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【ローファンタジー】

嗚呼、日本人

作者: 小雨川蛙


えっ、なにこれは……(困惑)


今の私の心境をそのままにして表すならこれ以上のものはあるまい。

自分の常識や感覚が世間一般と大きくずれていないと仮定するならば、おそらく大体の人は今の私とそう違わない反応をするに違いないだろう。

考えても見て欲しい。

君は普段通り煩わしい目覚ましのアラームで目を覚まし、学校や仕事に行くために「めんどくせー」といつものように愚痴りながら用意する。

歯磨きをして、顔を洗って、ご飯を食べて、また歯磨きをして……。

聞き流すためにテレビを流して、忙しいにも関わらずスマホを見て暇つぶしをする。

あぁ!

気づいたらもう家を出る時間だ!

先ほどよりも大きくなった気だるさを胸に家を出る。

そんな一日の始まりだ。


ここまでは普段通りだ。

何の問題もない。

精々遅刻するか、しないかの些細な不安しかない。

さて、問題はだ。

曲がり角で唐突に人とぶつかったんだ。

別に転んだりもしないし、怪我をしたりもしない。

相手が美少女だったりもしないし、異世界に転生をするわけでもない。

普通の出来事。

だから、めんどくさい。

イライラしながら相手を見て心にもない謝罪をしようと相手にして私は気づく。

「えっ?」

気づいたのは相手の方が早かった。

だから、その人の声が先に聞こえた。

「えっ?」

私と相手の差はたったそれだけだ。

一秒にも満たない時間の差。

それだけで相手はもう悩みからバイバイだ。

本当にずるい。

悲鳴をあげて相手が倒れる。

(え? 何が起こったの!?)

なんて、思う間もない。

ただ血を吐いて倒れた相手の顔を見て私の脳裏によくある怪談が浮かぶ。


全く同じ人間、ドッペルゲンガー。

それに会うとその人は死ぬ。

どうやら、それは事実らしい。

つまり、倒れた相手は私自身で。

相手(?)は私と出会い死んだ。

なんとも分かりやすい。


ただ、問題なのは私もお前と同じなんだよ。

お前だけ死んでんじゃねえよ。

どうすんだよ、この状況。

血を吐いて倒れた私。

いや、お前?

なんか混乱してきた。

どっちにしろ、これはどうすりゃいいんだよ。

救急車を呼べばいいの?

警察を呼べばいいの?

どっちを呼んでも面倒なことになりそう。

あああああああああ、もう面倒くさい!

というか、呼ばれた相手が困るだろ。

通報した人間が同じ顔してんだもん。

なんだよ、それ。

SANチェックでもすんのか。

あああああああああ、マジ面倒くさい!


そんなイライラをしていると不意にアラームが鳴る。

現実逃避を兼ねてスマホを見ると『遅刻寸前。走れ!』との文字。

まさか、このアラームが鳴るほど追い込まれるとは……!

私はちらっと倒れた奴を見てから、全力で目的地へ走り出した。

うん。

多分、これがベストだろ。

これ以上ないだろ。

嗚呼、ことなかれ主義。

嗚呼、日本人。


お昼ごはんを食べている時にニュースが報道されてさらに面倒なことになるのはまた別のお話し。

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