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9、避難訓練


怖かったけど、あんな力がこの世に存在するなんて……すげぇぇぇぇぇぇ。


「コホン。」


いけねい、いけねい取り乱しちまったぜ。でもすごい力じゃん。怪我を治せるなんて……すげぇぇ。魔法の力とかはなさそうだから多分みんなが持ってるわけじゃないよね。

確かにお兄ちゃんの言う通り、人に知られたら実験されるだろうし、その為に絶対に捕まるに決まってる。だからバレないようにしないと…。


「…コホン。」


「シャロン?さっきから咳してるけど大丈夫?」


「えっあぁ大丈夫だよ。気にしないで。明日からまた仕事だからちょっと緊張しちゃって。」


「ああ、そうだったね。でもシャロンなら大丈夫。子供たちも神父さんも貴方の事が好きだから。」


「お兄ちゃん、ありがとう。じゃあ早めに寝ちゃおうかな。」


立ち上がり部屋に戻る前にお兄ちゃんハグをする。


「ああ、おやすみ。いい夢を。」


「ありがとう。お兄ちゃんもいい夢を。」




「卒業式でさえ貴方はここに来てしまうのですか。」


「まあデイビッドいいじゃないケネスの卒業生代表の言葉は聞いてから抜け出したもの。お言葉ですけどそんな貴方は卒業式に出なくていいのかしら?」


また…体に…残る記憶か。私はまた綺麗な庭園の噴水の傍に座っている。そしてこの前と同じようにデイビッドさんが後ろから話しかけてきた。記憶の中のシャーロットが制服のスカートの裾を少しつまんでいる。


「私は護衛ですから。」


「その前に生徒でしょう。」


「…また第一王子と婚約者ですか?」


一瞬胸がチクリと痛み、教室で赤髪の男の子に物を投げられる記憶がよぎる。もしかしてこの馬鹿が第一王子?彼女、教室にいずらかったのかな?


「ふふっあの2人私の事が嫌いなの。」


「……シャーロット様どうして第一王子と婚約者は貴方を目の敵にするのでしょう……私には理解できません。」


「貴方は優しいわね。正直、私にも分からないわ。私は王の前で王位を放棄したその時彼等も居たのに。」


「それに卒業したら貴方は……。」


「ふふっ浮かない顔ね。」


「あ、あんなの軟禁ではありませんか!王位は継がせないだけど王宮の仕事はさせる。情報を持って王都から逃げ出したりしないように監視されるって。シャーロット様の事をなんだと思っているのですか!彼等は!」


「そうね。」


「それに婚約者だって!貴方だって第一王子と同じように好きに決めていい筈なのに!王は!」


「デイビッドは本当に優しいわ。あの人達にその優しさが少しでもあればまた違った人生を歩めた。きっと私が死ぬまで無理なのでしょうね。」


「シャーロット様……ケネスは……。」


「それは言わないで。それだけはお願いだから口に出さないで。どんな事でも王の命令を受け入れるそう決めたの。私だって本当は……。」


「……はい。」


ケネス…彼女とケネスの関係。ケネスの名前を聞くと胸が張り裂けそうになってズキズキと痛む。この痛みの名は、


「愛。」


頬に流れる涙を拭って私もう一度眠りについた。



「久しぶりに来ていただいたのに大変な日ですみません。」


「いえいえ、気になさらないでください。」


今日は避難訓練の日なのでお昼ご飯を食べたら子供たちを寝かせずに絵本の読み聞かせを神父さんが始めた。

本を読み終え自由時間になり子供たちにトイレを促して少しずつ訓練準備を始める。避難訓練の内容が避難から子供たちを家に帰すまで、なのでトイレ!と言われると少し困るからだ。

そっと騎士隊の人達が数人入ってきて子供たちの相手をしてくれている。デイビッドさんも合流して今日の段取りを神父さんと話している。私をちらっと見て手招きされたので話に合流する。


「シャロン、君は教会に人が残っていないか確認してから出る係だから俺と一緒にまわろう。」


「はい、デイビッドさんよろしくお願いします。」


「私は引率で子供たちの人数を数えて見守ります。今日の人数は8人です。今日は避難訓練ですが、もしも本物の火災が起こったら中を見回るのは最低限にしてください。貴方自身の事を1番に考えてくださいね!」


きっと神父さんは山での事を思い出して言ったのだろう。私は素直に返事をする。神父さんをまた心配させたくは無い。


「はい。」


パパパー、パパパー。


「騎士隊のラッパの音だ。始まったな。」


「それではよろしくお願いします。」


神父さんの掛け声で訓練始まった。


「「はい。」」


「さあ、皆さん!避難訓練が始まりました!今日は火災が起きた時の避難訓練です!みんなで安全に外に出ますよ!」


「「「はーい。」」」


「皆、落ち着いて神父さんの後をついて行こうね!手を繋いで!ゆっくり!前の人を押さないでね!神父さん確認に行きます!」


教室から出てそのまま庭に出る。神父さんが子供たちを座らせて人数を数えている。


「はい!子供たちは8人全員居ますが念の為お願いします!」


「はい。」


「出火元はキッチンだから一旦窓を開けながらそこまで行こう。道中の水道でハンカチを濡らすぞ。」


ハンカチを濡らすまでするなんて本格的!


「はい。」


「火災が起きました。誰か残っていませんか?」


教会には礼拝堂、教室、神父さんの寝室、キッチン、トイレ、洗面所、浴室、倉庫、書庫というシンプルな部屋だけで全ての部屋が子供や大人が隠れる事ができる場所はなく扉を開けたら部屋内は全て確認できる簡素な作りになっている。なのでデイビッドさんと手分けして部屋に入り声がけをする。


「誰か居ませんか?火災が起きています。」


「火災が起きている。避難するぞ。」


何度か繰り返し全ての部屋を確認して外に出る。外には8人の子供たちと神父さんが待っていた。


「中には誰も残っていません!」


「はい!子供たち8人全員避難しています!」


「じゃあ避難完了だな。」


「「はい!」」


よかった、なんの問題もなく終わった。神父さんが子供たちにそれぞれのカバンを持たせて家に送っていく。私は村の消防隊に言いに行く係だけど訓練なので今日はなし。神父さんと子供たちを見送ってから教室の片付けをしているとデイビッドさんが手伝ってくれた。


「シャロン。」


「はい。」


「その…もう…仕事は終わりだと…聞いたのだが…。」


「はい。10分もすれば神父さんが帰って来られるのでそこで仕事は終わりです。」


「ああ…その…昼食を食べに行かないか?」


「えっ昼食ですか…。」


どうして?仲良くなる必要ってあるのかな?この人と居たら私がシャーロットとバレる可能性が爆上がりしそう。どうしたらいいかな。


「…どうだろうか?」


浮かない顔で誘っているこの人を他言しない人だと信用しているかと言われたら、はい。でも過去の記憶のように仲良くするべきかと言われたら、いいえ。まあでも1度位ならいいか。


「行きます。」


「…良いのか?」


「はい。」


「じゃあ着替えて来るから騎士隊の宿舎の前で待っててくれるか?」


「はい。私も帰り支度をしてきますね。」


「ああ。じゃあまた後で。」

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