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第百五話 司令官

「くっ! やはりまだ体が……。念波の長時間発動は難しいな」




 前後左右どこを見ても異邦者だらけのなか、私はアマギから打ち上げた偵察衛星経由でフィオナが見つけてくれた、後方にいる司令官と思われる個体を目指し、立ち塞がる異邦者たちを大量に装備した火器で薙ぎ払いながら突進していく。

 ウィングキャリバーを全力で吹かしながら、膨大な数の異邦人の群れとぶつからないように突破するには、念波を駆使しなければ不可能だ。

 だがやはり、私の体は成長しきれていないので、本当に危ないところを切り抜ける時だけ念波を使い、残りは自分の操縦技術でなんとかするという、綱渡り的な行動が続いていた。

 唯一よかった点は、あまりに異邦者たちが密集していたため、彼らも仲間との衝突を恐れてタンを吐いてこないことだ。

 同時に、すぐに落とせるであろう単機の私よりも、王城に籠るゾフ王国、サクラメント王国連合軍を全滅させる方を優先している点か。

 司令官がいるので、そういう風に判断したのだろう。

 

『まったく! 落としても落としても、キリがないな!』 


『リックさん、せっかく最新鋭の火器を使い放題なのですから、祖国に情報を送れますわよ』


『クロスボウに続き二十ミリ銃にも驚いたけど、ゾフ王国製の試作火器の凄まじいことと言ったら、新型の四十ミリ機銃のおかげで異邦者がどんどん落ちていくよ』


『キリがありませんけど』


『押し切られていないだけマシさ。はたして、この情報を送る我が祖国は大丈夫なのかね?』


『わかりません、突如大量に湧き出した異邦人のせいで、完全に連絡不能ですから』


『ゾフ王国の『火器』の他、優れた軍事技術を祖国に伝えるため、人を送り出したところも多い。だが、世界中に大量に湧き出した異邦人のせいで無事に辿り着いたかどうかすら不明だ』


 魔法通信機で、リック、ケイト、クラリッサの会話を拾ってしまった。 

 異邦者たちが密集しているせいか、魔法通信の状態が少し悪いな。

 だが、無事に戦っているようでよかった。


『魔法通信は有効距離が短いからな。人を送らないといけないが、無事に辿り着いたかわからないのが辛い』


『それだけでなく、大量の異邦人たちのせいなのか、このところ魔法通信の性能も落ちてる気がする』  


『確かに』


『私たちの祖国もどうなることか……』


『王の愚行があったとはいえ、世界一の魔晶機人王国と呼ばれたサクラメント王国ですら、王都が陥落してこの様ですからね』


『どうやら今のところ、祖国に戻ることすら難しいのか』


『私は、第三王女ですから。それに……』


『それになんだ? ケイト』


『もし私の祖国ラーベ王国が異邦者に蹂躙されていた場合、ゾフ王国に留学している留学生たちを率いて祖国を立て直せるのは、私だけですから』


『右に同じだ。私も王女なのでな』


『……サクラメント王国は、リリーが留学しているし、どうしてマーカス帝国は皇族をゾフ王国に留学させておかないかな』


『先見の明がなかったんですね。帝国は大国なので、持ちこたえているかもしれませんし』


『マーカス帝国は人口は多いけど、魔晶機人技術では遅れている。かなり厳しいはずだ。今の俺は、こうやって四十ミリ銃撃ち続けて、一体でも多くの異邦者を落とすしかない』


『リックさんは射撃が上手ですよね。エルオールさんが褒めていましたし』


『これまで銃なんて撃ったことがなかったから、全然気が付かなかった。もっと腕を磨いて、ゾフ王国に仕官しようかな。どうせ俺は三男だから実家の爵位を継げないし、そもそも実家がもうなくなってるかもしれない』


『私たちも、人生の岐路にありますわね』


『それは実感している』


 まるで、BGMのようにリック、ケイト、クラリッサの会話を聞きながら、司令官を目指して全力で突進を続ける。

 三人だけでなく、リンダ、リリー、ライム、ユズハ、ネネ、両軍の操者たちは遠慮なく火器をぶっ放して大量の異邦人を落としながら防戦を続けていた。

 大群の異邦人たちが妨害波でも出しているのか。

 魔法通信機の有効距離が短くなっているという報告をフィオナから受けていたが、この距離ならさほど影響はないのだろう。

 

「(他の国がどうなっているのかなんて、今のところ……フィオナが今、打ち上げた衛星で調べているところだから、あとで報告を受けるか……)あれだな」


 私がその報告を受けるには、見た目は兵士クラスの異邦人を倒さなければいけない。

 すでに火器の弾薬をすべて使いきった私は、高周波ブレードを両手に切り替えた。

 そしてフィオナから教えてもらった、やはり見た目は兵士クラスそのものである司令官を目指し、全速力で突進を続ける。


「邪魔だぁーーー!」


 激しい頭痛のなか、進路を妨害する異邦人のみを高周波ブレードで斬り裂きながら、最低限の機動で異邦者の群れに守られた司令官を目指す。


「(一瞬でも止まったら、袋叩きにされる!)」


 ウィングキャリバーの推力は全開のままだ。

 少しでも操作を誤ると異邦者に激突してしまい、そのあとは周囲にいる異邦人と玉突き衝突状態になり、俺は魔晶機人改の操縦席内でミンチになって死ぬだろう。

 私が今回の作戦でコンバットアーマーを使わなかったのは、その大きさがネックだったからだ。

 その代わり、試作品の高周波ブレードは稼働時間が少ない。

 急ぐ必要があった。


「(絶対にミスれない!)」


 こんなに緊迫した状態にまで追い込まれたのは、前世で惑星国家と敵対する反政府軍の罠に嵌まって、数十機の敵コンバットアーマー部隊に包囲された時以来だろうか。


「(まったく、私は田舎の領地でプチリッチなスローライフを送りたいのに……)」


 とは言いつつ、私はこの命がけのタイトロープ状態を楽しんでいるようにも……。


「(いや、私は軍人になんて向いてないし、早くこんなことは終わらせて傀儡の王になるんだ)」


 両手の高周波ブレードで、立ちはだかる異邦人を落とし続け、ついに司令官まであと少しの距離にまで到達した。


「あとは!」


 司令官を討つのみだ。

 全速力で標的に迫るが、その周囲を大量の異邦人たちが守る。


「(どこかに隙間が……)」


 司令官を囲むすべての異邦人を倒していたら、周辺の異邦者たちが駆けつけて袋叩きにされてしまう。

 時間はかけられないのだが、今になって気がついたことがあった。


「(魔晶機人改でも、機体が大きすぎる!)」


 司令官を守る、兵士型異邦人たちの隙間を物理的に潜れない。


「(だから性能に目を瞑って魔晶機人改で来たのに……。今はそんなことを嘆いている場合ではない! 性能は火器と高周波ブレードで補えていたのだから)」


 だがこのままでは、司令官まで辿り着けない。

 どうすればいいのか悩んでいると、一つのアイデアが思い浮かんだ。


「そうだ! 機体を小さくすればいいんだ!」


 その時に思い出したのは、イタルク公爵と討伐の時に立ち塞がったネネの機体が、両手、両足を落とされても空中に浮かび続けていたことだ。


「(ネネにできたことが、私にできないとは思わない。それに、計算によれば……)」


 魔晶機人改の両足を斬り落とせば、密集した異邦者の間をすり抜けて、司令官に辿り着ける計算だ。


「いくぞ!」


 私は全速力で飛行を続けながら、高周波ブレードでコンバットアーマーの両足を斬り落とした。


「これで機体を小さく……おっと!」


 だが、突然両足を無くした状態でのウィングキャリアーの推力全開は、バランスが崩壊して周囲の異邦人に激突するか、地面に墜落する危険があった。

 私はさらなる頭痛のなか、念波も用いて両足をなくしたコンバットアーマーの制御に成功し、司令官を守る異邦人たちの間をすり抜けながら、最低限必要な異邦者を斬り捨て、ついに司令官の眼前に立った。


「死ね! 化け物!」


 兵士クラスに偽装することで見つかりにくくしているせいで、司令官は弱かった。

 高周波ブレードで真っ二つにされた瞬間、戦場の様子が大きく変わる。


「逃げ出すのか……」


 いまだ私たちを蹂躙可能な数を誇る異邦人の群れが突如恐慌状態に陥り、四方八方バラバラに逃げ出したのだ。


『……エルオールが司令官を討ったのか……』


『あの大群に単機で突入して、司令官を討つなんて……』


『さすが、我が夫に相応しい』


 魔法通信越しに、一部不穏な発言も聞こえたが、それよりも大切なことがあった。


「全軍! 背中を向けた異邦人を一体でも多く落とせ!」


 残念ながら、異邦人は敵国の人間の兵士ではない。

 降伏するなどあり得ず、倒さなければ人の住める安全な土地は戻ってこないのだから。


『陛下の命令よ! 一体でも多く落とせ!』


『ライム! ユズハ! いくぞ!』


『『はい!』』


『俺たちももうひと仕事だ』


『そうですわね。一体でも多く!』


『異邦人との講和はあり得ない。ならば殲滅するのみ』


 試作四十ミリ銃、五十ミリ銃、ショットガン、高周波ブレードなどを持った、グレゴリー王子とリリーが指揮するサクラメント王国軍と、学生有志、ゾフ王国軍は、司令官を失って逃げ出した異邦人を可能な限り追撃、その半数以上を討つことに成功した。


『それでも、逃げてしまった異邦人も多いの。奴らはどこに逃げたのだ?』


「フィオナ、どうだ?」


 追撃を終え、魔法通信で私に話しかけてきたリリーの疑問に答えようと、私は通信衛星を管理するフィオナにコンバットアーマーの通信機で尋ねた。


『どうやら、サクラメント王国とリーアス王国の大半からは撤退するようです。他国を蹂躙している軍団に合流しようとしているのでしょう』


「司令官が討たれたからかな?」


『その可能性が高いです』


「しかし、謎が増えたな」


 これまでは、絶望の穴から定期的に湧き出るだけでなんとか倒せていた異邦人だが、突然大量に穴から出てきて、この世界を蹂躙し始めたのだから。


『衛星で調べた異邦人たちの動向ですが、多くの国が領土のかなりの部分を蹂躙されました。すでに滅ぼされた小国や貴族の領地もかなりの数に及んでいるはずです』


「リックたちに教え辛い……」


 リックたちの国も滅んではいないが、異邦人に侵略され、かなりの国土を失陥している。

 それに加えて、魔獣と無法者の脅威まであるのだ。


「この世界、突然ハードモードになったなぁ……」


 私のプチリッチなスローライフはどこに?


『幸いゾフ王国は無事ですが、もしゾフ王国以外の国が異邦者たちに蹂躙されると、最後にゾフ王国が全方位から袋叩きにされる可能性があります』


「だよなぁ……」


 練度の高い操者とゾフ王国軍、アマギ、魔晶機人改他、最新の兵器と他国を圧倒する技術力などなど。

 これがあっても、これからのやり方を間違えるとゾフ王国は異邦人たちに滅ぼされてしまうのか。

 異邦者たちが呆気なく逃げ出したのだって、『ゾフ王国は手強いから最後で!』って考えかもしれないのだから。


『ですが、今は他国に手を貸す余裕がありません』


「それはそうだ」


 結局、王と王が後継者に指名していたエリック王子は亡くなり、彼が後継者として認められるように始めたリーアス王国侵攻により、かの王国の統治機構ごとサクラメント王国の現政権は崩壊。

 暫定ながら新王として即位する予定のグレゴリー王子は、難しい舵取りをしなければならない。

 今回、援軍どころか主力軍を出したゾフ王国に相応の謝礼を出さなければ、歴史あるサクラメント王国はゾフ王国の傀儡と周辺国から見なされるようになってしまうからだ。

 もしそんなことになれば、サクラメント王国貴族の多くがグレゴリー王子不支持を表明するだろう。


「グレゴリー王子も大変だなぁ……」


『とにかく今は、勝利したのです。みんなのところに戻りましょう』


「あとで、斬り落とした魔晶機人改の足を回収しないと」


「最悪回収できなくても、アマギで作れるから問題ないですよ。艦長は貧乏性ですね」


「生まれつきさ」


 その作業はゾフ王国軍に任せるとして、私は両足のない機体を飛ばしながら王都へと戻った。


「両足を自ら斬り落としながらも、全速力で飛行を続け、数多の異邦人を倒し、攻撃を回避しながら大群の最後方にいた司令官を討つとは。さすがはエルオールよのぉ」


「リリー?!」


 両足のない魔晶機人改を旗艦の甲板にそっと下ろすことに成功し、機体から降りると、同じく敗走する異邦人を多数討ってその実力をあらためて両国に知らしめたリリーが私に抱きついてきた。


「リリー王女、サクラメント王国の王女たるお方がはしたないのでは? ここには、サクラメント王国の操者どころか、他国の操者たちもいるのですから」


 そしてすかさず、そんなリリーを注意するアリス。

 そのコメカミには、青筋が走っているように見えた。


「特に問題あるまい。のう、グレゴリー兄」


「そうだな」


 さらに、これから後処理で死ぬほど忙しくなる予定のグレゴリー王子までもがやってきて、リリーの擁護を始めた。


「グレゴリー王太子殿、それはどういうことですか?」


 笑顔を浮かべながら、グレゴリー王子に尋ねるアリスであったが、その目は笑っていなかった。

 あきらかに、『お前の妹が、余の将来の夫に手を出そうとしているんだ! 兄としてなんとかしろ!』と表情で語っていた。


「今回、サクラメント王国はゾフ王国に大きすぎる借りを作ってしまった。それをしっかり返さなければ、他国はサクラメント王国がゾフ王国の事実上の属国になったと思うだろう。この認識は間違っておられぬかな?」


「いえ、間違っていません」


 サクラメント王国はリーアス王国を滅ぼすことができたが、現在の国際情勢で他国を滅ぼすなどあってはならないことだ。

 特に、異邦者たちの侵略で世界が危機に瀕している今、もし戦後があったらサクラメント王国は強く批判されるだろう。

 亡くなった王は、それでも戦争に勝てばエリック王子の王位継承に役立つと考えて出兵してしまった。

 さらに、サクラメント王国軍はリーアス王国に勝利できたのはいいが、そのあと異邦者の大群によって殲滅されてしまった。


「サクラメント王国も、一時王都を異邦者によって落とされてボロボロだ。現時点でサクラメント王国は南部と東部をゾフ王国に譲渡する予定だが、それでも足りぬだろうな」


「そうですね」


 当初グレゴリー王子は、ゾフ王国が国土奪還に協力してくれたお礼に、サクラメント王国南部をゾフ王国に譲渡することは決めていた。

 だが到底それでは足りないのは、グレゴリー王子もアリスも理解しており、グレゴリー王子はサクラメント王国東部もゾフ王国に譲渡すると宣言した。

 いくらリーアス王国を完全併合するとはいえ、元の領土の半分を他国に譲渡する。

 グレゴリー王子の新王としての道は、最初から前途多難のはずだ。

 自分たちは異邦者に手も足も出なかったくせに、『助けてもらうためとはいえ国土の半分を、それも過去に何度も争ったゾフ王国に差し出すなんて屈辱だ!』と騒ぐ貴族は多いはずだからだ。

 

「他にも、今回の戦いで破壊されたり、修理不能で放置、操者不足で動かしていない魔晶機人、魔晶機神。発掘したものの、やはり運用不能なキャリアーを無料で譲渡しましょう。この世界情勢では、味方は多いに越したことはない。我が国も、魔晶機人改、魔晶機神改、キャリアー、火器を手に入れて軍を再編する必要があると思うのです」


「……一考の余地がありますね……」


 世界中が異邦者によって蹂躙され、多くの国が滅亡の機に瀕している現在、ゾフ王国だけで対応するのは難しい。

 グレゴリー王子はその点を突き、自国をゾフ王国の頼りになる同盟国として生き残らせるつもりのようだ。


「(ゾフ王国がサクラメント王国を完全併合する、属国にするのは無理だ)」


 国内の状態を安定化させるのに、膨大な時間と手間、金銭がかかるからだ。

 そしてその時まで、異邦人たちが大人しく待っているわけがない。 


「(グレゴリー王子は、譲渡した領地はリーアス王国領で補えると思っているんだ)」


 こちらも、旧リーアス王国貴族たちの反発が強いので統治は大変だろうが、グレゴリー王子に協力的な貴族たちに新しい領地として与えることも可能だ。

 長い目で見れば、グレゴリー王子の政権基盤を強められるかもしれないのか。


「ただ、ゾフ王国とサクラメント王国は過去も含めて何度も戦ってきました。手を組むことに不満のある貴族たちが両国にいます。その問題を解決するのが、リリー王女なのですか?」


「さすがはアリス宰相。リリーをゾフ王に側室として嫁がせます。そして次のサクラメント国王はリリーが産んだ子とすることを約束しましょう」


「グレゴリー王子、将来あなたに子供が生まれた時、その子を次の王にしたくなるかもしれませんよ」


「ご心配なく。私は結婚しませんので。まあ一応男性なので、一生禁欲的に生きるということはありませんが」


「グレゴリー兄!」


「リリー、父は一国の王であるのに家族の情愛を捨てきれなかった結果、一番寵愛していたファブル兄上が愚行の末に亡くなったあと、これまで市井に放置していたエリックを後継者に引き上げようと無理をし、国を滅ぼしてしまうところだった。このツケは、残された私とリリーで精算するしかないのだ」


「グレゴリー兄……」


「そこまでのお覚悟があるのなら、その条件を受け入れましょう」


「アリス、いいのか?」


「夫君を独占するのは、どうやら難しそうなので。ならば、余が一番寵愛されればいいこと」


 そう言うと、アリスも俺に抱きついてきた。


「あーーー! 二年生選抜を率いて追撃から戻ってきたら、エルオールが! リリー様、側室としては、私の方が先輩ですから」


 さらに、敗走する異邦人を討つべく二年生選抜部隊を率い、戻ってきたリンダも俺に抱きついてくる。


「エルオール様、斬り落とされた両足はすぐに直せ……って! アリス様、リリー様、リンダ様、ズルいですよぉ!」


 両足のない私の機体の様子を見にきたヒルデも、私が複数の女性に抱きつかれているのを見て、自分もと参戦したので、私はその場から動けなくなってしまう。


「ゾフ王はモテモテで羨ましい限りだ。ということなので、リリーをよろしくお願いする。二人の子供ならば、復活させた魔晶機人大国サクラメント王国のよき王になるだろう。そして、兄弟が王になった両国の友好関係は続く」


「……」


「ゾフ王よ。私も一生禁欲的に生きるわけではないから安心して、沢山子を成してくれよ。そなたの子であれば、きっと優れた操者になるだろうからな」


「はあ……」


 今回の件で一つわかったことは、政治家としてのグレゴリー王子の手強さだ。

 アリスもそれがわかったからこそ、彼と手を組む価値があるとわかったのだろう。

 気を抜くと、出し抜かれる危険もあるけど。


「まあ、ゾフ王は大層女性におモテになるのですね」


「羨ましいような、羨ましくないような……。俺も彼女でも作ろうかな? しばらく帝国に戻れそうにないし」


「たとえ祖国が異邦者によって蹂躙されようとも、アーベルト連合王国は滅びぬ。なぜなら、アーベルト連合王国は国土よりも人を重視するからだ。そしてアーベルト連合王国の女性は、自力で強い男を手に入れるのが常識となっている」


「……クラリッサ、頼むから平時に乱を起こさないでくれよ。と、男の俺は思う」


「リック、今は乱世ではないか。ゆえに私の考えは正しい」


「……」


 リックは別として、ケイトとクラリッサにも猛禽類のような視線を向けられているような気が……。


「どちらにしても、明日からは後処理で忙しくなる。ゾフ王は今のうちに楽しんでおいてくれ」


「私はまだ未成年なので、あくまでも婚約だけですよ」


「後処理は未成年でもできるからな。私も忙しくなるぞ。ゾフ王も頑張ってくれ」


「えっ?」


 私は命がけで厄介な異邦人の司令官を倒し、サクラメント王国とリーアス王国から異邦人の群れを撤退させることに成功したんだ。

 後処理は、傀儡の王らしくアリスたちに丸投げして、すぐに気ままな学生生活に戻れるんだよね?

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― 新着の感想 ―
異邦者が異邦人になったり、ウイングキャリバーがウイングキャリアーになったり、魔晶機人改がコンバットアーマーになったり、モノローグでの一人称が俺だったり私だったりと、今回は文章の確認が不十分なのかな? …
それって結局属国ってことになってない? まぁそれでも滅亡寸前のこの状況で一番の安定択はこれだろうからグレゴリーとしてはこうするしかないけれど
他国の大半が滅亡の危機に瀕してる中、ほぼ無傷で勢力保ったゾフ王国。 サクラメント王国も滅亡寸前だからリリーの輿入れで実質的に属国化では? 今更グダグダ言うような貴族がどれだけ残ってるか分からないけど…
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