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41、透明


「なんで俺の周りって勝手な奴らばっかりなんやろ。特にルーク。」


 私的にはいきなり仕事の全てをルークに投げた君も大概だと思いますが。フィンはプリプリと怒りながら歩いている。ただ本当に怒っているのかは怪しい。私の為にパフォーマンス的にかもしれないし単にケネス自体が気に入らないだけでルークに対してはそんなに怒っているようには思えない。


「フィン、そんなに怒らないで。それに結果としては私の決めた事だからフィンが怒ると私が謝らないといけなくなるわ。私に謝ってほしい?」


 少し意地悪く聞くとフィンはブンブンと首を横に振り否定する。


「いやシャロンに謝ってほしいわけじゃないし謝らんとって。でもこの件に関してはルークに腹が立つ。シャロンにどうするか聞いたら嫌やって言うわけ無いのに。」


 私の腰を抱き寄せて言う。なんか過剰なスキンシップにもやっと慣れてきた。


「まあまあ。そういえばさっきケネスに何を言いかけたの?」


「ああ、あれは……。」


 だんまり、というか少し考えている。言葉を選んでいるのかな。


「フィン?」


「うん、えっと。確定的な事は何も分からへんし憶測の域を出ないんやけど、ケネスの父はシャロンと同じあの王様これは確かやんな。」


「ええ。」


 あの処刑の前にデイビッドが嘘をつくと思えない。ケネスも認めたし。


「で、それを知った名ばかりの父は消息不明になりそこからケネスはその父には一度も会ってない。」


「多分、そう。」


「で母親と二人暮らしやったとか。」


「ええ。何が言いたいの?」


「父親は研究者って事は元々貴族は母親の方やろ。って事は婿に入ったんちゃうん?金のない父親が消えても母親の家がなんとかできるやろ、王の援助なんか必要か?しかもシャロンの処刑を止めずにそのまま行うような親が認知もしてない子供に金なんか渡すかな?」


「うーん…でもケネスがお金に困っていたのは本当の事だと思う。留学へ行くのに国の援助を受けているし。」


「国からっていうのがお金の為というより、国から代表で留学に来てます、なのでとても優秀です!みたいなそんな理由じゃないんかな?あー分からん、なんかずっと引っかかってるねんなぁ。でも何かが分からへんねん。」


「うーん。って…オウ…オウェ…オエ。」


「なん!どうした!吐くんか!」


 と両手を前に出される。じゃなくて!


「オーウェンがいる!」


 思わず大きな声を出してしまったので慌ててフィンの手を引いて建物の後ろに隠れる。


「なんやと…あいつ。ああ…そうやったな。」


 フィンは完全にいつもホルスターがある場所に手をかけたがフィンはキングの家を出てから銃を携帯していない。その事に気付いても全く動揺する事なく私を自分の体の後ろに隠し建物の陰から様子を見ている。


「フィンここは逃げよう!」


「シャロン大丈夫やから、俺もそこそこ強いで。」


 怖い声でニッコリと言う。ああ、これは駄目だ平和的に解決したいのに。オーウェンはもうアーサーと手を組んでいるのだろうか?ああーどうしよう。


「バカ!強いとか弱いとかじゃなくて死んでほしくないの!危ない事は私の為に永遠にしないで!」


 私の言葉に少しびっくりしながらこんな状況で柔らかく笑う。


「それは、言う事を聞かれへんこともる。」


 あーもう!こんな時でも格好いいなんて!


「インビジブル!!服込みインビジブル!!フィン込みインビジブル!!」


 一瞬キラキラに包まれて思わず目を閉じる。そしてゆっくりと目を開けるとよし手が消えているという事は。顔を上げるとフィンの姿も消えている。よっしゃー!ありがとうこの力!助かります!


「嘘やろ……。」


 どんな表情か分からないけど声からは驚きが隠せていない。


「しっ静かに…。」


 私はそっとオーウェンが居た方の道へ戻る。まだそこに居るしなんだったら近付いてきている。フィンとは手を繋いだままなのでなんとかこのままはぐれないようにしないと。ヒソヒソ声で話す。


「消えてる?まさか?何でもありやな。」


「それは後。早く家まで戻ろう。」


「ああ、バレへんようにな。それにはぐれないようにせな、はぐれたら一生会われへんぞ。」


 確かに…じゃあ一時間後に何があってもこの力が消えるようにお願い致します。


「あれさっきこの辺りに。」


 さっきまでフィンが覗いていた建物の陰から逆にオーウェンが出てきたのでびっくりしてぎゅっと手を握ってしまうがフィンは声を出す事なくオーウェンがいる方とは逆の建物の角まで私を引っ張る。どうにかして離れないと。

 なんとかオーウェンが先程のフィンと同様に建物の陰から道を覗いている隙に道を挟んだ向こう側に移動する。オーウェンは住居の区画、私達は道を挟んでその隣のお店が並ぶ区画に居る状況だ。


「シャロン一旦家に帰ろ。」


 とヒソヒソ声のフィン。私は返事の代わりに手をギュッと握る。フィンも握り返してくれたので人に当たらないように歩き出す。何故かオーウェンがこちらに近付いてきている。何故!?


「うーん確かに姫様を見た気が…。うーん。」


 私目当てかい!ヤバめ、そしてでっけえ独り言。フィンの手をギュッと握る。フィンが軽く二度ギュッとしてからまたゆっくり歩き始める。オーウェンは見えているのかと錯覚する程に的確に私達を追ってきている。

 少しでも距離をとる為に早歩きで移動する。一直線に家を目指しているのだと思うけど土地勘がまだない私には家まで後どれ位なのか検討もつかない。そのまま15分程歩いただろうかやっと見覚えのある土産物屋さんや観光客向けのレストランが見えてきてやっと一息ついた。がむしゃらに歩いたおかげでオーウェンの姿ももうなかった。


「はーやっと帰ってこられたな。」


「はーいおかえりなさい。」


 と玄関が閉まりその扉の前にオーウェンが立っていた。


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