韓国の侵攻
戦闘が始まる5月3日の4時までは、特にやる事がなかった。
人型にしても艦船にしても、テストプレイで使った機体と、それ以外に量産機しか使えない。
量産機はバランス型のノーカスタム機体で、主に階級が曹長までの人が乗る事になるものだ。
今回、宇宙で戦闘が始まってからの話になるのだが、死んだら即時(24時間後)復帰の場合全てのプレイヤーは訓練兵からのスタートとなる。
或いはこれからゲームを始める人もそうだ。
訓練兵から曹長の階級の間は、乗れる人型は限られる。
全てこの量産機だ。
艦船ももちろん操作できない。
少尉以上になって初めて好きな機体をカスタマイズできるようになるのだ。
当然2人乗り機もそれまで乗れない。
そして量産期はスタンダードなバランス型というだけでなく、操作性も幾分悪い。
強い人が死んで訓練兵から始めたとして、いきなり強く戦えたら困るから、あまり強くならないように調整されているようなのだ。
しかし利点もあって、バランス型ながら装甲は防御型並みに強い。
つまり、上手い人が乗っても敵を蹴散らすような戦いはできないが、無茶をしなければ生き残りやすい仕様にしてあるのだ。
まあ今回もプレイヤーキルは減点ポイントが大きいらしいので殺される心配はさほど無いわけだが、大将以上をやってしまうのは問題がない。
それと艦船破壊はもちろんオッケーだ。
そんなわけで、機体をカスタマイズしたり整備したり研究ももちろん、戦闘以外にやる事はほとんどない。
俺の場合は中将という事で部隊編成は必要だが、俺の乗る旗艦以外に艦船は2艦しかないし、宇宙での戦いはまだ先‥‥
それでももうすぐ5月3日の午前4時だ。
退屈だった時間はもうすぐ終わるかもしれない。
時間と同時に攻めてくる国があるのかどうかは分からないが、俺たちは一応準備をしていた。
和也「少し寝たとはいえ、この時間はやはり眠いな」
陽菜「祝日で学校無いから別にいいんだけど、なんだか変な感じだね」
陽菜はこんな真夜中だというのに、俺の部屋に泊まりに来ている。
年頃の娘が男の部屋に泊まりにくるってのは何かしら考えたくもなるのだが、まあそんな雰囲気はまるでなかった。
ゲームの方が楽しみすぎて、とりあえずその辺りの事はゲームで優勝してから考える事にしよう。
陽菜と一緒にいるだけでも楽しいしな。
さて時計は4時になった。
ゲームが更新される。
少しレイアウトが変わったが、それ以外特に何も変わりがなかった。
和也「どうする?とりあえず人型に乗って待機でもしておくか?」
陽菜「うん、それで5時まで何も無かったらとりあえず寝たいかも」
一応言っておくが、陽菜が言う『寝たい』は、本当の意味での寝たいだからな。
和也「まあパソコンとゲームをそのままにして寝ても大丈夫だろう。敵襲があればアラームが知らせてくれるだろうし」
陽菜「だよね。ジークさんとかずっと起きてたりするのかな」
和也「流石に今日は起きてるんだろうなぁ。各大将もきっと起きてるだろうし、俺も部隊の面子には連絡入れておこうかな」
そんな事を話していたら、突然月読命大将からの通信が入った。
月読命「みんなー!元気にやっとるかね。とりあえずこれから何ヶ月かは、師団部隊関係なく、ただ基地と研究機関、工場の防衛だけだ!好きにやってくれたまへ」
和也「相変わらずテンション高いな月読命は。じゃあ俺も通信入れておくか」
カッチ「カッチ部隊の皆さんおはよう!月読命の言う通りで、俺は特に何も言う事がない。数ヶ月は慣れる為の時間かな!」
俺が通信を送ると、幼子先輩やえり先生などからの通信が返ってきた。
どうやらみんなこの時間にONしているようだ。
ようやく本格的にゲームスタートだからね。
とりあえずやるよな。
しかし既に30分は過ぎているだろうか。
全く何も起こる気配がない。
そりゃそうか。
とりあえず攻めるよりも守る方が今は作戦としては良い。
よっぽど何かないと攻めてくるわけがないのだ。
和也「何もなさそうだし、寝るか」
陽菜「う、うん‥‥大丈夫だよぉ~‥‥」
既に陽菜はコントローラーを持ったままウトウトしている。
その顔が妙にかわいい。
もう起こすのもかわいそうだし、寝ても大丈夫だろう。
後は明日だ。
そう思った俺は、月読命師団全員に対して一旦落ちるよメッセージを送ろうとした。
しかしその時、敵襲を告げる警戒音が鳴り響いた。
夜中にこの音を聞くのは、少し怖いものがあった。
陽菜もびっくりして目を覚ました。
陽菜「な、なに?火事?」
和也「いや、敵襲みたいだぞ」
俺は言いながら、既に人型を発進させていた。
ジーク「韓国が攻撃してきたはw」
韓国か。
かなりレベルの高いユーザーが揃っているという噂で、正直最初からあまり戦いたくはない国だ。
しかし韓国は何故か日本に対してライバル意識が強く、しかも地理的に近い事もあり、韓国が攻めてくる事は想定される一つの可能性として考えられていた。
月読命「ひゃっほーい!出撃可能なヤツはでちゃってw俺はちょっと強すぎプレイヤーなので、量産機で出撃しちゃうぜ!」
天照皇大神「わたしも でちゃう よ わわわ、どうするの久弥くーん」
月読命「こら、本名さらすんでないマイハニーよ」
天照皇大神「だってぇー うわっ!人型がバクハツしてるよ!」
月読命「いや違う!それテレビが火を噴いているだけだからって、なんだとー!!」
相変わらずこの2人は楽しそうだな。
みんな知っているのだが、月読命と天照皇大神は恋人同士のようなのだ。
そして前回は天照皇大神が大将をやっていて、このノリで月読命が仕切っていたんだよな。
和也「しかし、師団チャットでこれはないだろ」
陽菜「た、楽しそうな人たちだね」
そうなんだよな。
この楽しさがなんか仲間を増やしていて、気が付いたら優勝していたのだ。
そんな師団チャットが行われている中、俺達は出撃していて敵の機影を既にとらえていた。
和也「では、いっちょ暴れますか」
陽菜「うん、頑張るよー」
俺はビームライフルで最初の一発を放った。
戦闘は両軍入り乱れての大戦となっていた。
そして流石に韓国、そう簡単な相手ではない。
日本なら佐官クラスのプレイヤーがゴロゴロいた。
それでもなんとか守れているのは、ジーク師団に移動したあの4名が尋常じゃない戦いをしているおかげだろう。
和也「ソロ機であの戦い、マジで何者だよ」
陽菜「夢さんとカズミンさんね。でも両方にアライヴさんは勝ってるんだよ」
和也「おいおい、マジかよ。この前一生くんと戦ったけど、もしかしてソロの方が強いのか?」
陽菜「慣れてないのもあると思うけど、少なくともあの人たちくらいの戦いはするよ」
俺は一体どれだけ凄い人に勝てると思っていたのだろうか。
知らないって怖いなと思った。
しかしそれだけ強い仲間がいても、敵はほぼ全軍上げて攻めてきている。
まさかこんな大攻勢をしかけてくるとは思わなかったし、こちらはこの時参加していない人も多々いるようだ。
ここでいきなり施設を破壊されたら、おそらく数日の遅れが出るだろう。
トップで宇宙に上がるのは現実的にかなり難しくなるのではないだろうか。
和也「紫陽花師団とサイファ師団、それにビューティフルベル師団の面子がほとんどいない気がするんだけど」
陽菜「どうしてかなぁ。紫陽花師団はともかく、他は24時間戦えそうな人たちが揃っていると思うんだけど」
そうなのだ。
俺もどういう人がいるのか陽菜に一通り聞いていたのだが、名前が出てきた面子がほとんど見つけられない。
今戦っているのは、主にジーク元帥軍(ジーク師団)と月読命師団、そして美菜斗師団が少し見える程度である。
和也「普通に考えて、これはジークの支持があったという事かな」
陽菜「うん、とりあえずこの時間はこれだけの人たちで守れるとみているのかも」
和也「確かに、呼び出そうと思えば何かしら準備していると思うし、呼び出さないって事はやれるとみているのかな」
それにしてもこの戦い、守る方が不利だ。
要塞戦では完全に守る方が有利なんだけど、これは作戦の見直しも必要かもしれない。
戦いは延々と続いていた。
流石に俺も疲れてきた。
時刻は既に朝の8時を回っていた。
そんな中でもドリームとカズミン、そして一生くんの機体はパフォーマンスを落とす事なく戦っている。
もう1人の今日子って人も問題なく、完全に場慣れしていると言った所か。
和也「あの今日子って人もソロ機だな。それに群青、疾風って人もなかなか凄い」
陽菜「今日子さんはサイファ軍のエースだからね。群青さんと疾風さんは四天王って言われている中の二人だよ」
和也「ああ、そう言ってたな。しかしそろそろ手が疲れてヤバいな。どこかで一度休憩したいものだ」
陽菜「それをさせない為の韓国の総攻撃なんだろうね。ジークさんどうするつもりなんだろう」
なんとかここまで施設は無傷で守り通している。
しかしこのままでは正直守れる自信がなかった。
そんな時だった。
なんとなく友軍が増えてきているような気がした。
陽菜「あっ!紫苑さんだ!ダイスケさんもいる!」
和也「おっ!上杉も来たか。どうやら他の師団メンバーが助けに来たようだ」
ジーク「そろそろ交代しよう。今まで守ってくれていたプレイヤーは一旦引いて寝るなりしてくれ。あとは任せたぞ紫苑よ。」
紫苑「(^0^)b」
ドリーム「よろしくねー!」
アライヴ「紫苑さん頼みます」
みんなこの戦闘の中余裕で軍チャット(全員チャット)で挨拶していた。
軍チャットは、日本軍全員で会話ができる通信だ。
俺は流石に少し恥ずかしいと感じてしまう。
師団チャットは同じ師団、部隊チャットは同じ部隊、登録チャットは登録者だけで使える通信である。
階級などで条件を付ける事も可能で、まあ通信方法は色々あるわけだが、軍チャットだけはなんだかあまりする勇気がなかった。
ちなみに軍チャットの発信は将官のみに設定してあるようで、一応俺は使えるわけだが、今回も何も言わなかった。
和也「じゃあ、とりあえず寝るか」
陽菜「うん。12時くらいに起きて、ご飯食べてから再開する方向かな」
俺達は基地に帰投した。
モニター画面左上には、師団チャット通信で、月読命からメッセージが入っていた。
月読命「13時に戻ってくるぞぉ~!」
『了解』と返事を返してから俺達は眠りについた。




