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面影 紗々羅の話 ―出会い―

面影編、スタートです。

今日も一人でいるには絶好の天気だ。

…という暗い顔をした一人の少女が公園のブランコに座り、空を見上げていた。

風が緑の髪を静かに揺らし、暗い表情を覆い隠すかのように影を作った。

一つため息をついて彼女は重い腰を上げ、近くにあった自身のカバンを持って歩き出す。


時計は午後5時を回ったところだった。

逢魔が時(おうまがとき)

魔が活発になる時間である。


特にこの町ではその時間には様々な怪異が目を覚まし、動き出す。

ここは日本のどこかにある小さな町、千手崎町(せんじゅざきちょう)

人と人外が暮らす、一風変わった町である。


それゆえか、この町にはいくつかの暗黙のルールがある。

その一つが「逢魔が時に身なりの良い子どもが一人でいるのを見たら、話しかけない」というものである。


なぜこのルールができたのか。

それを知るものは少なく、知っていたとしても詳しく語ろうとしない。

知るというのは怪異にとって好都合だからである。


そんな話をつい2週間前にこの町に越してきた彼女は知る由もなかった。

家に帰ったとしても誰もいなければ、話しかける人間もいなかったからである。


夕暮れ時の道を家路に向かって歩いていた彼女は、()()()に出会った。


歳は8~10歳くらいだろうか。

白いシャツの上から子ども用のベストを身に着け、下は半ズボン、今時珍しいソックスガーターに靴下をピンと張らせ、靴はピカピカに磨き上げられている。

そしてその青空のような瞳は彼女を真っ直ぐに見つめ、微笑みを浮かべていた。

「僕、一人なの?」

彼女が聞くと少年はどこか嬉しそうに笑みを深め、口を開いた。

「へぇ、お姉さん、僕に話しかけるんだ?」

「…?何を言っているのか分からないけれど、僕、この時間に一人は危ないよ?」

そいつの問いに彼女は戸惑ったが、今は夕暮れ時。

子どもは家に帰る時間だとでも思ったのだろう。

全くの善意から彼女はそう切り出した。


しかし、これは()()である。

彼女はルールを知らなかった。

この町のルールを破るということは時に命に関わるものであるということも。


そいつの影が()()()と動き、形をどんどん変えていった。

手が生え、牙が覗く大きな口が付き、そいつの影から完全に分離し、少女に襲い掛かった。

事態が呑み込めない少女はカバンを胸元に手繰り寄せ、硬直したまま声を発することもできない。

このまま影に飲み込まれてしまうかと思ったその時。

「―走って!」

耳に声が届くのと同時に彼女の腕は何者かに引っ張られ、影から出てきたものから間一髪逃れることができた。

そのまま声に従って走り出す。

黒い何かは追ってはこないようだった。


気が付くと少女は見覚えのあるアーケードの前に立っていた。


「千手街」


この町のメインストリートであり、様々な店が立ち並ぶ、商店街である。

今日もこの通りは、買い物帰りの主婦らしき人、学生、会社帰りの社会人…等々、人で賑わっていた。


いつもの光景に少女が安堵していると、目の前から声がした。

「いやぁ、危なかったねぇ」

どこか間延びした声に目を見やると一人の女性が目に入った。

髪は短く、ショートくらいで少し外向きに跳ねており、白いパーカーにジーンズ、という一見どこにでもいそうな普通の女性が頭の後ろに手をやって立っていた。

一つ変わっていたのは普通顔の横にあるはずの耳がなく、頭に黒い猫の耳、ジーンズからは同色の尾が生えていたことだった。

「え、ええと…助けていただいて、ありがとう、ございま、す…?」

少女が恐る恐るといった風にお礼を述べると、女性は朗らかな笑みを浮かべた。

「別にいいよー。しかし、厄介なのに出会ったねぇ。」

そのまま何か考える素振りを見せると、突然、両手をパンと合わせた。

「そうだ!あそこなら何とかしてくれるかもしれない!…あ、君の名前を聞いてなかったね。さっきあんなことがあって怖いだろうから苗字だけでいいよ。君の名前は?」

少女はやや勢いに押されながらも答えた。

面影(おもかげ)、といいます」


猫のような女性と、面影こと、「面影(おもかげ) 紗々羅(ささら)」はこうして出会った。

面影はその時には気が付いていなかった。

自分がどういう存在なのか、何故女性があの場から助けてくれたのかを。


小説家になろうに投稿するのは初めてです。これから少しずつ話を深めてまいりたいと思いますので読んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。

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