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宇宙の絆Ⅲ  作者: 秋華(秋山 華道)
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日中戦争と新要塞アルテミス

この所ゲームは落ち着いていた。

中央エリアは変わらず、地球はモンゴル、月はアメリカが持っているが、そこに攻撃を仕掛ける国はいない。

第1エリアはアメリカとオーストラリアが時々小競り合いはするものの、シンガポールと南アフリカの有人要塞がアメリカに落とされ滅亡してからは大きな動きはない。

第2エリアは相変わらずインドと中国が小競り合いをしているが、有人要塞の持ち主が変わるような大きな変化はなかった。

第3エリアはロシアとドイツが割と激しい戦いをしていたが、こちらも有人要塞の持ち主が変わるような変化はない。

第5エリアはイギリスが完全に掌握していた。

イギリスはそれから、第6エリアのトルコとイランを叩いた後、中国へ軽くちょっかいを出してはいたものの、それも大きなものではなかった。

で、第4エリアの我らが日本は、中国とにらみ合ったまま何もしない時が流れているだけだった。

さてそんな時に、いつものように美菜斗経由で、ロシアから同盟の話が入ってきた。


美菜斗「ドイツとの戦いに専念したいロシアが、我々に同盟の話を持ってきました」

ジーク「今俺達が同盟を結んでいない国は、オーストラリア、中国、そしてロシアだけだ。ここでロシアとの同盟だが、俺達にとってもかなり良い話ではあるな。」

サイファ「だな。そうなれば対中国に専念できる」

グリード「新要塞のイベントでかなり弱っているし、今中国との戦いに専念できれば、中国を屠る(ほふる)所まで行けるかもしれねぇぞ!」

ビューティフルベル「中国はインドと小競り合いを続けているし、そうなればイギリスも本格的に中国への攻撃を開始するかもしれない」

サイファ「インドやイギリスに話をして、共に中国を叩くとなれば、今なら勝利できるだろうな」

ジーク「問題はオーストラリアだな。これをチャンスと見てこちらに攻めてくる可能性が考えられる。」

美菜斗「それならアメリカにも話を通しておけばどうでしょうか。そんな事があればオーストラリアを攻めてもらうのです。それでなくてもアメリカを相手にしている時点で、そう簡単には動けないでしょう」

ジーク「確かにな。よし、美菜斗はロシアとの同盟をまとめてくれ。そしてその後、中国との全面戦争に入る!」

サイファ「一応インドやイギリス、アメリカにも話を通しておいてもらおう。勝てる可能性は少しでも上げておくに限る」

美菜斗「分かりました。とりあえずロシアと同盟を結び、それができたら他にも話を通しておく事にします」


ロシアとの同盟から、いよいよ中国との全面戦争に入る事が決まった。

正直今の中国相手なら、ガチでやれば俺達の勝ちはゆるぎないだろう。

そこにインドやイギリスが味方として参戦するなら、何も不安はないはずだ。

ただ、本当に中国はこの程度で終わる国だろうか。

確かにベテルギウス要塞での戦いで、俺達は完勝した。

でもあれは運が良かった。

中国軍は連戦の中疲れていただろうし、物量作戦が通用しない要塞内での戦いに持って行けたからだ。

しかし今度は違うだろう。

あらゆる所での戦闘が考えられるし、準備もしてくるはずだ。

俺はそう思っていたわけだが‥‥


和也「かなりヌルゲーだなw」

えり「そりゃな。中国は師団が2つしかないわけで。日本、インド、イギリス、の3国を相手にするのは難しいだろ」

陽菜「師団の部隊を別の場所で戦わせる事もできるけど、ステータス面で幾分不利だしね」

リナ「それにいくらプレイヤー数が多くてもぉ~、コロニーを落とされ続ければねぇ~」

太郎「戦力を維持できないわけですね。流石リナさんです!」

和也「まあ、そうなんだけど‥‥」


俺達はみんなで部屋に集まって今日もゲームをしているわけだが、俺の横に座ってゲームをしている小さな子供が、凄い指さばきでコントローラーを操作しているのが見える。

分かると思うが、この子供は坂本直也選手の息子さんだ。

今日は本人が来られないという事でこの直幸くんを置いていったのだが、それは信じられない戦いぶりだ。

子供は呑み込みが早いと言われてはいるが、正直そんなレベルではない。

産まれた時からゲームをしているのではないかと思うくらいだ。

今時の子供は、生まれた時から家にゲーム機のある環境に育つわけで、もしかしたらこれくらいできるようになって当然なのかもしれない。

その辺り子育てしたことの無い俺には分からないが、おそらくそんなレベルを超えているように感じた。


リナ「本当に上手いよねぇ~それに最初に始めた頃よりもドンドン上手くなってるよぉ~」

太郎「まだまだですよ。僕から見たら赤子も同然です!」

和也「いやまあ確かに太郎くんの方が強いだろうけど、正直数日中に俺は勝てなくなりそうだ」


もちろんソロプレイという話でだけど、この成長スピードは尋常ではない。

確か父親である坂本選手は、マラソンランナーとしての素質は凄かったそうだ。

走り始めて半年と経たない内に日本記録を上回る走りをしたという話がある。

おそらくはまれば凄い成長を見せる血統なのだろうと思った。


和也「それにしても‥‥」


確かに直幸くんの活躍はあるし(今の所はほぼ関係ないけどw)、3国相手に戦う不利もあるが、こうも師団が減る事がデメリットになるとは思わなかった。

いくらプレイヤーが多くて戦力がナンバーワンでも、ちまちまとコロニーを落とされていけば徐々に戦力を維持できなくなる。

戦力さえあれば、数さえあれば守り切れると思っていたが、師団から離れてステータスボーナスを得られないと、そのわずかな差で負ける事が多くなる。

同じ力量であればその差が勝敗を分ける。

特に量産機を操るプレイヤーに力量差はほとんどないわけだから、数を頼りに戦っていた中国には大きな痛手だったようだ。

これはかなり近い内に中国に勝てる、そう感じていた。


夏休みが半分を過ぎた頃、中国は追い詰められていた。

思った以上に中国は脆かった。

第2エリアは中国が最も死守したいエリアであるが、ほぼ元帥軍のみでの守りである事から、既にインドにトリマン、レグルスと有人要塞を奪われる結果となっていた。

第6エリアにあったスコーピオン要塞はイギリスに奪われ、キャンサー要塞は現在インドとイギリスの挟撃に合っている。

第4エリアのアルニラム要塞は日本が奪い、残る中国の有人要塞は第2エリアのキャンサー要塞と新第六要塞『リゲル』だけとなっていた。

この調子で行けば、来週の日曜日8月16日には中国を滅亡させる事ができるかもしれない。

堅実に戦ったとしても、おそらく夏休み中には勝利できそうな状況だった。

ただ、思った以上にインドやイギリスにしてやられている感はあった。


和也「イギリスにスコーピオン要塞を取られたのは誤算だったよな」

陽菜「それにいつの間にかイギリスがアメリカに次ぐ勢力にまでなっているよね」

太郎「流石大英帝国と言った所でしょうか」

リナ「だよねぇ~いちお~スコーピオン要塞は第4エリア外ではあるけれどぉ~此処は日本が抑えておきたかったよねぇ~」


スコーピオン要塞は一応第6エリアに存在している。

しかし通り抜け可能なデブリ帯のすぐ近くにあり、第4エリアに存在している有人要塞とも言えるのだ。

今はまだイギリスは敵ではなく同盟国だが、いずれ敵になった時に厄介だし、状況によっては中国の次はイギリスという事になる可能性もある。


陽菜「それにキャンサー要塞までイギリスに取られるような事になれば、中国よりも厄介な相手になる事は間違いないわよね」

和也「ああ。ゲーム人口こそそんなに多くはないけど、eスポーツ界のランカーがゴロゴロいるからな」

太郎「中国の関羽よりも上ですか?」

えり「中国の関羽は上位にいるけど、項羽、劉邦、ドラゴンはランカーじゃない」

和也「他の三人はeスポーツメインじゃなかったり新人だったりだから、実力的にはランカーレベルだって話だけど」

太郎「まあ僕が戦った感想を言えば、関羽以外はドリームやカズミンレベルかそれ以下かな。実際負けてたし。それに関羽には僕が勝った」


まあそうなのだ。

確かに要塞内という関羽には不利な条件だったとは言え、太郎くんは関羽に勝っている。

関羽が力を発揮できる所で戦ったとしても、太郎くんならおそらく五分に戦えただろう。

一生くんとどっちが強いかは分からないけれど、日本が全く戦えない相手ではなかった。

しかしイギリスには、アメリカ同様それ以上の使い手が何人かいるという話だ。

eスポーツ界のランカーとはそういう存在なのだ。

何にしても、もしかしたらもうすぐそういった連中と戦う時が近づいているかもしれない、という事だ。


さて俺達は今日も中国のコロニーや要塞を攻略していた。

そんな時、軍チャットでジークのメッセージが流れてきた。


ジーク「みんないるか?ちょっと面白い事になったから報告だw」

サイファ「面白い事?」

グリード「なんだなんだ?」


俺達は戦いながら続きを待った。


和也「面白い事ねぇ‥‥面白いって事は良い情報だろうな」

リナ「案外悪い情報かもよぉ~」


ジーク「カッチが前に管理を頼んできたあの要塞なんだがな、アレ、有人要塞に進化するぞw」

サイファ「マジか?w」

ビューティフルベル「私たちが前に防衛したあの要塞がねぇ」


それは宇宙に上がって間もなくの頃だった。

なんとなく攻め取った要塞が、凄く特殊な作りをしていた。

指令室までの通路がぐるぐると渦巻き状になっており、かなり守りが強固な要塞だった。

要塞番号も第777777要塞となっており、これは間違いなく何かあると思ってジークに管理を頼んでいた要塞だ。


紫陽花「アブサルートさんの話によれば、今すぐにでも有人要塞化が可能らしいわよ。で、どうするの?」

ジーク「別にそのまま放置する意味も無いし、とりあえず有人要塞化していいんじゃねぇか?」


はたしてどうだろうか。

今のまま置いておく手もある。

今は特に資源が足りないという状況でもないし、ただの要塞ならわざわざ攻め取ろうとはしてこない。

資源が足りなくなってきたりしてからでも遅くはないのではないだろうか。

或いは要塞のままの方が守りやすいという可能性もある。

ただ既に、将官限定の軍チャットとは言え、多くの人にこのメッセージが伝わったわけで、隠しておいてももう意味がないだろう。


紫陽花「ではアブサルートさんに伝えておきますね」

グリード「どうなるか楽しみだな!」


さて、どんな要塞が誕生するのか。

俺達は戦闘を続けながらも、モニター左上に出るメッセージに注目していた。

しばらくするとメッセージが流れた。


『アルテミス要塞誕生』


月の女神アルテミスの名前がついた要塞。

場所は地球を中心に月と真逆の位置にあった。


ジーク「凄いぞこの要塞。艦船換算で80の生産力があるぞw」

サイファ「月の2倍、通常の要塞の8倍の生産力だな」

グリード「これはヤバいな」

ビューティフルベル「確認してみないと分からないけど、名前からして守りやすい有人要塞かもしれないわね」

ジーク「早速調べてみるか。これはかなり優勝に近づいたんじゃねぇか。」


確かにアルテミス要塞が手に入ったのは、そこだけを見れば大きな戦力アップにはなったのだろう。

しかしこれは、波乱への幕開けとなったのだった。

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