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誰か、前世が凄腕の機動兵器操縦者である私に平穏を!  作者: Y.A
第二章 躍進編

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第百二十八話 魔晶機人改Ⅱ

「小型の突撃艦クラスのキャリアーに、魔晶機人改とエア・トランスポートを各四機、一個小隊ずつ搭載して、四隻で最小単位の艦隊を編成。将来は、この一隻を中型の巡洋艦クラスのキャリアーに変更したいところだ。巡洋艦クラスは、魔晶機人改とエア・トランスポートを各十六機、四個小隊ずつ搭載可能だ」


「高速の補給艦が欲しいところですね」


「その補給艦を護衛する戦力がないと、異邦者に取り付かれて落とされてしまわないかな?」


「フィオナ殿、その補給艦にも魔晶機人改とエア・トランスポートを搭載すればいいのでは?」


「アリス様、それをすると一度に運べる物資の量が大幅に減ってしまいます。補給量の少なさは、艦隊の戦力と継戦能力を大幅に落としますから」


「専門の補給艦隊を編成するしかないのでは?」


「将来的にはそれを目指しますが、今は防衛用の戦力の整備が先です。魔物と異邦者を駆逐して領土を広げれば広げるほど、異邦者が国境線を破って国内に侵入してくるリスクが上がりますから」


「これでは、そう簡単に他国を助けるなんてことはできぬな」


「はい。今は時間をかけて戦力を整備するしかありません。そのために国力の増強もしないといけませんから」


「元々ゾフ王国は小国だ。時間がかかるのは仕方がないし、まずはゾフ王国を優先すべきだ」


「他国が苦境に陥っているのはわかるし、できれば救援したいが、ない袖は振れないからなぁ……」


「夫君は、ゾフ王国のことわざに詳しいのだな」


「たまたま書物で見てね(日本の古いことわざなんだけど)」





 アマギの艦長室の中で、フィオナ、アリス、私の三人による最高意思決定会議が行われている。

 メンバーを三人だけにしているのは、船頭が多ければ舟が山を登ってしまう、とまでは言わないが、スピード感を持ってゾフ王国の開発と戦力整備を行うなためだ。

 あまり人数が多いと意見が割れやすく、今は決定者が少ない方がいいという結論に至った。

 ゾフ王である私。

 私の婚約者にして、ゾフ王国の宰相であるアリス。

 アマギの管理と、様々な機密性の高い重要な仕事を担当しているフィオナ。

 この三人がいれば、事足りてしまうというのもあった。


「(汎銀河共和国は、なんでも決めるのが遅かったからなぁ……)」


 反乱鎮圧をする時でもシビリアンコントロールの観点から、いちいち議会の許可を得なければいけなかった。

 決定が遅れたせいで犠牲者が増えてしまったこともあって、嫌な思いをしたこともあった。

 こういう時、批判の矢面に立たされるのは軍人だし。

 なので、ゾフ王国の政治と軍事がすぐに決まり、実際に成果が出ているこの状況は素晴らしいと思うが、あくまでもこれは戦時体制であることを忘れないようにしないと、後世私は悪名高い独裁者として歴史に名を残してしまうかもしれない。


「フィオナ、他国の状況はどうなんだ?」


「かなり立て直しているようでして、このところ、大規模な領地の失陥などはありません」


「どうにか踏みとどまったのか……」


「国や領地が滅ぶかどうかの瀬戸際です。普通は懸命に対策します。それをしなかったところは滅びました。ただそれだけのことです」


「確かにそうだな……」


 冷たい言い方だが、アリスの意見は正しい。

 異邦者に滅ぼされた国は少ないが、滅ぼされた貴族は少なくない。

 貴族は国に属しているとはいえ、その領地は高度な自治性を持つ半ば独立国のようなものであり、だからこそ国の介入を嫌って援軍を呼ばず、異邦者によって滅ぼされてしまったところも少なくなかった。

 下手に所属する国の軍や他の貴族の諸侯軍を入れてしまうと、それを機に自分の領地が他者によって支配されてしまうかもしれない。

 その疑念が拭い去れなかった貴族の多くが援軍を拒み、異邦者によって滅ぼされていった。


「領地が滅んでも、領民が全滅するわけではありません。自然と大量の難民が発生します。そして難民を受け入れられる国は少ない」


 どの国も領土を失っており、そこから逃げ込んできた難民たちを受け入れているからだ。

 普段独立独歩でやっている貴族の領民たちを受け入れる余裕などなかった。

 なにより、どこの国の貴族も異邦者によって滅ぼされないよう軍備を増強している。

 財政に余裕がなくなり、よその難民を受け入れる余裕がない。

 そのため、保護してもらいたい難民と、よその難民を受け入れたくない国の兵士が衝突する事件なども頻発していると聞く。


「そんななか、唯一領土を広げているゾフ王国を目指す難民は多いです」


「受け入れに問題はないのだろう?」


「はい。さすがに騒ぎを起こす人たちは追い出していますけど」


「それは仕方がないさ」


 そんな事情もあり、ゾフ王国を頼って逃げてくる難民たちの数は増える一方だ。

 もしゾフ王国が受け入れないと、難民たちは再び北方まで命がけで旅をして、一度受け入れを拒否された国に縋るしかなくなってしまう。


「異邦者と魔物を駆除し、新しく水晶柱を立てて安全な土地を確保し、土地の開発と開墾を進めていますから」


 アマギの生産設備をマザーマシン化し、そこから作り出された工作機械を量産。

 それを使って王都郊外に広大な工業地帯を作り、今も拡張を続けていた。

 魔晶機人改の技術を利用した車両、土木機械、農業機械など、生産性を上げる機械を大量に用いたからこそ、増え続ける難民をどうにか受け入れられている。


「陛下、ゾフ王国もだいぶ広がりましたね」


「結果的にな」


 それも他国を侵略することなく、隣接する土地から魔物を駆除してだ。

 結局、遠く離れた他国の救援に向かうよりも、隣接する魔物の棲む土地を解放、開発をした方が補給を繋ぎやすいから楽という現実があった。

 フィオナも、無理に他国に救援に行く必要はないという判断だ。

 たとえ他国が滅んでも、ゾフ王国が残っていれば人類は滅びないのだから。

 むしろゾフ王国が無理に他国に救援に向かった結果、ゾフ王国が異邦者によって落とされてしまう方が人類滅亡の機に繋がりやすいと考えていた。


「新戦力の生産と配備、操者の訓練を兼ねた魔物の駆除。今のところ、ゾフ王国の国力と戦力の増強は順調です。普通はなかなか両者を両立できないのですが……」


 軍備を増やすと一時的に経済が上向くが、長い目で見ると軍備費の増加で経済に良くないことが多い。

 ゾフ王国の場合、アマギの技術力を使って国力増強も強引にやっているからだ。


「現に他の国は、軍事増強を優先して民たちの生活が苦しくなっているはず。夫君には感謝の言葉しかない」


「偶然だし、私はやれることをしているだけだよ」


 アリスは私に感謝しているが、たまたま私がエルオールに乗り移り、さらにアマギがこの世界に移転してきたからでしかない。

 ただの魔晶機人の操縦が上手いだけな郷士の跡取りだったら、ここまでやれるわけがないのだから。


「(だから私は、一日も早く異邦者を滅ぼし、そのあとは傀儡の王として生きていくつもりだ。ゾフ王国の統治は、アリスがいるから全然心配ないのだから)」


 むしろ異邦者が滅んで平和な世の中になったら、ゾフ王国の貴族や民たちからすれば、私よりもアリスが実権を握っていた方が安心できるはずだ。


「陛下、そろそろ夕食の時間です」


「もうそんな時間か。行こう、アリス」  


「はい」


 会議については、別にその日に決着がつかなくても、フィオナがよろしくやってくれるから問題ない。

 それよりも今は、二人の時間の方が大切だ。

 アリスは政治や統治に長けているから、留守を任せることが多かった。

 他の婚約者たちに比べると接する時間が少なくなりがちなので、婚約者同士のコミュニケーションが必要というわけだ。

 フォオナもそこがわかっているから、無理に会議を長引かせることもしなかった。


「アリスのおかげで助かっているよ。私は郷士の息子だから、国の統治とかは苦手でね」


「そうですか? その地位に就いたら、普通にやれてしまいそうですが……」


「いやあ、無理じゃないかな?」


 私の前世は、『政治に関わるなかれ』と常に言われていた軍人だったのだから。


「アリスは、フィオナもよく使いこなしているし」


 フィオナに関しては、本来私の命令しか聞かない仕様になっていたが、それだと色々と不都合があったので、人によって出せる命令や、引き出せる情報に差をつけていた。

 たとえば、ヒルデは技術的なことに限るし、リリーは軍事的なことに限るなどだ。

 そしてアリスに関しては、俺の考えに反しなければほぼすべての命令を出せる権限を与えていた。

 私が王都を留守にしてラーべ王国に遠征できたのは、アリスのおかげというわけだ。


「余は夫君の妻ですから、妻は夫を支えて当然です。それに支え甲斐のある夫ですし」


「そう言ってもらえるとありがたい」


「なにより、余の仕事をすべて理解してくれる人は少ないので」


「まあ、それはね」


 アリスは私の婚約者の中で、そして私よりもはるかに頭がいい。

 そのうえ若くして宰相としての重責があるので、普段の会話でもゾフ王国の統治に関する話が出ることが多かった。

 そしてそれになんとかついてこれるのは、私とごく少数の貴族……あとは、サクラメント王国のグレゴリー王くらいか。

 だから私は、アリスと二人で食事をしながら話す時間を必ず確保していた。

 色気もへったくれもないが、これも大切な夫婦の時間というわけだ。


「今日は、少し変わったディナーにするから」


 そう言うと私は、アリスを連れてアマギの格納庫へと向かう。


「エルオール様、準備できていますよ」


 そこでヒルデが整備していたのは、新型の魔晶機人改であった。

 フィオナが、バルクとヒルデ、ゾフ王国の技術陣と共に開発したものだが、無事に試作機が完成したようだ。

 異邦者との戦いは激しくなる一方なので、今の魔晶機人改の性能に満足せず、常に新型を開発していく必要がある。

 今は魔晶機人改が異邦者をかなりのキルレートで圧倒していたが、いつ魔晶機人改に対処するために強化されるかもしれないのだから。

 

「ヒルデ、これが新型の魔晶機人改なのですか?」


「はい。さらに性能が上がった新型魔導炉を搭載し、体の各所に新規に開発した『マジックコンバーター』を内蔵しています。このマジックコンバーターのおかげでパワーと機動性を増しつつ、さらに燃費性能を上げることにも成功しました。関節や人工筋肉、各部品の見直しもしたので、従来の魔晶機人改よりもおよそ二割は性能が上がっているかと」


「報告だけは受けていましたが、魔晶機人改とあまり見た目に違いはないですね」


「性能と外見に相関性はないからね。ただ、魔晶機人改Ⅱはすべての部品が共通化されたから、全機の外見がまったく同じになる」


 魔晶機人改は既存の魔晶機人を改良したものが多いので、主に外見にかなり個体差があったけど、魔晶機人改Ⅱからは機体差という個性が消える。

 

「その方が、生産、修理、整備性が向上するからでしょうか?」


「アリス様は鋭いですね。今後誰が搭乗している機体かを見分ける方法は、家の紋章や個人パーソナルマークのマーキングが主になります。それと、従来の魔晶機人改を魔晶機人改Ⅱに改修することができるので、古い機体を壊さなければ個性的な機体に乗り続けられます」


 今は魔晶機人改Ⅱの先行量産と、主に新人操者向けに機種転換訓練が優先されるが、それが終わったら、既存の魔晶機人改からの改装も始まる予定であった。

 発見した地下遺跡を発掘するとまだまだ魔晶機人が出てくるし、修理不能で放置されている機体の収集も続いている。

 新規生産量を増やすのも大切だが、古い機体の改修の方が手間がかからない。

 戦力増強のためには、両方続ける必要があった。


「飛行パーツも装着済みなので、すぐに出られますよ」


「ありがとう、ヒルデ」


「あの夫君?」


「たまには、夜のピクニックがてら空の上でお弁当を食べるのも悪くないでしょう?」


「そうですね」


 なかなかアリスと二人きりになる機会もないので、魔晶機人改Ⅱの操縦試験がてら私とアリスは、アマギから飛び立った。

 このところ夜間飛行訓練をしていなかったので、その目的もあった。

 だがそれを除いても、急速に復興が進み、それどころか拡大、発展を続ける王都の夜景はデートスポットとしても悪くなかった。


「『魔法灯まほうとう』が普及したおかげで、みんな夜も活動するようになった。これもアリスの功績だよ」


 昔のグラック領などは夜になると真っ暗なので、早く寝るしかなかった。

 サクラメント王国などの王都ですら、経費のかかる灯りは限定的であり、ゾフ王国の王都ほど夜も明るい都市はないはずだ。

 我々は異邦者の脅威にさらされているが、いつも緊張して我慢しているわけにもいかない。

 王都では夜にも大勢の人たちが遊び回り、それが経済の発展に繋がっていた。


「まだまだ世界が平和になるまで先は長いけどね」


「そうですね。でも、こんなに夜景が綺麗だったなんて……。上空から見ると余計にそう感じます」


「さて、持参したお弁当を一緒に食べようか」


 その後は、アリスと魔晶機人改Ⅱの操縦を交代し、操縦のコツなどを教えて二人のデートは終わった。


「今後は、もう少し色気のあるデートの方がいいかな?」


「いえ、夫君と二人きりなら、余はどんなデートでも嬉しいです」


 私も久々にアリスと二人きりでデートができて、とても楽しかった。

 そして、ゾフ王国を異邦者から守り切らなければならないと、強く心に誓うのであった。

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― 新着の感想 ―
もうすぐ、ガン◯ムの頭部60ミリバルカンに並ぶサイズの武器になりますなぁ、現状でほぼ、同じくらいですけど
昔から楽しく読ませて頂いてます。最近音声入力を導入したのかな?と目をショボさせながら思いました。
 兵器の技術提供は難しいでしょうけれど・・・・・  「エルオールよりアリスの方がトップにふさわしい」と、有象無象が言ったらアリスがブチ切れたりして。  本当のブルジョワなデートって感じですな~
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