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46、手段


「キングが決めたことの大筋は整ってきたかな?」


 やはりケネスの法律の力は強い。チョコレートの製造方法も法律で守れば住民が外の街と行き来できるようになるのも夢ではなくなるかもしれない。


「ああ、ケネス。君とすり合わせたおかげでなるべく不公平にならないようにできたと思う。」


「それは良かった。」


「ありがとう、そういえばあの二人はもう大丈夫かな。結局ゲイルとケネスに任せっぱなしになっているが。デイビッドのスパイが現れたなんて。」


 ゲイルが迎えに行った際に色々と話を聞いてきたようだがキングになってしまうと身動きがとれなくなってしまった。執事の時は自由に仕事ができたのに。


「ああ、とにかく門番にはあの男を通すなと言ってゲイルが信用している男や女達に家の周りを見張ってもらっているが、本人達からは1週間音沙汰なしだな。」


「それにしてもケネスはどうしてデイビッドが王子側だと考えているんだ?」


「ハンカチだよ。シャーロットのハンカチは殺人未遂の証拠だが絶対に身内に裏切り者がいるという証拠にもなった。僕は除いて、命をかけてシャーロットを守っているルークも除くともうデイビッドだけになる。それに傍から離れていったのも怪しかった。色々と調べる内に全てが紐付いていったんだ。」


「そうか、でもその言葉分かってるのか?それが事実ならデイビッドはお嬢様の処刑を望んだということになるんだぞ。」


「そうだな。だが多分間違いない。デイビッドは第一王子と繋がっている。」


「そうか。」


「とにかく今はあの二人と関わらないでおこう。今僕たちは…なんというか…簡潔に言うと…色んな奴らから憎まれている。分かるだろ?」


「ああ、俺の改革のせいだクラウンよりも派手にやったからな。こうなると分かっていたが…どうにも。」


「君は大丈夫だ、強いから。そして僕は君の助言の結果、不本意だが君に無理矢理仕事をさせられている体になっている。それでも襲われそうにはなっているが。」


「大丈夫、俺と一緒にいれば守ってやれる。」


「正直それも不本意ではあるが、まあいい。だからこの状況で不用意に二人に近付くのは良くないと思う。」


「分かってる。あの二人、只でさえデイビッドに睨まれている状況なのにましてや俺のせいで多方面から命を狙われるなんて考えられない。」


「だから見張りはゲイルに任せた方が良い。キングと僕よりはまだましだから。」


「ああ、それとデイビッドが絡んでくるならケネスという名前はあまり呼ばない方がいい気がしてきてキングみたいに役職を与えようと思うのだが。」


「役職を?うーん。」


「俺が決めて良いのならメンターと呼ぶ。」


「それでいい、好きに呼んでくれ。」


「じゃあメンター、これからも頼む。」


「ああ。だけどキングがあの二人を我慢できると思わなかった。」


「なんだそれは、今助けに行けば余計に危ない状況になるのは俺だって分かる。馬鹿じゃないぞ。」


「それもだが、結婚だよ。僕はまだ許せない。自分にその資格がなくても。」


「そんな事か、俺は初めて会ったその時にお嬢様に誠心誠意仕えようと決めたんだ。それ以上の感情は持ち合わせてはいないよ。」


「それは嘘だな。まあ僕に本当の事なんて言いたくないだろうけど。自分に嘘をつかない方が良いよ。じゃあまた明日。」


「……ああよろしく。」


 ケネスが扉を閉めた途端、ほっと力が抜ける。ここでは誰も信用しない方が良い。部屋の鍵を閉めてジャケットをソファに脱ぎ捨てる。

 俺だって本当はお嬢様と一緒に居たい。別に結婚がどうのこうのじゃなくてもあの街で暮らしたみたいに兄妹でも良い。お嬢様に嘘をついて何も知らないふりをしているが本当は俺にもあの時の記憶がある。ケネスが騎士達に連行された後、デイビッドが命を取り留めたことを確認して俺は自害した。フィンを失いお嬢様失った俺に生を繋ぎ止めておく物などなかったからだ。だから一人だけのうのうと生きながらえた事の罪滅ぼしとして今クラウンの思惑通りにキングをしている。


「この街が良い街になったら三人であの屋敷で暮らしたいな。」


 無理か。そんな事は望んではいけないきっと。俺は部下に声をかけて寝室で眠りについた。




「おはよう!も朝よ!さっさと開けなさいよ!」


 大きな声と家を揺らすようなドアを叩く音で目が覚めた。のびをして目を開けるとフィンと目が合った。怖、起きるまでじっと私を見てたの?怖。そして痩せ型だけど意外と筋肉があるな。今、初めてちゃんとフィンの体を見たかも。


「おはよう、シャロン。やっと起きたね。体は大丈夫?」


「だい……。こえが……。」


 声が出ない。えっ。


「へええええ。可愛い、そりゃ一晩中したらそうなるかごめんね。」


 キスをしてくるフィンに一瞬苛立ちを覚える。


「ぶ。」


 っとばす。


「それ前も言ってたけど、多分良い意味じゃないよね。」


 不用意に私の体に触れるフィン。昨日まで全然だったのに。私は虫を払うみたいにフィンの手を払った。


「うわぁ酷い。でも可愛い、俺生きてて1番幸せ。シャロンの全てをもらえた日やもん。」


 私を無視して体中にキスをしまくるフィンを蹴っ飛ばして布団から出る。流石にユエが可哀想だ。


「シャロンに何されても良い。今日は。」


 フィンを無視して服を着て玄関に行く。ユエは昨日と同じお団子姿でチャイナドレスっぽい服を着ている。黒で胸の所に所謂チャイナドレスの飾りが付いていてタイトではなくフレアの裾のスカートで美しい。


「おはよう、シャロン。」


「おはよう。」


 ひそひそ声なら出るので小さな声で挨拶をするとユエがなんとも言えない顔をして中に入ってくる。


「えっと昨日はごめんなさい。それでお詫びじゃないけど朝ご飯を買ってきたの。サラダとフルーツ。」


「ありがとう。」


 ユエがテーブルに買ってきた物を置いてくれている時にフィンが上から降りてきた。


「またきたんか。暇やな自分。」


「教えてくれたらもう来ないわよ。それにしてもあんた初めての相手にここまでするなんて最低ね。」


 やっぱりばれてら。


「えー、だって可愛いんやもん。」


「店なら出禁よ。」


「せやな。」


「ほら紅茶を入れてきて。」


「分かった分かった。」


 フィンが紅茶を入れている間にユエがテーブルセッティングをしてくれて私は座ってなさいと言われて大人しく座っている。


「紅茶を入れてきましたよ。」


「ありがとう。」


「じゃあいただきます。」


「「いただきます。」」


 ひそひそ声で言う私とそれを真似するフィン。


「今日はこれを食べたらすぐに帰るわ。」


「どうしてゆっくり……。」


 私のひそひそ声を遮ってユエが続ける。


「シャロンゆっくり休んだ方が良いわ。」


「ああ。」


「せやな。」


「あんたね。彼女に尽くしなさいよ。」


「へーへー。」


 どんどんユエに対して雑になっていくな。そして本当に食べたらすぐに帰ってしまった。




「すみませんそこのお嬢さん。」


 肩を叩かれたのでびっくりして身構える。後ろに居たのは知らない若い男だ。


「なんですか?」


「今クラウンが家から出てきましたか?」


 は?どうしてそれを?あの二人は誰にも教えていないって。だったら私は。


「さあなんの事だか?」


「ユエさんですよね?両親を探している。」


「どうして?」


「調べたので。申し遅れました私はオーウェンと申します。」


「それでなんの用ですか?」


「あの二人は貴方に教えるつもりはありませんよ。分かっているでしょう。」


「何が言いたいの?」


「私がお教えしますよ。」


「両親の事を?」


「いいえ情報を集める術を。」


「情報を集める術。」


「ええ。簡単に言えばスパイですね。」


「有難いけどどうして?」


「一つはあの家をうろちょろされるのが目障りなので。」


「はっきりと言うわね。」


「ええ、二つ目は貴方の気持ちが分かるから。」


「……分かった、お願いします。」


「ええ、で行きましょうか一旦僕の泊まっている部屋に。そこで服を着替えてもらってまた外に出て一は身を守る訓練からしますね。」


「ええ。」


 そして服を着替えた後、すんなりと街を出ることができた。少し移動して森の中でスパイになる訓練が始まった。

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