第百三十三話 進化
「陛下、全戦力が所定の位置につきました」
『いよいよですわ。祖国をこの手で取り戻すのです!』
『ケイト、気合が入っているわね。薔薇の艦隊、所定の位置についたわ』
『兄様、グラック伯爵家艦隊も所定の位置つきました』
『陛下、マルコ様の護衛はお任せください』
『アーベルト連合王国特別艦隊も問題なしだ』
『マーカス帝国特別艦隊も同じく問題なし! いつでもいけるぜ』
『近衛騎士団も、いつでも出撃可能だ』
「あとは、夫君が号令をかけるのみよ」
「ラーベ王国領内に向けて前進開始! いつまでも無礼に居座る異邦者たちを叩き出すんだ!」
旧ラーベ王国の国境沿いにゾフ王国軍の大軍が集結、戦列を組んでいる。
一度進撃の命令が下れば、整然と旧ラーベ王国に雪崩れ込むだろう。
サクラメント王国の王都上空で、ゾフ王国軍が大戦力を用いた示威行動を行ったおかげで、サクラメント王国貴族たちは完全に牙を折られてしまったようだ。
ゾフ王国への吸収合併を阻止する動きはいっさいなく、今のところは素直に命令を聞いていると、サンデル公爵から通信が入っている。
ただ、ゾフ王国軍がラーベ王国奪還に失敗すると、また騒ぎ始める者たちが出るだろう。
ゾフ王国が強ければ従い、弱ければ逆らう。
ただそれだけのことなので、この作戦を失敗するわけにはいかなかった。
「夫君は、まだ出ないでくれ」
「わかってるよ、アリス」
十分に戦力を整えたし、いつも王である私が最前線で戦うのは問題だとアリスに指摘され、今は総旗艦ゾフの艦橋に設置された椅子に座っていた。
「なんか落ち着かないなぁ……」
「夫君は、そこにどっしりと座っていることにも慣れてもらわないと。それに、夫君が活躍してしまうと、部下の手柄にならぬのでな」
「それもあったか。そろそろ始まるな」
全軍に前進の合図が出た。
異邦者たちにも領地の概念があるのか。
先陣の魔晶機人改Ⅱ部隊がラーベ王国領に入った瞬間、待ち構えていた異邦者たちと戦闘に入った。
とはいえ、向こうは兵士クラスと少数の小隊長クラスのみだ。
それに加えてこちらは、戦闘経験を積ませようと新人操者ばかりだが新型の魔晶機人改Ⅱであり、火器も充実している。
五十七ミリ銃により、異邦者は次々と落とされていった。
『相手は、こちらの命乞いすら聞かず、食い散らかす化け物どもだ。一匹残らずハチの巣にしてやれ!』
『『『『『『『『『『了解!』』』』』』』』』』
フィオナと一緒に訓練マニュアルを作り、それに従って訓練をしたおかげか、新人操者たちの戦い方は安定していた。
古い操者よりも、火器の扱いに慣れている者も多い。
「まずは、ラーベ王国領内への侵入に成功ですね」
アリスは安堵した表情を浮かべるが、まだ油断はできない。
今戦っている異邦者たちは、人間の軍隊でいうところの国境警備隊レベルなのだから。
「ラーベ王国の中心部には、異邦者たちの主戦力がいるばすだ。それを撃破しないことには、ラーベ王国の解放は難しい。だが他にも、領内のあちこちに戦力を置いているから、残敵掃討も確実に行わなければ……」
「人間が、一度奪われた土地を異邦者から取り戻そうとするのは初めてのことです。予期せぬことが起こるかもしれませんが……。フィオナさんからの情報では、ラーベ王国への再侵攻時とそれほど戦力は変わっていないそうなので、防衛以外でやれることは少ないと思いますけど。異邦者は、他に山ほど戦線を抱えていますから」
最近は他の国も、魔晶機人の改良、稼働停止機の再生、ゾフ王国から輸入したクロスボウの量産、以前は試作段階だった魔銃の試作、量産を進めているので、異邦者たちもなかなか新しい土地を奪えない状態が続いていると聞いている。
だからこそ私は、異邦者が時間稼ぎで補給路の遮断やゲリラ戦を行う可能性を考慮してた。
「だからなるべく、異邦者を後方に残したくないんだ」
下手に異邦者を残して前進すると、生き残った異邦者がこちらの補給路を分断してくるかもしれない。
残敵掃討は必須であり、前進は慎重に行う必要があった。
「異邦者がどれだけが不利になっても降伏するとは思えず、最後まで抵抗するとなると、残敵掃討も命がけになりそうですね」
「だが、確実にやらなければいけない」
魔力を持たない普通の人たちでは異邦者に歯が立たず、一方的に襲われ、食べられてしまうのだから。
『ゆっくりとでいいから、確実に異邦者を殲滅してから前進するんだ!』
『了解!』
俺の懸念をアリスが全機に伝えると、魔晶機人改Ⅱ部隊を率いる隊長から大声で指示が飛んだ。
それを受けた操者たちは、五十七ミリ銃を連射しながら異邦者たちを撃ち落としていく。
やはり五十七ミリ銃の威力は絶大で、次々と異邦者たちは穴だらけになって落ちていった。
今のところ、逃げたり隠れた異邦者は確認できていないので、今のペースで進撃しても問題はなさそうだ。
「順調なようでよかった」
国境付近を守っていた異邦者たちは呆気なく壊滅し、ゾフ王国軍は順調に占領地を広げていく。
補給艦隊と補給路の守りも万全で、ラーベ王国に居座る異邦者たちは、ゾフ王国軍によって一方的に殲滅されていった。
『さすがは陛下だ! 我々は勝てるぞ!』
『この世界から、異邦者たちを一匹残らず殲滅してやる!』
『人間を舐めるなよ!』
「……」
「夫君?」
「油断は禁物なんだけど、今の彼らに言っても聞いてくれるかどうか……」
旧式の魔晶機人改でも異邦者を倒せるからか、さらに高性能な魔晶機人Ⅱに搭乗している操者たちから勇ましい発言や、異邦者を侮る声が通信機越しに聞こえてきた。
油断は禁物なんだけど、これまでに何度も注意しているし、それを聞いても聞く耳持たない人は一定数出てしまう。
一度痛い目に遭ったくらいで学習してくれるといいのだけど……。
「今のところは順調に見えるが、なにか見落としでもあるのか? 夫君」
「異邦者も生物だから、そろそろ進化するんじゃないかって。まさか、ずっと一方的にやられっ放しというのはあり得ないと思う」
ゾフ王国以外の国だって、異邦者の大侵攻の影響を受けてすぐ、魔晶機人を改良し始めたのだ。
同じ生物である異邦者が、人間にやられたままでいるはずがないと私は思っていた。
「異邦者はあんな不気味な形でも、一応生物だ。生存本能が刺激されて進化するのではと、私は思っている」
「確かに、その可能性もありますね」
「繁殖力を増して、とにかく異邦者の数を増やすか、もしくは自身が強くなるかだ」
だがそう簡単に、異邦者の繁殖力は上がらないはずだ。
少なくとも代替わりをしなければ、突然異邦者が進化して生殖能力は上がった、なんてことにはならないだろう。
それに偵察衛星からの映像によると、いまだ定期的に、絶望の穴から異邦者が湧き出ていると、フィオナから報告が入っていた。
数はそちらで補っていると見るのが正しいと思う。
果たして、絶望の穴の向こう側にどれだけの数の異邦者が存在するのか。
できれば知りたいところだが、今の私たちにそんな余裕はなかった。
「あと、異邦者の体の仕組みからして、自身が強くなることはそう難しくないかもしれない」
宇宙艦艇や兵器の残骸、この世界では岩石や樹にも寄生できる、決まった形のない寄生生物。
それが異邦者であり、大きさによってランクづけされているが、それしか見分ける方法がないということは、兵士クラスが隊長クラス、なんなら要塞クラスに成長する可能性だってあるのだから。
「魔晶機人を魔晶機人改に改良するようにですか?」
「この世界には餌もいっぱいあるから、異邦者が成長する可能性は捨てきれないと思う。今は作戦どおり異邦者を駆逐しつつ、占領地を広げることを最優先にしよう」
「そうですね」
今のところラーベ王国領攻略は順調に進んでおり、多くの異邦者を倒して、いつくもの村と町、農地や河川を取り戻していった。
『陛下、この調子なら無事にラーベ王国を取り戻せそうですね』
「……油断は禁物だけど」
『当然、注意はしておりますとも』
順調に戦果があがっているので、報告する魔晶機人改及び魔晶機人改Ⅱを指揮する隊長たちのによる定時報告の声も明るい。
戦が上手くいっていると、いくら油断するな、注意しろと言っても限度がある。
なぜなら、今はとても上手くいっているからだ。
「(なんか、嫌な予感がするんだよなぁ……)」
前世において、私の嫌な予感はよく当たった。
実はそれは『念波』の影響なので、困ったことにほぼ外れたことがないのだ。
そしてついに、順調だった味方の進撃速度が止まった。
『陛下! 異邦者が吐き出すタンの射程と威力が増しています! 損傷機多数! 操者の死者はいませんが、戦闘不能になる機体が出始めました!』
「やはり……」
「夫君?」
自身が寄生している宇宙船や兵器の残骸に使われている金属を芯としてタンを吐く。
異邦者が持つ唯一の遠距離攻撃手段であったが、これはかなり接近しないと脅威になり得ない。
ところが今、最前線の味方が遭遇した兵士クラスの異邦者が遠距離から放つタンにより、味方に少なくない被害が出ていると報告が入った。
幸いだったのは、こちらは味方機体の操縦席回りの強度を強化し、脱出装置の設置、操者に脱出訓練を義務化していたおかげで、操者に死者が一人も出なかったことだ。
「夫君、遠距離で撃ち合うと、数の多い異邦者の方が有利なのでは? それならば各機、格闘戦に移行した方が……」
「いや、それでも遠距離で撃ち合うことはやめさせない。魔晶機人改Ⅱの操者は経験不足だから、近接戦闘にするとかえって弱くなるし、損害が増えるからだ」
味方は数では不利だが、弾薬はまだ大量に残っている。
それにまだ遠距離からタン攻撃を食らっても、操者が死ぬことはないレベルの攻撃力だ。
「下手に近接戦闘に移行して、至近からタン攻撃を食らうと、操者に死者が続出する可能性が高い。とにかく撃って撃って撃ちまくって、遠方から異邦者を削っていかないと」
「夫君の意見は正しいと思います」
やはり異邦者は進化したか……。
だが今のところは、防御力が上がったわけではないので五十七ミリ銃で対応できないこともなく、私が遠距離戦を指示すると、多数の魔晶機人改、魔晶機人改Ⅱと、異邦者たちが激しく撃ち合う展開となった。
「損傷したら素直に後退して、機体の修理をするように」
『わかりました』
アリスがそう命令したので、意地でも戦場に残って異邦者と戦い続ける者は一人もいなかった。
損傷機はすぐに後退し、修理、補給をして戦闘に戻ったので、戦況は味方が有利に進めている。
だが、続々と後方から援軍が押し寄せるので、こちらはなかなか前進できない状況が続いていた。
『試作品の実戦投入許可が出た! 妾は近接戦の方が好きだが仕方がないの』
『リリー様、その試作狙撃銃は射程が長いので、兵士クラスの後方にいる小隊長クラスを狙ってほしいそうです』
『こうなってくると、華々しく名乗りをあげながら異邦者に剣で斬りかかる貴族たちでは辛いものがありますね』
『妾たちも、しっかりと射撃の腕前を磨かねばの』
これまでも、魔力で矢や金属製の弾を発射する武器など、遠距離攻撃する手段は存在したが、魔力は魔晶機人を動かすことが最優先なのでほとんど使われず、魔法は威力に問題があった。
なのでこれまでは、近接戦闘に強い操者が重宝されたのだが、これからは射撃が上手な操者も評価されるようになるだろう。
「とはいえ、近接戦闘の腕前も上げた方がいいに決まっている。新人が多い魔晶機人改Ⅱの操者たちも、この戦いが終わったら近接戦闘の訓練を強化しないと」
『そうなのか? エルオール』
ライムとユズハと共に、試作品の狙撃銃で小隊長、大隊長クラスを狙撃しながらそんな話をしていたら、エルオールから通信が入った。
「異邦者が吐くタンの射程と威力は上がったけど、発射速度ではどうしても火器に負けてしまう。となると、今度は近接戦闘特化の異邦者が出てくるかもかもしれない。その時に近接戦闘能力が低いと簡単に蹂躙されるだろう」
『ううむ……。確かに先日ラーベ王国から撤退した際に、一撃離脱タイプの特種な異邦者に襲われて味方は大きな損害を出した。奴はエルオールと協力して妾が剣で仕留めたが、あのタイプに弾丸をばら撒いても効果は薄そうじゃ』
「結局のところ、臨機応変に戦える操者が一番強い。だから私は、機体が撃破されても操者が生き残れるように、機体を改良させているんだ」
操者が臨機応変に戦えるようになるには、色々な経験を積まないといけない。
そしてなにより、操者が生き残らなければいけなかった。
『経験を積んだ操者は貴重ということか』
「そもそも、異邦者の数に対して操者が少ない。ゾフ王国では魔力が少ない操者向けにエア・トランスポートを配備したけど、これでもまだ足りない。他国はエア・トランスポートを持っていないから、数では人間が圧倒的に不利なんだ」
異邦者だけでもそうなのに、魔物と無法者の数も考えたら、人間はあまりにも不利であった。
なにしろ異邦者との戦と並行して、魔物と無法者の脅威もいまだなくなっていないのだから。
『このガトリング砲って、兵士クラスを薙ぎ払うには便利だけど、狙撃銃のように隊長クラスを狙うのは難しいわね』
『大型ショットガンも同じだ』
『炸裂弾も、密集した兵士クラスには大きな効果があるけど、後方で指揮を執る隊長クラスは防御力が増しているのか、狙撃銃しか効果がないぞ』
リンダ、クラリッサ、リックも試作品の火器で攻撃を続けているが、兵士クラスだけでなく、小隊長クラスも強化されているようで、なかなか戦線を押し出せないでいた。
どうやら小隊長クラスは、指揮に専念できるように防御力を強化しており、57ミリ銃だとかなりの数を命中させないと倒せないようになっていた。
『エルオールさん、キルレートは圧倒的にこちらが有利ですけど、後方から続々と射撃能力が強化された兵士クラスが押し寄せています。このままだと、弾薬補給のために一旦後退する必要があるかもしれません』
ラーベ王国出身の操者たちを率いているケイトから報告が入った。
まさか異邦者が強化された影響で、こちらが弾切れになって後退を余儀なくされるかもしれないとは……。
確かに異邦者の繁殖能力は低いが、絶望の穴からまだまだ湧き出しているし、適時強化されていく。
人間同士の戦争とは違って停戦や講和はあり得ず、殲滅戦だからこそ人間の方が不利なのが困ってしまう。
「アリス、アレを試してみるか?」
「そうですね。まだ実戦では試射をしていませんので、いいデータが取れるかと。兵士クラスが密集する場所に一発撃ち込んで、戦いの流れを変えるんですね?」
「一発撃つとしばらく撃てないから、一発だけだけど……。発射速度の改善は急がせないとなぁ……。艦首魔導砲、発射用意! 戦闘中の全機、急ぎゾフの射線上から離れるように!」
このまま戦っていると粘り負けする可能性があったので、新兵器を試してみることにした。
総旗艦ゾフの艦首に一門設置された艦首魔導砲は、火薬と魔力の双方の力で特別製の巨大砲弾を撃ち出す。
巨大砲弾には時限信管がついており、起爆させると半径数百メートルに爆風と破片を振りまく仕組みだ。
起爆させる場所は、ゾフにアマギから移植した戦術コンピューターがあるので簡単に計算できるようになっていた。
『ついに、艦首のデカブツを試すのか……。巻き込まれたら死ぬぞ! 回避!』
リックが叫んだおかげ……かどうかはわからないが、事前に艦首魔導砲について聞いていた操者たちは、異邦者との戦いを即座に切り上げて艦首魔導砲の射線上から退避した。
「全機の回避を確認! 艦首魔導砲発射!」
「艦首魔導砲発射だ!」
「エルオール様ぁ、艦首魔導砲を発射しますね。発射」
艦首魔導砲の責任者ではあるが、軍人ではないヒルデのあまり緊張感のない掛け声と共に、ゾフの艦首から巨大な砲弾が発射された。
時限信管が作動するまで、高速で発射された巨大砲弾が進路上の異邦者を引き潰していき、後方からの援軍が大量に集結していた地点で大爆発する。
多くの異邦者たちが爆風でバラバラにされ、炎に焼かれ、大量の砲弾の破片でズタボロに切り裂かれて壊滅状態に陥った。
「夫君、異邦者たちが撤退するようです」
「追撃だ! 私も出る!」
これが他国との戦争なら、なにがなんでも追撃して大打撃を与える必要などない。
だが、我々人間と異邦者は生き残りをかけて生存戦争を戦っている中だ。
一匹たりとも逃がせないし、あきらかに異邦者たちは艦首魔導砲に怯えていた。
容易に背中を見せて……異邦者なので背中がわかりにくいけど、逃げ出したことは事実だ……撤退を開始したので、私は追撃を命じつつ、ブリッジから格納庫へと走っていく。
減らせる時に、確実に減らしていかないと。
「アリスも出撃するのか」
「最近、訓練ばかりで鈍っているので。それに二人で出撃するもの悪くないですから」
「ペア出撃かぁ」
私とアリスは、自分の機体に乗り込んだ。
ずっと使っている魔晶機人改を最新型の魔晶機人Ⅱに改修したものであり、見た目は以前とほとんど変わっていない。
『エルオール様、アリス様。お味方優勢というか、完全に残敵掃討に入ってます。あっ、機体の状態は万全ですから』
「ありがとう、ヒルデ。エルオール、発進する!」
「アリス、出ます!」
それにしてもヒルデは、科学由来だろうと、魔法技術由来だろうと、機械の修理、整備、試作と、なんでもこなすようになったな。
艦首魔導砲の発射も無事に成功して、もしかしなくても天才だと思う。
「ううむ……。もう異邦者はいないな」
「結局、出撃しただけになりましたね」
「王が自ら戦う状況はよくないなら、これでいいんじゃないかな」
「そうですね」
艦首魔導砲により多くの仲間を失い、恐怖を感じた異邦者たちは呆気なく崩れてしまい、我先にと逃げ出した。
そして味方はそれを徹底的に追撃し、その大半を討ち取ることに成功する。
見事国境付近で異邦者の大軍に大勝利したゾフ王国軍はそれから一週間ほどで、ラーベ王国の南部、全国土の五分の一ほどの領地を解放することができた。
「ただ、補給や修理、整備で、あと三日は守りを固めるしかないけど」
「夫君」
「……アマギとフィオナがいなかったら、完全に詰んでたな」
戦費、物資、資源、兵器、弾薬、食料、水、マジッククリスタル。
ゾフ王国を出発してから、ラーベ王国解放軍で今日までにかかった戦費と、必要な兵器、物資の量が書かれた報告書を見て絶句する私とアリス。
確かにゾフ王国軍は強いが、活動時間には大きな制限があった。
しかも、ラーベ王国奪還は始まったばかりだ。
今後、さらに遠い国に大艦隊を送り込む国力と生産力を急ぎ整備しないと。
「それでも地道にやっていくしかないさ」
「そうですね」
だが、あまりゆっくりやりすぎると他の国が保たないかもしれない。
なにより、他の国が協力的になる保証すらないのだ。
ゾフ王国は、難しい舵取りを求められていた。




