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後妻はもう恋をしない。愛をくれたのは、この子だけでした  作者: 秋月 爽良


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24話 笑いの止まらぬ罪人

 アルベルトの額に脂汗が(にじ)み、グラスを持つ手が震えている。


「な、何だと!? いや、そいつは……!」

「おい、ここに連れてこい!」


 レオニスが控えていた衛兵に命じると、ゆっくりと扉が開かれ見覚えのある男性が、後ろ手に縛られたまま姿を現した。

 私達の近くまで来ると、兵士にグッと押さえつけられる。


「うっ……。た、助けてください、アルベルト様――」

「お、お前など知らん! 殿下! 私は会ったこともない男です」


(当然そう言うよね……)


「フォルスター侯爵。本当に君は、彼のことを知らないのかい?」


 セドリック殿下の言葉に、アルベルトはコクコクと頷いた。


「は、はい……。私は本当に知らんのです……。そのような者、ふふ……。初めて見ました……」


(……ん? 今、笑ったよね?)


「で、殿下。どうか信じてくださ……ひひ。わ、私は……。は、はは……。な、何だこれは!」

「どうしたんだ? フォルスター侯爵の様子がおかしいぞ……?」

 

 静まり返った会場が、やがてざわめきに包まれていく。


「殿下、誤解です! こ、これは何かの間違いで……! ふふふ……。ひゃ、ひゃはは……っ!」

「……あ、やっと効いてきた」


 アルベルトの口元が引きつり声は震え、笑うことを自分でも止められなくなっていく。


「ははっ……、は。お、お前! 一体何をした! あひゃひゃ! わ、笑いが止まらん!!」

「あーそれ、叔父様のグラスに毒付着させてたんですよ」


 満面の笑みを浮かべて、手元の小瓶をぷらぷら揺らした。

 周りの貴族達が、一気にどよめく。


「どうせ真実は話さないでしょ? だから、毒を盛ったんです。

……ここに解毒薬があるんで、本当のことを話してくれればあげますよ?」


 プラプラと、手に持った薬の瓶を見せびらかす。


「ぶはっ! な、何だと!? ふっ、ふふっ」

 

 アルベルトの顔が引きつり、肩が小刻みに震える。


「今笑ってるのって、副作用です」


 バカにするように、薄く笑って手元の小瓶をぷらぷら揺らす。


「早くしないとドンドン毒が回っていきますよ?」


 会場内はざわざわとしていたけど、私の言葉に周囲の貴族たちが息を呑み、その場の空気がぴたりと凍りついた。


「──さあ、どうしましょうかねぇ。お・じ・さ・ま? ふふっ」

「い、いひっ……! 衛、衛兵ッ! この女を、つっ、つか、つかまえろォォ……! ふ、ふひゃはは……っ!!」


 アルベルトの指示に、誰も反応しない。

 

「か、彼はリューンハルト夫人に向かって、何を言いだすんだ! 公爵夫人に失礼だろう!!」


 先ほどの静けさとはうって変わり、非常識な発言をするアルベルトに対して抗議の声があがる。

 

「らしいですよ? それに、叔父様の命令はもう誰も聞いてくれないみたいですねぇ」


 私はゆっくりと、叔父様に視線を向けて微笑んだ。

 アルベルトの顔が真っ青になり、笑い声がますます引きつる。


「……もういい、フォルスター侯爵。私たちがどこまで調べているか、知っているかい?」

「すでに手遅れなんですよ、叔父上。全て王家には報告済みです――」


 アルベルトの目が泳ぎ、笑い声が震えながらも漏れ続ける。

 その場に立っている彼の足が、ついに力を失ってガクンと膝をついた。


 セドリック殿下は、後ろを振り返る。

 その様子をじっと眺めていた陛下の口元がほんのわずかに持ち上がり、無言のまま(うなず)いた。


「フォルスター侯爵、王命により拘束させてもらうよ? 君には厳しい尋問を受けてもらう」

「そ、そんな……。わ、私は何も……。ひひっ……な、なんにも……!」


 アルベルトは笑い声が止まらず、震える手を前に差し出す。


「く、くれ……! 解毒薬を……あ、あひゃ……! だ、だが……わ、私は……っ!」


 そのとき華やかなドレスの裾を揺らし、ひとりの美しい女性が会場の中心に進み出る。


「どうかこの人に、……夫に、解毒薬をいただけませんか? このままでは、笑い死にしてしまいます。お願いします」


 深々と頭を下げる女性の登場に、会場の空気がしん……と静まりかえる。


(この人は……、叔父様の奥さんね?)


 レオニスがそっと、私の肩を抱く。


「エリシア……」

「うん、分かった。……どうぞ」


 すぐに解毒薬が入った瓶を手渡すと、彼女は少し驚いたように目を見開いた。

 深く頭を下げ夫の元へと駆け寄ると、膝をつき口元に薬をそっと注いでいる。


「さあ、あなた。これを飲んでください。……もう大丈夫だから。ほら、落ち着いて」


 薬が効き始めたようで、笑い声がかすれていたアルベルトは、呼吸が少しずつ整う。

 妻と思われる女性は目を伏せ、見た目からは想像できないような、低く厳しい声を出した。


「──アルベルト、もう隠さないで。……私が何も知らないと思っているの?」


 アルベルトは黙り込む。


「セドリック殿下。私はエリシア様の婚約が破棄された時から、夫が怪しいと薄々感じておりました」

「どういうことかな? 夫人」


 彼女は、エリシアの方へ向き直る。


「エリシア様。貴様様の婚約破棄は、元々仕組まれたものだったのではないかと思います」

※感想欄は、一部の読者様との認識の違いによる混乱を避けるため閉じております。

ご理解のうえ、お楽しみいただければ幸いです。

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