表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後妻はもう恋をしない。愛をくれたのは、この子だけでした  作者: 秋月 爽良


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/31

28話 「リオンが笑ってるなら、それでいい」

 朝食のあと、リオンはお気に入りの木馬のぬいぐるみを抱えて、部屋の中をとことこ歩いていた。

 まだあどけない顔には眠気が残っていて、まぶたをこすりながら、ふらふらと私の足元にやってくる。


「母しゃま、これ見て? くるまの馬しゃん」


「ふふ、かっこいいわね。リオンの馬しゃん、大冒険中?」


 しゃがんで目線を合わせると、リオンはにっこり笑ってうなずいた。


 ──そこへ、不自然なまでにややゆっくりした足取りで現れる影がひとつ。


「……それは、馬なのか?」


 聞き慣れない声に、リオンがふいっと顔を上げる。

 レオニスだ。


 彼はどこかぎこちない動きで、リオンの傍らにしゃがみ込もうとして──。

 盛大にバランスを崩して尻もちをついた。


「……っ、な……」


 なぜか本人が一番恥ずかしそうにしている。


(……何やってんの、この人)


 思わずため息を吐きそうになるのをこらえて見ていると、

 リオンは少しだけ目を瞬かせ──それから、にこっと笑った。


「とーしゃま、ころんだの?」


 あまりにもナチュラルな口調に、レオニスが一瞬フリーズする。


「……と、父、しゃま?」


「うん。今日もいる?」


「…………まあ、いる」


 明らかにうろたえた様子のレオニスとは対照的に、

 リオンはなんてことないようにぬいぐるみを差し出した。


「じゃあ、これ、貸してあげる」


 それは──リオンがいつも手放さない、お気に入りの木馬。


(……ぷぷ。めっちゃ嬉しそうにしてるじゃない)


 ちょっと構ってもらえただけで、

 リオンはすでに嬉しそうにぴょこぴょこと跳ね回っている。


 ああもう、ほんとに……。


「……急に『父親らしく』なろうとしなくていいのに」


 ぽつりと漏らすと、レオニスが一瞬だけこちらを見る。


 だけど私は、それには応えなかった。


 リオンが笑ってる。

 それだけで、今はもう──十分だと思った。


 ……ここで生きていくって、決めたんだから。

※感想欄は、一部の読者様との認識の違いによる混乱を避けるため閉じております。

ご理解のうえ、お楽しみいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ