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34、新しい道


 フッと目が覚めた。日光がちょうど目の辺りに射し込み眠りを妨げたようだった。また?この感じ?


「この部屋、それにこの感じもしかしてあの日に戻ってる?処刑の日に。どうして?もう終わりで良かったのに。全て失ってたんだから。」


コンコン、というノックと共に扉の外から声がする。メイドさんだ。


「お嬢様、そろそろご支度致しましょう。お手伝いさせていただきます。」


「あ、お願いします。」


やっぱり白と黒のレース調のドレスを着たメイドさんだ。


「シャーロット様、今日のドレスは執事からの言いつけで王から頂いたお妃様のドレスと決まっておりますのでそのように準備致しますね。」


「はい、ありがとうございます。」


私はメイドさんに頭を下げた。その瞬間、メイドさんが泣き出し座り込んでしまう。この前と一緒。


「どうして…こんなに…心優しい…お嬢様が…。」


 背中をさすりながらお礼を言う。


「今までありがとうございました。すみませんが執事のルークさんを呼んでいただけますか?」


「ええ、かしこまりました。ルークさん!お嬢様がお呼びです!」


 扉を開けて叫ぶ、このメイドさんはやっぱり面白い人だ。

 このニ度目の転移は記憶が全てある状態だ。多分、処刑されると処刑の日に転移するみたいだな。普通に死んでもループするなら考えものだけど。

 遠くから返事がしてメイドさんがパパっとドレスを着せてくれた。ノックの音がしてメイドさんが扉を開けて出て行き入れ替わりでルークが入ってきた。


「お嬢様、お呼びですか?」


「ええ、その今日のあれは上手くいくかしら?」


「準備は万全です。処刑人はこちらの味方ですし何度も何度も試行錯誤しましたので。」


 ルークには記憶がないのか?


「そう。ねえシャロンって分かる?」


「シャロン?すみません、分かりません。」


 そりゃそうか。


「ありがとう。変な事を聞いてごめんなさい。」


 今日、ここで私が死ぬ方が誰も傷付かない気がする。だって私のせいで処刑人もフィンも……。それにどう頑張っても二度目の処刑は起きてしまう。あの謎のデイビッドの執念で。


「ルーク今日の…。」


「迎えにきたでーーーー!」


 明るい声に遮られる。


「処刑人にしては早いな。」


 ルークが玄関の方に向かおうと扉を開けようとしたと同時にバタンと凄い音がして扉が開きルークは完全に扉と正面衝突した。


「シャロン!迎えにきたよー!うわっなんか姫っぽい服!可愛いやん!綺麗やし!」


「フィン。あなたどうして?それに名前?何?どういう事?」


「あの騎士隊長に殺されたんやけど、生き返った。ほんで迎えにきた!」


「ちょっちょっとまって整理させて。」


「うん、ええけど。ちょっと行こうか!とりあえず俺考えたから一緒についてきて!急がないと間に合わへん!」


 と強引に腕を引っ張られる。本当に強引な男。なのに顔を見られて嬉しい。フィンは対応が淡々としてるけどそれでも嬉しい。

 馬車に乗せられる所でルークが慌てて追いかけてきて馬車に一緒に乗ってずっと何か文句を言っている。馬車がすぐに止まってここは何処だ?


「ここは王城?どうして?」


 ルークが馬車から降りて辺りを見回している。フィンは迷いなく門に近寄っていく。


「あー兄ちゃん!ヌーンの街のもんがチョコレートを王に献上しにきたって言いに行って、会ってくださいよって!」


 王城の門番だというのにフィンはえらくフランクに話しかける。


「分かった、待ってろ。」


 門番が急いで中に入っていく。ルークが不安そうに私を見るが私もフィンが何をしたいのか分からない。


「シャロン、王様はチョコレート大好きって知ってた?」


「へえ、そうなの。」


「お前はさっきから姫様に馴れ馴れしいぞ!いい加減にしろ!」


「ルークうるさいって分かってるから!今急いでるやん!後で全部説明するから!ちょっと待って!」


 ルークを抑えてフィンを見る。フィンはあの真っ黒のスーツにシルクの黒のワイシャツを着ている。本当に危ない男に見えるけどやっぱりかっこいいし似合っている。


「フィンとりあえず一旦信じるから、私はどうすればいい?」


「悲しそうな顔で黙ってて。あーごめんな。」


 どうして謝ったのか分からないけどこれから何かあるのかもしれない。


「分かった。」


「来い!王がお会いするそうだ!」


 門番が戻って来て言う。


「ありがとう!じゃあ箱の中身確認して?そしたら安全やし、持って入っていいやろ。後、ルークはここで待っててな。」


「え、嫌だ。」


「ルーク、フィンの言う通りにしましょう。」


「クソ、はい。」


 この間に門番が箱の中身を確認してくれた。


「ああ……よし通れ。」


 そしてフィンは大きな…小柄な中学生女子なら入りそうな箱を抱えて王の謁見室に入った。そりゃそうだがそこには王が居た。両脇にボディガードの様に騎士を立たせている。初めて見るがこの人こそが私とケネスと第一王子の父親。金髪で小柄で目つきが悪く思っていた感じと違う、何というか海賊っぽい、口髭もあるし。


「それでチョコレートを持ってなんの用だ?ヌーンの長よ。」


「単刀直入に言うとこの姫をヌーンにくれません?」


 なんですと?


「今日の処刑はどうする?」


 そこ?自分の娘って分かってる?


「処刑じゃなくて流刑にするのはどうですか?正直、第一王子が王位継承権の為に仕組んだって分かってるんでしょう?」


「ああ、知っている。」


 知ってるんかい。


「じゃあ王家とは絶縁してヌーンに島流しにしても一緒じゃないです?丁度女手が欲しいんですよ。どうせ出られなくなるし処刑するんやったらうちに捨ててくれても良くないですか?ねっチョコと交換!」


「ああ、まあそうだな。」


 まあそうなの?でもチョコってものすごい高価なんだっけ?


「ありがとうございます。じゃあ後二箱あるんでそれもあげますよ。その代わり処刑人を呼んで罪状の書類を変更して一部ください。」


「よかろう。」


 そして王はすぐに秘書っぽい人を呼んで私を絶縁した後、処刑ではなく流刑にすると変更した。その変更した書類をフィンに渡している。


「ではお姫様は連れて行きますね。失礼します!」


なんだかフィンってこんな感じだったっけ?最初だけこんな感じだったかな。


「ああ。」


 王はこちらを見ずチョコレートを見ながら返事をした。王を見るのはこれで最後だろう。ちらっと見えたチョコレートの包み紙は赤いホイル紙だった。

 フィンに腕を掴まれて馬車まで歩く、その間フィンはいつものニッコリで私はできるだけ悲しい顔を心掛けた。門にルークが居て私の顔を見て不安そうな表情から悲しい表情になった。

 そして黙ったまま三人で馬車に乗り込む。ハアっとフィンと私はため息をつきフィンは私を抱き寄せた。


「あーとりあえず俺の考えていた大仕事終わったなぁ。あああ、シャロンの温もり、香り、柔らかさどんなけ我慢してたか。」


 と優しく何度もキスをされる。ルークは絶句しているが。


「拒否しないって事は記憶が全てあるんやね。良かった。」


 また安心したように抱きしめてくれた。


「どうして来てくれたの?」


「あのさ俺、生き返ってすぐに考えてん、一度失敗した道筋は二度目も失敗するって。だから全然違う道を作りにきた。」


「違う道?それが処刑じゃなくて流刑?」


「流刑?」


 ルークが繰り返す。


「そう。一度入れば二度と出られないヌーンの街はピッタリやん。それに王はチョコレートが大好き。」


「王のチョコレート、赤い紙だった。」


「うん、俺の親父とルークの親父が王様だけに特別に最高級の市場に出回らないチョコレートをどうぞって。だから王の使いが買い付けに来る時は赤を渡す。とんでもない値段で。殆ど買いに来ないし依存してないって思ってたけどまあ軽くしてたんやろうね。」


「そうね。」


「とにかくシャーロットの屋敷に戻ろか。」


「ええ。」



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