Report1
閑話休題。
緑の髪の少女と出会ってから約2時間後。
私は帰路につく人々を横目で見ながらある場所に向かっていた。
千寿崎町と呼ばれるその町のやや北西。
近くに大きな総合病院がある傍には、小高い山―丘と言うのが正しいだろうか―が鎮座していた。
その登山道の入口にあの夜出会った羽織の人物が立っていた。
私に気が付いたのかこっちにおいでと言うように手招きしていた。
「すまないね、こんな夜遅くに」
「本当ですよ、貴方じゃなかったらキレてるところです」
「それで、あの子に渡せたかい?」
「…ええ、まぁ」
緑の髪の少女が危険にさらされているとこの人に言われたために、私はあの子を何とか見つけ、無事に渡すことができたのだ。
しかし、あの紙は何だったのだろう?
そう考えた途端に登山道を共に歩んでいた足が止まる。
と、同時にある疑問が心に浮かんだ。
この人は何者なんだ?
「…君、ねぇ、君」
その声にハッとして顔を上げるとあの人が目の前で声を掛けていた。
その姿に妙な既視感を抱いた。
私はこの人と似た姿を見たことがある、と。
思い出す前にこの人はそっと笑みを浮かべ、内緒だよ、という仕草をした。
謎ではあるがどうやら関係があるらしい。
あの人は少し考える仕草をし、目を少し伏せるとまた私の前を歩き出した。
「…うん、これは教えてもいいかな」
いつもよりも固い声が耳を打った。
「まず、大前提として、君は知りすぎてはいけない。だが、知っておかねば困ることも多々ある。…緑の子をなぜ守ったのかとかね」
「教えて、くれるんですか」
まさか教えてもらえるとは思わなかった。
「うん、結論から言うと君のためだよ」
耳を疑った。
私のためだって?
次の言葉に迷っているとこの人は続けた。
「君は外からやってきた。そしてあの子も外からやってきた。…ここまではいいね?」
「…ええ」
「うん、よろしい。…あの子はどうやらね、何日かに一度、この町の外に行く用事があるみたいなんだ。そして君と混ざってしまったものがとれるのが次の満月の晩。あの子はその日にこの町を出るみたいなんだ」
「…つまり、その日にその子と一緒にこの町を出なければ…」
「うん、混ざりものがとれたとしても、君は下手をすればこの世界から消えるだろうね」
この人視点の話も合間に挟んでいきます。
よろしければお付き合いください。