3話 喧嘩(おまけ)
★手洗い場にて
「……そういえばレイズ様」
僕はタオルで濡れた手を拭きながら、レイズ様の後ろから声をかけた。
「んー、なぁに?」
一方のレイズ様はこちらを見ることなく、平らな桶に溜まった水で手をじゃぶじゃぶと洗っている。
そんな中、僕はふと思った疑問を口にした。
「レイズ様が仰っていた『嫉妬』って、何のことだったんですか?」
「………ふぇっ!?」
僕がその質問を繰り出した瞬間、水の跳ねる音がピタリと止んだかと思うと、レイズ様は僕の方に勢いよく振り返った。
その目は珍しく真ん丸な形で、さらに頬は何故か少し赤みを帯びているが、そんなに驚くことなのだろうか……?
「な、なんでそんなことを聞くの……!?」
「いえ、特に深い理由はないですよ。単純に気になっただけですが……」
「そそっ、そういうのは、聞いちゃダメだよ!」
「なんでです?」
「えっ、そ、それは……」
レイズ様は言葉を詰まらせて俯いてしまう。
もしかして、何かまずいことでも聞いてしまったのだろうか?
そんな疑問が浮かんだが、僕がその答えに辿り着く前にレイズ様が再び口を開いた。
「……師匠の私が嫉妬しているだなんて、みっともないでしょ? だから、私の面目を保つためだと思って、これ以上は聞かないで……」
それだけを伝えると、レイズ様は僕にタオルを取るよう指示した。
結局、僕に対して何を嫉妬しているのかは分からなかったが、レイズ様が僕に嫉妬しているものがあると思うと、ちょっぴり嬉しかった。
レイズ様の面目を保つためにも、これ以上詮索はしない方が良いだろう。
そう心に決めた僕は。
「分かりました」
と、レイズ様にタオルを手渡した。
けれど、レイズ様は手を拭くよりも先に、顔をタオルで覆い隠していたのであった。
お読みいただきありがとうございました。
おまけを更新すると言ってからはや半年以上。
長らくお待たせしてしまい申し訳ないです。
このシリーズ、暫くは執筆する気が起きなかったんですが、突然また書きたくなって書き上げた感じです。
あれです、「気分次第です僕は」ってやつですね(伝わるんでしょうか?)。
それはそうと、次回4話も近々投稿予定です。お楽しみに。
それでは、次回もまたよろしくお願いします(→ω←)