。スラっとチャイナドレス着てるアップシニヨンの大人の女か。…煙管とか持ってそうだな」


 なんかちょっと妖しく阿片とか吸いそうな感じ? うーむ…俺、そんな感じの女装出来るのか?

 自信、自信がねえ。全く湧かねえ。


「いいね、中国マフィアの女ボス系で攻めようよ!」

「いいよ、絶対それ遥くん超似合うに決まってる!」

「チャイナドレスの色は何色がいいかな? 赤、青、黒、紫…」

「紫いいんじゃない?」

「紫がいいって絶対!」


 女装チームのリーダーの滝と、漫研で絵の描ける伊東藤本と、そして女装させられる俺の4人で、色々相談して決めていくぞ。

 決まったコンセプトは“チャイニーズマフィアの女ボス”で、ゆったり阿片とか吸いそうな感じに、魅惑の魅力を感じさせようだ。

 ……俺、そんなのちゃんと出来るかなー、自信は全然ねえけど、頑張るって決めたからやってみようか。なんせ文化祭、祭り騒ぎだ。



 弥勒とメシ作ってる時もやっぱ当然、文化祭の話題が出てくる。

 む。弥勒の方はさっそく色々調べて、買い出しリストの作成中か。

 今日のメニューはピリ辛豚キムチ、俺、包丁はちょっと慣れてきたような気がするぞ。

 む? これも切るのか、よし、俺に任せろっ。


「すげえな、もうそんなとこまでやったのか。なかなか頑張ってるんだな、弥勒」

「おう。文化祭っちゅうんはオレ、初めてやしな。気合い入れて、いっぱい楽しむつもりやねん。遥の方は?」

「明日、伊東藤本がコンセプトアートっつーのを描いてくるってさ。でも俺…あんま自信がねえ」

「ん? やる気出たんとちゃうんけ? やっぱり女装は嫌とか言うつもりか」

「そうじゃねえよ、弥勒。俺も頑張るつもりだけど、これちゃんと出来るのか? っつーのがな…」

「そんな難しいんけ? おまえの女装、どんなやつに決まってん?」

「うん。テーマが“チャイニーズマフィアの女ボス”に決まったんだけどさ、俺に女ボスが出来るのか?って…」

「チャイニーズマフィアの女ボス? 一体どんな流れでそういう話になったんや」


 俺は弥勒に、今日の話がどういう風に決まっていったのかを、聞かせてみる。

 やっぱ何度考えても、俺は自信が湧いてこねえしな。


「なるほど、2年のガチ男の娘に、勝つ方法考えてたら、そうなっていったんやな」

「うん。俺が中国暗黒街の女ボスだぞ? 女装は頑張るけど、さすがに自信は湧いてこねえよ」

「遥はおとんのゲンコツで、しょんぼりするヤツやもんな。女ボスは想像しにくいやろけど、見てみたいでオレは」

「弥勒も見てえって期待するか? いや頑張るけどさ。むー」

「大丈夫やって、みんな頑張って、そう見えるようにしてくれるはずや。ガヴァネスよりええと思うんやろ?」

「そりゃな。評価される女装はガヴァネスより、やっぱ女ボスだ。そう思うけど、むー」


「ガッツリ演技指導してもろて、それっぽく出来るように練習すれば、遥ならきっと出来るはずや」

「む。練習か、練習すれば俺でもマシになるか? 女ボスっぽく見えるように?」

「身なり整えて振る舞いをちゃんとすれば、絶対ええ感じになるはずやで」

「そうかな? 練習やれば出来るなら俺、いっぱい頑張るぞ?」

「おまえなら絶対出来るようになるから、気合い入れて練習頑張れや」

「うん。俺いっぱい頑張る。やる気と元気が出てきた。これならいっぱい頑張れるぞ。弥勒」

「そらよかった。やっぱクラスで優勝狙いたいし、気合い入れてやらんとな」


「えへ。ほんとは俺、衣装のサイズ測ったら暇なるから、弥勒手伝おうって思ってたんだけど」

「そんなんせんでええから、自分のやらなあかん事、しっかり頑張らんとやで」

「そうする。俺、いっぱい頑張る、いっぱい頑張れるぞ、ありがとな、励ましてくれた弥勒のおかげだぞ」

「励ますぐらい、なんぼでもするで。だから頑張る元気欲しい時は、オレにいつでも言うてくれや」

「うん。俺も弥勒が励まして欲しい時には、いっぱい励ますからな」

「ほなオレ遥を絶対頼りにするからな?」

「あ、撫でられた」

「おう。頑張るヤツは撫でんとやろ?」

もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者は泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ

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