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後妻はもう恋をしない。愛をくれたのは、この子だけでした  作者: 秋月 爽良


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第17話 怒りの制裁!?レオニスの本気が出た瞬間

 夜も更け、資料室の中はしんと静まり返っていた。

 私は机に突っ伏しそうになりながら、資料に目を通し続ける。


 そのとき、背中にそっと重みを感じた。


「……え?」


 振り返ると、落ち着いた色合いのケープが私の肩を覆っていた。

 視線を上げると、すぐ後ろに立つレオニスが、腕を組んで私を見下ろしている。


「根を詰めすぎだ。……君が倒れたら、リオンはどうする?」


 ぶっきらぼうな声に、胸の奥が少し熱くなる。


(……変な人。こういうところは妙に優しいんだから)


 私は内心苦笑しながらも、そっと肩に触れた布の感触を確かめるように指を動かした。


 ──そして翌朝、軍の調査班からの新たな報告が届く。


「閣下、カイル殿とルディ殿がこちらに到着しました」


 扉の外から兵士の声が聞こえてきた。

 私は思わず立ち上がり、前にいるレオニスのほうへ視線を向ける。


 彼は机の上に資料を広げ、落ち着いた表情で頷いた。


「現状、怪しい納入経路は3つだ。軍用物資の横流しの可能性もある。ルディ、カイル、お前たちはそちらの調査を頼む。

マリネ、カイ、セスは屋敷内と厨房関係の確認を」


「「「了解!」」」


 私はその様子を見つめながら、息を呑む。


(……やっぱりこの人、軍の指揮官なんだ。当たり前だけど……)


 兵士とマリネたちが、チラチラこちらを見てほくそ笑んでいるけど、その理由はよくわからなかった。


(……私、何か変なこと言ったっけ?)


 首をかしげながら再び資料に目を落とした。


 ◆


「閣下、軍の調査班からの報告です」


 兵士のひとりが駆け足で戻ってきて、レオニスの前に跪いた(ひざまづいた)

 私は緊張しながら、隣で耳をそばだてる。


「調査の結果、搬入業者のひとりが『公爵家の正式な紹介状』を所持していたことが判明致しました。

しかもその紹介状は、閣下のご親族の名義だったそうです」


「……親族!?」


 思わず声が出て、私は慌てて口を押さえる。


「さらにその業者が使っていた搬入ルートは、軍の監督下にある特殊物資用の経路でした。

ご親族の中でも軍関係者か、立場のある方でないと現在利用できません」


 兵士の言葉に、レオニスの表情が固くなる。


「身内の人間……。それも親族の誰かが仕組んだ、ということなのか……」


(親族の誰かが、あんなに小さいリオンを殺そうとするの……?)


 頭の中が一瞬真っ白になる。レオニスには兄弟はいなかったはず……、では彼らの中の誰が?


「落ち着け、エリシア」


 横で低く、静かな声がする。


「必ず証拠を掴んでみせる。約束するから――」


 レオニスがまっすぐ私を見る。彼が拳をキツく握り締めているのが分かった。


(私よりも何倍も辛いのに、それでも家族を守ろうとしている。この人は……どうしてこんなに強くいられるの?)


 彼の気持ちを思うと、胸が少しだけ熱くなる。でもこれはきっと、気のせいだろう。


 ◆


「旦那、ちょっといいっすか?」


 落ち着いた声に振り向くと、ふたりの男性が扉の側から中を覗いていた。


「どうした? カイル」

「おい! 中に入れ!」


 ルディに背中を蹴飛ばされ、顔面蒼白の男が転がり込んでくる。

 彼はガクガクと小動物のように震え、視線を泳がせていた。


「コイツはだれだ?」

「例の搬入業者ですよ。人の目もあるんで連れてきました」


 ルディは男性の腕を後ろに捻り上げている。側で見ていたレオニスは、すらりと剣を抜いた。


「……話せ。嘘は吐く(つく)なよ?」

「旦那、気合い入ってんなぁ」


(ひえぇぇ……。剣抜いたよ、この人)


「ひいっ! い、痛いっ、肩が外れる! わ、わたしは最初言う通りにすれば、取引を優遇すると言われたんです……。

でも家族を殺すと脅されて、途中から断れなくなって……。脅されてっ……!」


 彼の手は震えている。私は思わず、机の端にあった水差しを差し出した。


「落ち着いて、ゆっくり呼吸してみて。誰に何を脅されたのか、順番に話してくれる?」


 優しく話しかけニッコリと微笑むと、男性はほっとした顔をする。


「気持ちは分かるけど、レオニスも少し落ち着いて。ね?」


 彼は眉尻を下げ、剣をしまった。


(これぞ、飴と鞭ってやつ? 覚悟しなさい……。リオンを苦しめたこと、絶対に許さないんだから!)


 ◆


 隣のテーブルでは、セスとカイが帳簿を並べて照合していた。


「セス、やっぱり……ここの数が多すぎないか? 納入した薬草の量が、帳簿と一致してないよ」

「こっちの記録もだ。しかも、これ……最近じゃないぞ。かなり前からじゃないか――」


 セスの言葉に、部屋にいる者達の視線が一斉に向く。


 マリネは静かに昔の納品記録を持ってくると、ふたりの側に座った。


「この帳簿を見て。先妻様がまだいらっしゃった時から、怪しい納入があったみたいよ。

まさか、当時から毒物が混入されていたというの……?」


 3人は顔を見合わせている。


「まさか……。先妻様がお亡くなりになったのも、これが原因なんじゃ……?」


 カイがぼそりと呟くと、部屋の中が静まりかえった。セスは確認するように、帳簿を何度も見比べる。


「おい、これ全部同じ人物が担当しているぞ? こことここ、そっちにも彼の署名がある」


 冷静に帳簿を見比べ続けるセスの声には、ほんの少し怒気が込められていた。

 彼の言葉に、顔を真っ青にしたカイが慌てて立ち上がる。


「だ、旦那様! ……すぐに、ご報告したいことがございます!」

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