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セーリオ様の祝福  作者: あこ
「セーリオ様」「カムヴィ様」共通の話 (時系列順に並んでいません)
13/23

彼の、空気が読める小さき友人:03

カナメを怖がらせてはいけない、と大人たちはそれはもう最大限の努力で穏やかに優しい顔でカナメの前に揃っている。

もちろん質問するのは父シルヴェストルだ。父親なのだから適役だった。


「カナメ、精霊とはどうやって出会ったのかな?」

「おとうさま、ぼくを案内したのはほんとうに(・・・・・)精霊ですか?幽霊じゃないって言われていますが怖いし自信がないんです。あれからずっと考えてみたけど、精霊より幽霊の方が信じられます……!こわいです……」


本気で怯えるカナメを安心させるように副団長が「もちろんです。精霊ですよ」と力強くいうとカナメは少し考えてから頷いた。

幽霊だと考えるよりも、精霊だと信じた方が自分の心が(・・・・・・・・・・)平和(・・)であると判断した。幼いながらによく分かっている(・・・・・・・・)行動である。

「ええと、出会いは『探索魔法なんてやっぱりむりだよね。ぼくはそういう才能なさそうだもん。でも早くアルさま見つけないとおやつの時間がなくなっちゃう』って文句を言っていたら」

この時大人もマチアスも同じ事を思っていた。


──────心配したのがおやつの時間というのは、どうなんだろうか……。


全員の思いが一致しておかしくはないはずだ。


「そしたらぼくの背中に風が当たって、まわりをみたらいけがき(・・・・)が揺れてたの。もうお化けだ、幽霊だと思って叫びそうになったんだけど、ぼくの好きなイチゴ、じゃなくてその形の氷がいっぱい落ちてきてね。幽霊じゃないのかって聞いたらもっと降ってきたの。幽霊じゃないけど何かよくわからないもの。幽霊じゃないんだ、きっとそうじゃないよって意味で落ちてきたんだって思い込んで」


またしても全員の気持ちは一致した。


──────思い込んだ上に判断基準がイチゴとは……?


当然の思いだろう。


「ぼくを案内するようにね、いけがきがゆれるんだよ。ぼくも最初のうちは『本当に案内してくれてるの?』って聞いたりしたんだけど、その度にいろんなくだものの形の氷が落ちてくるから信じてね、生垣が揺れる方に進んだらアルさまがいたんだよ。すごいね!」


幽霊じゃなくてよかった、と心の底から安心した表情のカナメの襟のところで結んであるリボンがふわりと浮く。

意思表示のはっきりした精霊に、副団長はカナメのそばにいる精霊を見た。

彼でもぼんやり(・・・・)としか見えない──この国の人間で精霊をぼんやりとでも見える“能力の高さ”で、彼は副団長になったのだ──その精霊は手のひらに乗りそうな大きさで、ぼんやりと見えているせいかシルエットが時々二重に見える。そのせいで正しい大きさもあまりはっきりしなかった。けれどおおよその大きさは手のひらに乗る程度、と彼には判断出来た。

ちなみに、ヘインツはモヤッとした形として捉えられる“才能”の持ち主である。


「ギャロワ侯爵のご子息はたしかに、精霊と契約をしているようです」


副団長が静かに言う。

「精霊の大きさはおよそになりますが、手のひらに乗る程度でしょうか。属性などは御子息が使わない限り判断出来そうにありません」

「いや、それで十分。ありがたい」

シルヴェストルはそう言って副団長に軽く頭を下げた。

「ぼく、精霊と契約してるの?ほんとうに?」

「ああ、そうだよ。副団長殿がそういうのだから間違いない。しかしカナメ、どうやって契約をしたんだい?」

「んー……覚えていないけど……何かしたのかな?」

首を傾げたまま考え込むカナメに副団長は一般的には、と前置きして

「基本的な方法はみなさまご存知かと思いますが魔法陣などを使い召喚し“契約してもらう”かたちになります。契約も精霊によって違うので、一概にこうしたからというのはありませんが……」

カナメが悩んでいる横で、マチアスはずっと思っていた。

マチアスはカナメの話を聞いてから、ずっと気になっていた事があったのだ。この当時、まだ幼かったマチアスは気になりすぎている事があった。

この友人は“抜けている”からあり得なくはない、と心配が過ぎたマチアスついに我慢出来ず

「カナメ。まさか精霊が出したイチゴの形の氷を食べたりしていないよな?氷とはいえ水でできたかどうかわからないものを口にしたらいけないんだぞ。形や色で判断したら危ないだからな。落ちてきたものや、落ちているものは口に入れてはいけないんだぞ」

マチアスの言葉にカナメは得意げに言う。


「だいじょうぶだよ!だって水だったもん。変な味とか果物とか食べ物の味もしなかったもん」

「やっぱり食べたのか!?なんでそんなわからないものを食べるんだ!!」

「だって、だってあれ、イチゴの形してたし、冷たかった……」


無防備すぎる我が子に項垂れたシルヴェストル、今から勉強させればいいんだと慰める国王。

副団長の声が静かに広がる。


「……きっとそれ(・・)でしょう。多分ですが、そうだと思います」


その声を肯定するように、カナメの髪の毛がふわふわと揺れた。

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