告白2
「へえ、タブレットPCか。あると便利やし、よかったな」
「弥勒も持ってる?」
「オレはノートしか持ってへん。それもわりと家置きっぱや」
「勿体ねえな。ノートはやっぱ、あちこちウロウロ持ち歩かねえとだろ」
「タブレットと違て本とか読みにくいやんけ。オレのは持ち運びに向いてるほどちっさないし」
「そこの違いはデケえか。ふっふっふー、これ何入れようかなー?」
翌日には教室で、俺はさっそく弥勒にタブレットPCの自慢だ。これ使っていっぱい本読むぞ。
これで本棚がスッキリしそうだな。
俺、視力悪いから、電子書籍の文字の大きさ変更出来る機能っつーのは、すげえありがてえ機能だよ。
とりあえず辞書は早く入れねえとだな。
「遥、おはー」
「はよ、相沢」
「なに何? 遥のそれ、タブレットPCってやつ? いいなー」
「えへ。テスト頑張ったご褒美だ。いいだろー?」
「いいなー。スマホと違って、学校禁止してないしねー。機能そんな変わんないのにさー」
「相沢、あっち行け」
「もー弥勒くん何でそんな嫌いかなー? あたし弥勒くんと仲良くしたいよー?」
「まま、弥勒の機嫌悪くなる前に、行った方いいって」
「そだね。じゃまた挑戦する」
「相沢、めげねえヤツだ」
また相沢のヒットアンドアウェイ戦法か?さっと来てさっと引いてったな。
弥勒、この分じゃ相沢は当分めげそうにねえぞ。
「はー…そんで? それってセルラーモデルけ?」
「一応な。勿体ねえからWi―Fiねえとこでバカスカ使う気はねえけど」
「そうか。オレんちWi―Fiあるし、キー登録しとけや」
「いいのか?」
「おう。それあるとレシピ検索とか、早よなりそうやし」
「その手があったか。こいつ何気にけっこう優秀なヤツだな」
「動画とかはもう見たけ?」
「見た見た。俺んち家族で有料のヤツ共有してるから、速攻だ」
「へえ、前から家族でアカウント共有してたんか」
「うん。部屋のラップトップで見てたしな」
「PCはラップトップなんや?」
「うん。父さんのお古ですげえデケえの。ちょっと邪魔っつーぐれえ」
「ラップトップはそれが困るよな」
「彼方は今度さらにモニタ新しくする気らしいけどな」
「次のテスト頑張ってか。遥は何ねだるんや」
「俺は時計っつったけど、父さん彼方優先が多いしな。娘の方がかわいいんだ」
「父親っちゅうのはそういう物かもな。褒美はお揃いか」
「いっしょの物だな。値段違うとかで揉めてもつまんねえしだろ」
「愛されてるやん、ええ親やんけ」
「かまってちゃんだけどな。見ろよこれ、また俺こんなの押し付けられたんだぞ?」
「うわ。数学の問題け? けっこう多いな」
「次のテストまでに解かねえとなんだよ。面倒な親だ。あ親で思い出した。コロッケOKだって」
「お? 面倒やないってか、そら嬉しい」
「その日は滝も来るらしいぞ。筑前煮が滝のリクエストだ」
「あーあれも手間かかるしな。なんや悪いな、慶太と2人して」
「全然。母さん喜んでたぞ。すげえ楽しみだって」
「そんならええけど。遥の家行くんがオレも今から楽しみやし」
昼休みに滝んとこ来た彼方も、やっぱり滝にタブレットの自慢だ。嬉しそうに見せびらかしてやがる。
む。次はこれのアクセサリ?
それも欲しいかもしんねえ。ペンシルとかキーボード、トラックパッドはあると便利そうだもんな。ふむ。
「あそだ。弥勒、俺相沢と遊び行ってみる事にした」
「…そうなんや」
「うん。まず俺と話合わねえヤツじゃムリだしっつー事でな」
「たしかにそこは重要やしな。どんなとこ行くんや?」
「カフェっつってたな。話すならいいって、日曜日に相沢と対決だ」
「対決て、オレの敵やしけ?」
「それもあるけど、俺デートっつーのが未体験ゾーンだ。慎重にいかねえとだろ?」
「普通でええやろ。おまえの事が好きなんやし」
「そうか? 普段制服だし、服とか考えねえとじゃね?」
「そんな凝った服着んでええって。おまえの普段の私服で十分やって」
「俺Tシャツとかジーパンだぞ?」
「それでええ。気張りすぎてる方が引くって。ただし古いTシャツはやめとけよ?」
「当たり前だ。首元ダルンダルンとか最悪だろ」
「首だるだるのTシャツやなかったら大丈夫や。相手はおまえが好きなんやし」
「そか。だったらそうしとこう」
「遥、女子と初デートけ? 何喋ったか聞かせろよ?」
「うん。なんだかんだで楽しみだしな。つまんなくなんねえ事を祈ろう」
弥勒と喋ってたらデートがちょっと楽しみになって来たな。
あとは相沢と話しが合えば、つまんねえ事にはなんねえだろ。
放課後、いつもと違って今日は弥勒が俺んちに来るから、買い出しとかしねえで2人で俺んちに向かう。
俺んちはごく普通の3階建てで、俺の部屋は2階にある。
母さんはまだ買い物中らしく、いつものママチャリがガレージにねえな。
「ここが遥んちか」
「普通だろ? まあ上がれよ、俺の部屋は2階だぞ」
「お邪魔しますー」
「弥勒、お茶でいいか? なんか部屋持ってって飲もうぜ」
お茶入れて部屋持ってって弥勒とくつろぐ。
俺の部屋に弥勒がいるな。弥勒が来たんだから当たり前だけど、見慣れねえ風景だ。
「けっこう狭くて物が多いだろ?」
「そんでも散らかってるわけちゃうやんけ。掃除したとか?」
「いつもこんぐれえだ。弥勒にカッコ付けるのも、どうかと思ったしな」
俺の部屋は元和室を改造してるから、押し入れがそこそこデケえのが特徴だけど、それ以外は机もベッドも特にオシャレじゃねえ。
あと、どう頑張っても本棚に入り切らねえ本が、溢れて横とかに積んであるぐれえか。
共用本棚に置きたくねえ本だってあるからな。
俺が掃除機かけるのは週一回ぐれえだけど、散らかすと母さんが勝手に掃除するから、なかなか油断出来ねえ環境なんだよ。
うちの母さんは専業主婦だから、この家の守護者的存在だし、毎日絶対家中掃除機かけるから、触られるのがやならやるしかねえ。
「へえ? ほなベッドの下にお宝は放置か」
「おい。そんなとこにねえから、見ようとすんじゃねえ」
「ほなどこやろ? 本棚にはなさそうやけど…」
「こら弥勒。俺おめえんちでそゆのやってねえだろ?」
「オレんちにあるわけないやんけ」
「ねえわけねえだろ。あれがねえヤツは逆に不健全じゃね?」
ウソ吐くな。
健全な男子高校生がエロフォルダの1個も持ってねえとか、絶対あり得ねえぞ。
彼方命の滝だって絶対持ってるはずだ。
「古い写真の類いはオレ全部、ばばあんちやで?」
「写真?」
「おまえのアルバム、見たいし」
「お宝ってそっち?」
「ん? ああエロいのは遥の事やしPCやろ? ぷ。エロいの探されるて思たんや」
「うっせえ。アルバムだな! 見せてやんよ、くそぅ」
押し入れからアルバム引っ張り出して、弥勒に俺のちっせえ頃の写真を見せてやる。
当たり前だけど彼方がいっぱい写ってるな。
つか、生まれたばっかから幼稚園ぐれえまでは、ほとんど2人いっしょに写ってる。
俺用アルバムでも共用アルバムみてえだ。
「うわ、ちっさー…」
「双子だったからな。俺も彼方も2000gに足りねえヤツだったぞ」
そんでもちっさかったおかげで生まれる時に、母さんの腹切らずに出てこれたらしいから、これは名誉のちっささなんだぞ。
「当たり前やけどやっぱ白いな。全身真っ白で真っ赤な目や」
「黒い赤子がこうなってたらビックリだろ」
「これが遥のおとんとおかんけ? おまえ顔はおかん似やな」
「それよく言われる。あ、これがばあさんだ」
「なんで髪の毛が緑?」
「こん時、自分で染めて失敗したらしい。ファンキーだろ」
これは今は亡き父さんのばあさんと写ってる写真だ。
母さんのばあさんと違って、米農家の逞しい系ばあさんだったらしいぞ。
「………………遥」
「ん?」
「好きや」
───その瞬間、たぶん俺の呼吸は絶対きっと止まってた。
弥勒が何言ったか理解するのに、すげえ時間がかかった気がする。
「あ……ぇ?」
「悪い。おまえに彼女が出来るとか、やっぱ嫌やし…言うとく」
「…………」
衝撃的すぎて頭が上手く働いてねえから、言葉が出てこねえまま弥勒を見る。
弥勒の動きをつぶさに観察する事ばっかしてしまう。
「オレと付き合えとかは言わんけど、オレが……すまん。気持ち悪いな、こんな話」
「…………ぁ」
目の前で弥勒が顔伏せて辛そうにしてるけど、俺はどうしたらとか、何言えばとか、全然思い付かねえで、弥勒を見るしか出来ねえ。
何も言えねえでいると、ゆっくり顔上げて弥勒も俺のこと見てて、だから何か言わねえとって思うけど、何て言えばいい?
俺が相沢を彼女にすんのが嫌だっつったし、弥勒が嫌なら断るのはいいけど、………それってどうなんだ?
弥勒が好きだっつーのは、つまりそういう好きで、俺は弥勒の事、そういう好きかとか考えた事なくて…でも弥勒は好きで…
よく分かんね。好きの種類が違う気がするけど、好きだし、仲良くしててえし、えーとえーと、何か言わなきゃ。何か言わなきゃ。
「俺、その…弥勒が好きっつーのと違うだろうけど、弥勒が好きだ」
「そう、け? 気持ち悪いとか…」
「んなわけねえだろ? だから弥勒がえーと…俺と仲良くしてて欲しいぞ」
そうだ。これすげえ大事だ。
告られたあと、付き合うってならねえ場合、気まずい感じになったっつー話聞いた事ある。
それはやだ。
「オレが遥を好きでも、か?」
「なんだよ。弥勒は俺と仲良くしたくねえのかよ?」
俺はそんなのやだぞ?
弥勒とは、これからも色々いっしょに晩メシ作って食いてえし、勉強したり遊び行ったりもしてえからな。
「……オレの好きは、キスとかしたい好きやで」
「キスか。うーん…」
キス…キスか。不思議なんだけど、やじゃねえな。
弥勒にキスしてえって思われるの、全然やじゃねえ。不思議と気持ち悪くもねえ。
「キスしてえって思っててもいいぞ」
「ええんけ?」
「ただし、俺は今んとこしてえって思ってねえから、キスしねえけど」
そこはさすがに急に対応するのはムリだ。
まず今まで考えた事がなかった可能性の話だし、今後じっくり時間かけて検討するからな。
「それはええ。強要したりはせんし」
「だったら、えーと、あと相沢は断れば終わりだな」
これで弥勒の心を悩ませる問題は、とりあえず解決する。
俺が相沢とは付き合わねえって言えば、ひとまず弥勒も安心するだろ。
「は? 断るんけ?」
「嫌なんだろ? 俺に彼女出来るの」
つか俺、この瞬間に相沢と付き合うっつーのはなくなったから。
弥勒が関係壊れるかもしんねえって思いながら、一生懸命気持ち告げてくれたのに、弥勒と友だちやりながら、相沢と付き合うとか、そんな酷え事は出来ねえだろ。
「嫌やけど…」
「でもデートする約束はドタキャン出来ねえから行くぞ? さすがにかわいそうだしな」
相沢だって頑張ってくれたんだから、そこは約束守って、誠意ある気持ちで返事しねえと、かわいそうだしデートはしねえとだ。
「デートしてから断るんけ? 話が合うて楽しかっても?」
「俺弥勒の方が仲良くしてえし、弥勒が我慢出来ねえなら断るしかねえだろ?」
「あーうん。そうやな」
「あんま女に嫉妬すんなよ?」
俺は男だから、かわいい女子には、やっぱちょっとぐれえドキドキすると思うけど、あんま弥勒がヤキモチばっか妬くのはやだ。
「いやムリ。今後オレ遥口説いてええけ?」
「まあ、それはしょーがねえな。俺の事好きな弥勒と仲良くするんだし」
むしろ口説かれねえっつーことの方が納得いかねえだろ。
弥勒が好きって言わねえとか、何のために相沢断るんだっつー話だぞ。
「よかったー…気持ち悪がられたらどうしようかと…」
「そういや、弥勒って男が好きなのか?」
俺、今後は弥勒が仲良くしてえっつー男に、弥勒がドキドキしてねえか見ねえとなのか?
それはちょっとなんか気持ち悪いぞ?
伊東藤本的視線で弥勒を観察するのは、むー。したくねえ。
男&男で想像する趣味は、俺にはねえから、なんかややこしいなー。
「いや、そういうわけやないと思うけど…オレ他で男好きになった事ないし」
「んじゃ女は?」
「ない。…オレ男が好きなんかな?」
「そんなの俺に聞かれても分かんねえよ」
ふむ。今後、弥勒が仲良くしてる男女に対して、俺はむーってなっていいのかどうかが、ハッキリしねえわけか。それは難しいな…
「それもそうやな。おまえは?」
「俺? 俺も女好きになった事ねえな。彼女は欲しかったけど」
高校生なったら、かわいい女子に告られて、ウキウキの放課後デートとか、けっこう憧れだったんだけど、これじゃ彼女は作れねえ。
「過去形なんけ?」
「だって弥勒いるじゃん。俺が彼女作るのやだっつーならいらねえぞ。あ、こいつが琢磨だ」
「こいつが遥の幼馴染か。なんかヤンチャそうやな」
「すげえイタズラ坊主だったぞ。彼方を鼻タレって呼ぶんだ」
どうしようかと思ったけど、何か平和に戻ってよかった。
やっぱ俺、弥勒といっしょが楽しいしな。弥勒にも笑って欲しいし。
晩メシの時間になって台所に降りてくと、コロッケと筑前煮以外にも、おかずがズラッといっぱい並んでて、なんかすげえ品数だぞ。
サラダにゴマ和えに、きんぴらに浅漬け、スープにキッシュに炊き込みご飯。
多い、多すぎるよ。なんかのパーティみてえじゃん。
他所の人が家来るのが久しぶりだからって、いくら何でもこれは母さん張り切りすぎだろ…
恥ずかしい親だなーもー。
「人呼ぶなんて久しぶりだから、母さん張り切っちゃったわ」
「やり過ぎだババア。弥勒引いてんじゃん」
うちの晩メシは普段、汁物と作り置き加えてもせいぜいおかずは4つ程度だろ?
こんな豪勢なメシ毎日食ってるとか、思われたくねえ。
「いや、うまそうっすよ。オレめっちゃ嬉しいっす」
「すごすご馳走なりね。タキ、かなタソいつもは普通なりからの?」
「おれ、彼方が美味しい物食べて育ったって分かるの嬉しいよ」
「いやー今日は賑やかで父さん楽しいなー! みんな、記念撮影しようか」
写真好きのヘナチョコ父さんは、何かっつーとカメラ構えるけど、今日もさっそくだし…恥ずい、恥ずい親たちだ。はしゃぐなよ。
「はしゃぐんじゃねえよ、このジジイはもーっ」
「うむり。靴下臭すは黙るがよろし」
「滝くん、彼方が酷いよ! 何とか言ってくれないか?」
「彼方はもーお父さんとも仲良くしなよ」
6人で食うともうすげえ賑やか。
ジジイもババアもはしゃぎ過ぎで、なんかビールとか出してきやがったしさ。俺ら高校生だろ。
おい。弥勒も滝も飲むんじゃねえっつーの。
…彼方はいい、こいつが飲むのはいつもの事だし、今さらだからな。
普段は靴下臭えって呼ぶクセに、ビール欲しい時は父さま呼びしてまで、おねだりするヤツだから、彼方は飲むのが普通だし。
「はるタソよろしではなすか? 今日はどなたも自転車なすよ」
「おめえら帰りに補導されても知らねえからな?」
とか言いつつ俺もちょびっとはビール飲むけどな。
みんな飲むのに、俺だけ飲まねえっつーのも、悔しいからビール飲んでやる。
「家でビールとか飲むんやおまえ」
「そんなグビグビやんねえけど、ちょびっとはな」
「いい飲みっぷりだねー2人とも、おじさんちの子になるかい?」
「ええー? おれが養子ですかー?」
「あらあら、あなたまたそんな事言い出して」
「のんのん。タキはムコならなすよ? かなタソがヨメ行くなりっ」
「嫁に行くとか彼方…気の早い事言うと父さん泣くよ?」
「見ろよ弥勒このバカ親っぷりを…どう思う?」
「ちゃんと愛されててええやんけ。ん? これカボチャのコロッケや、うま」
「それ美味しいでしょう? チーズも入ってるのよ」
「お母さんの料理、ほんと美味しいです。ね?」
「うむり。今日はゴージャスメシなり」
いっぱい作り過ぎじゃねえかっつー料理も、6人(うち男子高校生3人)だと、余るような事はなくてどんどん減っていく。
滝は父さんに気に入られて、しきりに息子になれって言われてるし、弥勒は母さんと料理談義に花を咲かせてるし…カオスだ。
みんなできれいに平らげたあとは、作ってくれた母さん労って洗い物は俺ら男でやるぞ。彼方はついでの賑やかしだ。
「後片付けがこんなに楽なら、母さんいつでも大歓迎よ?」
「分かったから、あっちで休んどけっつってるだろ?」
「うひょ。かなタソコップ運ぶなり〜」
「遥のおかん、固めた油はここ捨てるんでよかった?」
「彼方、ここのお皿も運んでくれるかな?」
みんなでやると、後片付けもあっという間に終わって、玄関で弥勒を見送る。
カオスだったけど、賑やかで楽しいメシだった。
「遥、マジでメシめっちゃうまかったわ」
「そりゃよかった。また俺んちでも遊ぼうぜ」
「おう。でも次はオレんちでメシやな。おやすみ遥」
「うん。おやすみ弥勒」
夜、そろそろ寝ようかっつー時間に、弥勒からメッセージが届いた“今から寝る、今日は楽しかった”
たったそれだけのメッセージだったけど、今弥勒が俺の事考えてるのかと思ったら、なんかむゅむゅしたくすぐってえ気分になった。
もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者は泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ




