サラダ・バーのしんずい
知様主催『ぺこりんグルメ祭』参加作品です。
今日のゆんちゃん一家4人は、外食に来ています。
お店は、ゆんちゃんもかずや兄ちゃんも大好きなハンバーグ・レストラン。
ここはサラダもスープも取りほうだい。それにライスにかけるカレーまであって、まさにこの世の天国なのです。
席に案内されて、まずはメニュー選び。といっても、いつもみんな、この店の看板メニュー『俵ハンバーグ』なんですけどね。
「僕はこのハンバーグ2倍の方にしようかなー?」
かずや兄ちゃんがうかがうように言ってみますが、ママがちっとも楽しそうじゃない笑顔で答えます。
「物足りないなら、サラダとかライスでお腹をいっぱいにしたらいいんじゃないかしら?」
「うん、そう言うと思った。ちょっと言ってみただけだよ。
僕もいつものでいいや。──ゆん、サラダ取りに行こうか」
パパたちがタブレットで注文を入れたら、すぐにサラダ・バーへ。まだお客さんが少ない時間帯なので、サラダ・バーでも自由に動けます。
ゆんちゃんのサラダはいろどり重視。お皿がカラフルになるよう、色々な具材をていねいに乗せていきます。
かずや兄ちゃんは好ききらいが多いので、サラダの色合いは地味です。千切りキャベツとレタス、あとは海藻やコーンなんかをちょっと乗せて終わりです。
ふっ、今日もゆんちゃんの勝ちね。トマトぎらいで赤がないのはちめいてきよ。それじゃサラダ・バーのしんずいをたんのうしたとは言えないわね、お兄ちゃん。
ゆんちゃんは今日も心の中で勝利宣言をあげました。
さて、メインのハンバーグも安定の美味しさです。ちょっと赤い部分が残ったハンバーグを、熱々の小さな鉄板で好みの焼きかげんにするのが楽しいのです。
半分ぐらい食べたところで、サラダがなくなりました。
「ゆんちゃん、おかわりとってくるね!」
さっきはシーザー・ドレッシングだったから、今度はゴマにしようかなー。
ドレッシングも5・6種類くらいあるので、どれを選ぶかもお楽しみです。
すると、サラダ・バーには先客がいました。きれいなお姉さんですが、その手のお皿に乗っているのは、ほんのひとつまみほどの千切りキャベツの小さな山が5つだけ。
あれ? このお姉さん、これだけしか食べないのかな? せっかくの食べほうだいなのに、もったいないの。
不思議そうな顔で見ているゆんちゃんに気づいたのか、お姉さんがにっこり笑って話しかけてきました。
「ああ、これ? これはこうするのよ」
そう言って、お姉さんはドレッシングのボトルをひとつ取って、山のひとつにちょっとだけかけて、別のドレッシングをとなりの山にかけたのです。
「こうやってひと通り味見をしてから、どれにするか決めようと思って」
えええっ⁉ そ、そんなテクニックがあったなんて!? これは目からうろこです。
「──ちょっとごめんよ」
立ち尽くすゆんちゃんの横に、おじさんが割り込んできました。手に持ったお皿にはもうライスが盛られていますが、その上には四分の一くらいにカットしたハンバーグが乗っています。すると、おじさんはその上からカレー・ルーをかけたのです!
ハ、ハンバーグ・カレーにしちゃうの!? そんなの考えたこともありません。
すると、今度は別のおじさんが、スープ・カップを手にとってサラダ・バーの方に歩いてきます。そして、サラダ用に大皿に盛られたスイート・コーンをひとすくいカップに入れて、その上からコーン・スープを注いでいきます。
こ、これはまさか『コーン・スープのコーンぞうりょう』!?
サラダ・バーのしんずいをきわめたはずのゆんちゃんの想像をはるかにこえる人たちがいるなんて!
さらに、スープ・カップを2つ持ったお姉さんがやってきて、デザートのゼリーを2種類、別々のカップに入れていきます。
いつもお皿に2種類のゼリーを乗せると味が混ざっちゃうんですが、まさかスープ・カップを別々のデザート用に使うとか──そんな使い方ってありなの!?
けっきょく、何もとらずにとぼとぼと席に戻ってきたゆんちゃんを見て、パパやママは不思議そうな顔です。
「あれ、ゆん、何も取ってこなかったのか?」
「どうしたの? いつも2回は取ってくるのに」
「うん──ゆんちゃん、今すごーく『はいぼくかん』を味わってるとこなの」
サラダ・バーの使い方のマナーは守りましょうね。