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20、変化


 ベッドから起きて窓を開けると庭のテラスにパジャマ姿のケネスが座っているのが見えたので食堂で紅茶をいれて持っていく。


「おはよう、物凄く早起きね。紅茶よ。」


「おはよう。紅茶…シャーロットは紅茶をマグカップにいれないしポットを持ってくる、きっとティーセットも。」


 細かい奴だなぁ。紅茶を受け取りながらケネスが私も座れるように席をずれる。


「そうね。」


「昨日はありがとう。」


 紅茶をテーブルに置いてブランケットを自分とケネスの膝にかけて座り紅茶の入ったマグカップを持つ。マグカップの方が良くない?たくさん飲めるし。


「いいえ、どういたしまして。」


「あれからずっと考えていたんだ。ん、味は美味しい。」


 ケネスが紅茶を一口飲んで話す。味はってなんだ。


「なに?」


「僕とデイビッドは結局、子供の頃から今までずっと変われなかったんだと思う。君の変化を認めなかった。僕達は自分自身の考えを通して君を見て、君が自分達の思う通りにならない時は僕達のシャーロットを押し付けて特異な行動を許さなかった。だから君をずっと苦しめていたんだ。」


 そんなケネス自身が苦しそうに話している。


「そう。」


 ケネスが私を見ないので私もケネスを見ずに相槌をうつ。


「だから僕に何も教えてくれなかった。だけど何故そうなったのか理由は僕自身にたくさんあったのにそれを鑑みずまた君のせいにした。」


「うん。」


「僕は…変われないまま。今となっては君に愛されていたのかさえ分からなくなってしまった。」


「…。」


「あの処刑は本当に不当なものだった。それでも結果として僕達の前から消え、全てのしがらみを切った今の君が幸せならこれで良かったのかもしれないと少なくとも僕はそう思っている。」


「記憶が消えた私には分からないけど、記憶があってもなくても王家から離れる事は幸せだったと思う。」


「そうだね。僕もそう思うよ。」


 私達は紅茶が冷めるまで二人で庭を眺めていた。



「さあそろそろ中に入りましょう。朝食を作らないと。」


「ああ、手伝うよ。ルークはまだ起きてこないのか?」


 ケネスがマグカップとブランケットを持ってくれたので私も自分のマグカップだけ持って立つ。


「まだ早いし、なるべく早起きはしなくていいって言ってあるの。」


「元執事の彼には厳しい話だ。」


 クスクスと本当に可笑しそうに笑っている。


「もっとダラダラしたら良いのに。」


 ルークは少し働き過ぎだ。


「君は得意そうだ。」


「ぶっ。」


 とばすぞは堪えた。


「ぶ?」


「さあ早く行きましょ。」


 考え込んで立ち止まっているケネスを置いて食堂に向かう。


「ぶ?」



「貴方は本当に不器用ね。」


 サンドイッチを切ってもらっても失敗するしスープの味付けも酷い。


「仕方ないだろ。こういう事は全て他人に任せてきた。得意ではないから。」


 当然だという態度が可笑しくて許してしまう。


「そう、じゃあサラダを作って。フルーツのサラダで食材は全部切ってあるから混ぜて3つに分けておいて。」


 ヨーグルトサラダなので大丈夫であろう。ふと見ると横に居る私を嬉しそうに見ている。


「何?」


「ああ。こうしていると新婚夫婦のようだ。」


「何言ってんの?」


「ずっと気になっていたんだが口が悪くないか?」


 いけないいけない。地が出てしまう。でも横に並んで料理してるだけなのに、何を言ってるんだ?


「耳が悪いのではないかしら。」


「君は本当に酷いなぁ。」


「手が止まってる!」


「ハイハイ。」


「ケネス貴方ずっとここに居るつもりなの?」


 そういえばもう結構この家に居る気がする。居着く気か?


「君は本当に酷いな。僕に居てほしくないって事かな?」


「正直、どっちでもいい。」


「こら!」


 怒っているというより寂しそうだ。


「冗談よ。子供達も喜んでいるし何より私も勉強を教えてもらえるしずっと居てもいいわ。」


「君は本当に…。」


「でももっと家の手伝いをしなさいね。」


「君もね。」


「私はいいの。お兄ちゃんに蝶よ花よで育てられてるから。」


「何だそれずるいな。」


「ふふふ。さあお兄ちゃんを呼んできて。多分、起きてるけど気を遣って私達を二人にしてた筈だから。」


「分かった。じゃあもう少し二人でいよう。」


「じゃあ私が呼びに行くわ。」


 テラスに朝食を準備したのでケネスを置いて中に戻った。



「お兄ちゃんはお姉ちゃんが好きなの?」


 今時のお子さんはすごい進んでるね。


「そうだよ。」


 そうなの?


「じゃあ結婚するの?」


 ケネスに凄い事を聞いている。私はびっくりして絶句してしまった。


「それは分からないなぁ。でもお姉ちゃんの嫌な事はしたくないんだ。」


「しないし、だったら後ろをついて歩かないで。」


「お兄ちゃんは先生なの?」


「先生ではないよ、でも僕に教えられる事なら何でも答えるからね。」


 だったら質問してみよう。


「どうして後ろをついて来るの?」


 ちらっと私を見て無視しやがった。


「お姉ちゃんはお兄ちゃんが嫌いなの?」


「どうしてそう思うのかな?」


「どうして貴方が答えるのかな?」


「だってお兄ちゃんについてきてほしくないって言ってるよ。」


「言ってるよ。」


「ああ、照れてるんだよ。」


 んな訳ねーだろ。


「神父さん、ケネスが皆に絵本を読んでくれるそうなのでお昼寝の準備に行きます。」


「あっシャロン待って。」


「わーい、今日はこれがいい。」

「だめだよ!今日はこっち!」


「ケネス君ありがとうございます。」


 私はケネスを見てニヤリと笑う。ケネスは少し悔しそうにでも嬉しそうに笑っていた。


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