文化祭準備
9月、2学期が始まって、文化祭準備をやり出す時期の、ロングホームルームっつーと、定番はクラスの出し物会議だよな。
クラスのみんなで文化祭準備をどうやってくか、色々相談するっつーのは俺も異論ねえんだけど…
「───というわけで、ミスコン参戦者は、楠木遥に決定しましたーっ。みんな拍手ーっ」
なんでこうなったんだ俺? いや、教壇に立ってるのが藤本っつー時点で、雲行きが怪しくはあったけどさ…女装するなら滝だろ…
「おれは裏方役が性に合ってるからね。そっちで頑張ることにするよ」
「いやマジ? ほんとに俺が女装やるのか?」
「はーい、もー決まったんだから、ごねないっ。あたしめっちゃ頑張って、遥かわいくするしっ」
「おい。寄ってくんな。おまえ出番ずっと後やろが。メイク係その①はあっち行け」
「もー弥勒くん、またあたし邪魔にするー。じゃ遥、あたしメイク超いっぱい研究しとくねっ」
相変わらずさささっと来て、さささっと去る相沢に、弥勒はムカつくらしいけど、俺は正直それどころじゃねえ。俺、女装するのか。
「じゃまず、遥が絶対これだけは譲れないって部分はどこかな? あったら教えて」
「譲れねえ部分……スカート穿きたくねえ、とか?」
っつーか、女装しねえ、にこだわりてえんだけど俺、いや、そういうわけいかねえっっつーのは、ちゃんと分かってるけどさ…むー。
「そっちじゃないでしょ遥。こだわってかわいくして欲しいの方だよ」
「むー」
「遥、みんなの意見で決めた事やろ? おまえも誰かに投票した。違うけ?」
「そだな。うん…分かった弥勒。俺頑張ってやる。滝、えーとな。俺、演出も大事じゃねえかと思うぞ」
そうだよな、俺が投票した滝だって、決まったらやりたくねえとか、わがまま言ってみんなを困らせたり、盛り下げたりしねえよな。
「演出って、舞台のライト設定とかの打ち合わせはこっちじゃすぐには」
「その演出じゃねえよ。いかにキャッチーで分かりやすく見せるかっつー方だ」
そう、やるなら本気、狙うは優勝だもんな。投票するヤツらに、いかにアピールするか、これは超絶重要だ。得票狙える女装がいい。
「なるほど、これほんまに女装け?から、ネタとして面白過ぎるでこいつって、まで色々あるな」
「そうそう。どの路線の女装でいくかっつーのは重要じゃねえか? 何か困った時は指針にもなるし」
「それはそうだね。じゃまずは基本方針から決めて行こうか。おれは本物の女子より、かわいいがいいと思うね」
「む。滝はネタ路線推しじゃねえのか。ネタ路線の方が簡単に点数取れそうだぞ?」
投票するのは全校生徒以外に来場者もいるから、ちょっと面白の方が、分かりやすく評価される気がするけど、そうじゃねえのか?
それに本格的にかわいくするっつったって、普段からやってる男の娘には勝てねえんじゃねえか?
2年に、普段から女子制服着てるっつー、ガチの男の娘がいるって聞いたけど。
「いや遥ならイケる。本物よりそれらしいのを狙っていこうや」
「そうか? 優勝の規定はいかにかわいいかを競うわけじゃねえぞ?」
「遥くんなら、ウケより断然かわいいを狙うべきだって」
「そうだよ! 女子よりかわいい女装男子を狙っていこ」
「じゃ、女子よりかわいい女装男子にするにして、次はコンセプトを選ぼうぜ。制服とか系か?」
しょーがねえ、2年の男の娘とかわいいで勝負か、やるならどんな系統でやれば勝てるか、みんなでちょっと真剣に考えねえとだぞ。
「お? 遥なんかちょっと、やる気になったみたいやんけ」
「うん。やるならとことんだ。文化祭なんだし、お祭り騒ぎしねえと損だろ?」
「ええ感じや。オレもやる事しっかり頑張るから、おまえも気張れよ」
「むーだけど頑張る」
弥勒が自分の係の方、模擬店の相談しに行ったから、俺も気合い入れて、係のみんなと女装の相談していくぞ。むーだけど頑張る。
俺のクラスの模擬店は匂いに釣られるヤツをイメージして、肉巻きおにぎりを販売する事になったから、弥勒はそっちのリーダーだ。
「やっぱ、やるなら遥くんの個性を活かしたいよね?」
「そうそう。遥くんの個性は強烈だから絶対いいね!」
「俺の個性っつーと、白い髪色か? でもカツラ付けねえとかでイケるのか?」
俺はちょいっと自分の短え前髪を摘んでみるけど、この長さじゃ女装には向かなさそうだって思う。
俺、髪が長え滝と違って、普通の男子の長さだしな。女子としたらベリーショートぐれえだぞ?
でもこの色が活かせれば、俺は相当有利かもな。
だって他のヤツがこの色やろうと考えたら、カツラ被るぐれえしかねえもんな。
「やり方次第じゃないかな? かわいい色の部分カツラをつけるとかで、バランス取ったりね」
「つけ毛とかもいいよね?」
「逆に自由に出来るかも!」
「例えばだけど、左右で色の違うつけ毛付けて、ツインテールとかどうだ?」
桃色と空色とかの相性の良さげな色選べば、左右で色が違うのも、ちょっとコスプレっぽくて、いい感じの演出にならねえかな?
「それよりアップシニヨンが似合うと思うよ」
「前髪付けてバランス取ったらいい感じよね」
「それならむしろ、ちょっと手が届かないくらいの、綺麗な感じはどう?」
「いいね! まさに遥くんピッタリ」
「遥くんなら絶対きれいが似合うよ」
「ならあれだ。女子が憧れるお姫さまじゃなくて、ちょっと大人っぽくするのはどだ?」
そうすれば2年のガチな男の娘とは、ちょっと違え雰囲気が出そうだと、俺は思い切って提案してみる。俺もブリっとよりいいし。
「アップシニヨンだし、大人っぽい方が映えるのは間違いないでしょ」
「ありあり! ブリブリかわいい女装男子よりいいよ」
「それいい! きれいで大人っぽい女装でいきたいね」
「俺、女子とするには身長高えじゃん? でもそれも大人のスラっとならいけそうだな」
ちょっとスラっとしてて、髪をアップにまとめてる大人の女、例えば女教師とか?
…ダメだ、あんまイメージがしゃんとしねえぞ。
女教師って考えたら、俺の中じゃロッテンマイヤーさんが出てくるな。
それはいい感じの女装とは言えねえ。なんかこう、もっと…
アニー・サリバン? いや3重苦じゃ、やっぱあんまいい感じじゃねえよ。
俺がイメージすると、どうもイギリスのガヴァネスが出てくるし……
「スラっとさせるの逆にありじゃない?」
「素材の良さも活かす感じに出来るしね」
「「それだったら付け胸やめちゃってもいいかもしんないねっ!」」
む。おっぱい付けねえでいいっつーのはありがてえ。
それはどう考えても気持ち悪い光景が浮かんでくるし、スラリとした長身美女でイケるならいきてえ。
「じゃあこういうのはどうかな? スリット入ったチャイナドレス」
「チャイナドレス! いいね最高だよ」
「まさにピッタリだよ! それいいね」
「ふむ。スラっとチャイナドレス着てるアップシニヨンの大人の女か。…煙管とか持ってそうだな」
なんかちょっと妖しく阿片とか吸いそうな感じ? うーむ…俺、そんな感じの女装出来るのか?
自信、自信がねえ。全く湧かねえ。
「いいね、中国マフィアの女ボス系で攻めようよ!」
「いいよ、絶対それ遥くん超似合うに決まってる!」
「チャイナドレスの色は何色がいいかな? 赤、青、黒、紫…」
「紫いいんじゃない?」
「紫がいいって絶対!」
女装チームのリーダーの滝と、漫研で絵の描ける伊東藤本と、そして女装させられる俺の4人で、色々相談して決めていくぞ。
決まったコンセプトは“チャイニーズマフィアの女ボス”で、ゆったり阿片とか吸いそうな感じに、魅惑の魅力を感じさせようだ。
……俺、そんなのちゃんと出来るかなー、自信は全然ねえけど、頑張るって決めたからやってみようか。なんせ文化祭、祭り騒ぎだ。
弥勒とメシ作ってる時もやっぱ当然、文化祭の話題が出てくる。
む。弥勒の方はさっそく色々調べて、買い出しリストの作成中か。
今日のメニューはピリ辛豚キムチ、俺、包丁はちょっと慣れてきたような気がするぞ。
む? これも切るのか、よし、俺に任せろっ。
「すげえな、もうそんなとこまでやったのか。なかなか頑張ってるんだな、弥勒」
「おう。文化祭っちゅうんはオレ、初めてやしな。気合い入れて、いっぱい楽しむつもりやねん。遥の方は?」
「明日、伊東藤本がコンセプトアートっつーのを描いてくるってさ。でも俺…あんま自信がねえ」
「ん? やる気出たんとちゃうんけ? やっぱり女装は嫌とか言うつもりか」
「そうじゃねえよ、弥勒。俺も頑張るつもりだけど、これちゃんと出来るのか? っつーのがな…」
「そんな難しいんけ? おまえの女装、どんなやつに決まってん?」
「うん。テーマが“チャイニーズマフィアの女ボス”に決まったんだけどさ、俺に女ボスが出来るのか?って…」
「チャイニーズマフィアの女ボス? 一体どんな流れでそういう話になったんや」
俺は弥勒に、今日の話がどういう風に決まっていったのかを、聞かせてみる。
やっぱ何度考えても、俺は自信が湧いてこねえしな。
「なるほど、2年のガチ男の娘に、勝つ方法考えてたら、そうなっていったんやな」
「うん。俺が中国暗黒街の女ボスだぞ? 女装は頑張るけど、さすがに自信は湧いてこねえよ」
「遥はおとんのゲンコツで、しょんぼりするヤツやもんな。女ボスは想像しにくいやろけど、見てみたいでオレは」
「弥勒も見てえって期待するか? いや頑張るけどさ。むー」
「大丈夫やって、みんな頑張って、そう見えるようにしてくれるはずや。ガヴァネスよりええと思うんやろ?」
「そりゃな。評価される女装はガヴァネスより、やっぱ女ボスだ。そう思うけど、むー」
「ガッツリ演技指導してもろて、それっぽく出来るように練習すれば、遥ならきっと出来るはずや」
「む。練習か、練習すれば俺でもマシになるか? 女ボスっぽく見えるように?」
「身なり整えて振る舞いをちゃんとすれば、絶対ええ感じになるはずやで」
「そうかな? 練習やれば出来るなら俺、いっぱい頑張るぞ?」
「おまえなら絶対出来るようになるから、気合い入れて練習頑張れや」
「うん。俺いっぱい頑張る。やる気と元気が出てきた。これならいっぱい頑張れるぞ。弥勒」
「そらよかった。やっぱクラスで優勝狙いたいし、気合い入れてやらんとな」
「えへ。ほんとは俺、衣装のサイズ測ったら暇なるから、弥勒手伝おうって思ってたんだけど」
「そんなんせんでええから、自分のやらなあかん事、しっかり頑張らんとやで」
「そうする。俺、いっぱい頑張る、いっぱい頑張れるぞ、ありがとな、励ましてくれた弥勒のおかげだぞ」
「励ますぐらい、なんぼでもするで。だから頑張る元気欲しい時は、オレにいつでも言うてくれや」
「うん。俺も弥勒が励まして欲しい時には、いっぱい励ますからな」
「ほなオレ遥を絶対頼りにするからな?」
「あ、撫でられた」
「おう。頑張るヤツは撫でんとやろ?」
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