美鈴の戦い
この日俺達カッチ旅団は、ビューティフルベル師団と共同で、ロシアの要塞攻略へと出撃していた。
最近ロシアが中央エリアに本格進出を始め、主に韓国と日本の拠点を攻撃していた。
そしてこのまま第4エリアへの進出を目論んでいるという話だ。
弱った所に攻撃をする、当然の戦略だった。
日本としてはそれでもロシアを相手に本格的な争いは避けたいと思っていたが、中央エリアの第777777要塞への侵攻もありそうだという事で、その前に叩こうという話になった。
それでビューティフルベル師団が指名されたわけだけど、勝率が95%くらいしか見込めないから、100%にするためにうちに共闘要請がきた。
他は忙しくて無理らしい。
しかしたった5%、それも本人のどれだけ正確なのか分からない分析の結果で、そこまで確実を期すかねぇ。
ただ月読命以外の士官メンバーは乗り気で(月読命も本当は嫌じゃないと思う)、俺達は目的地へと向かっていた。
ちなみに新たに士官仲間に加わった爽真(太郎くん)は、どうしてもじぇにぃ(幼子先輩)と同じ旗艦に乗りたいという事で、クシナダヒメには悪いけどこちらで頑張ってもらうという話になった。
カッチ「今日はまあ、死なない程度に適当に楽しむぞ!俺達はオマケだからな」
爽真「何言ってるですか。僕がいるんだから嫌でも3倍は活躍しますよ」
月読命「それは無理だな。俺が足を引っ張って3倍弱くなるからな」
天照皇大神「流石久弥くんかっこいい~」
クシナダヒメ「全然格好良くないです‥‥」
まあ今日もいつもの調子で俺達は戦場に向かうのだった。
さて到着して戦闘が始まると、太郎くんは言った通りの活躍を見せた。
そしてマジで最もコストの高い重火力機を最大パワーまでカスタマイズして、なんというかまるで動きの速い関取のようだった。
その名前が何とも不似合いな『ラブリナ』だから、正直見ていてちょっと笑ってしまった。
和也「この機体に幼子先輩の名前を付けるとか、なんだか笑っちまった。身バレするだろwしかも一生くんとネーミングセンスが一緒!」
陽菜「だったら私たちの機体も名前変更しようか?」
和也「それは色々と問題があるだろう。俺の気持ちとしてはそうしたい所だけど‥‥」
陽菜「そうしたいんだ?」
和也「き、気持ちとしてはね」
今日も陽菜と話しながら、楽しい戦闘をしていた。
和也「しかし太郎くんも強いけど、あのチサトって人も強いな。何より4本腕を使っているのが驚く」
陽菜「夢さんとドリームダストを組んでゲーム界のアイドル的存在。高橋知里さんね」
和也「あの機体で太郎くんにも負けていない活躍をしているぞ」
4本腕の人型は、ゲーム仕様としては存在している。
しかし使っている人はほとんど見た事がない。
何故なら弱い、というか、まともに扱える人がいないからだ。
4本腕の操作には2通りの方法がある。
一つは2本ずつの腕に分けて切り替えて操作する方法だ。
ソードとライフルを持ちかえる代わりに、腕を切り替えるだけで済むわけで、メリットは確かにある。
しかしデメリットもあって、4本腕はコストが高く、更に腕の重みの分機体のスピードが落ちるのだ。
スピードは戦闘では重要な要素なわけで、結果この方法で4本腕を使う人はほぼいない。
そもそもソードとライフルの持ちかえ自体やる人は少ない。
腕にビーム砲が取り付けられる仕様で、威力は少し落ちるものの、切り替え無しで遠近対応は可能だからだ。
この方法でわざわざ4本腕を使う意味はまるでないという結論に至る。
もう一つは、コントローラーを2つ使う、或いは4本腕用の専用コントローラーを使う方法だ。
当然操作が段違いに難しくなる。
コントローラーを2つ使うのはそもそも2人乗り機の為のものである。
更に2人乗り機を使っている人も少ない。
俺達は2人乗り機を使っているが、それはあくまでプレイスタイルなど別に理由もあるからだ。
常に一緒に居られる人も少なければ、別の機体2機で戦う方が大抵強いわけで、2人乗り機をワザワザ選ぶメリットはほとんどない。
幼子先輩とえり先生も、テストプレイこそ2人乗り機を使っていたが、宇宙に出てからは別の機体を使っている。
4本腕を1人で操るなら専用コントローラーという事になるわけだが、人間の腕は2本しかなく、感覚的にも物理的にも操作なんてまともにできない。
一生くんレベルでも完全にコントロールは無理だろう。
それに攻撃パーツを増やすなら、フェンネルという武器がある。
普通のソードやライフルと比べると威力は落ちるが、操作という面では4本腕とほぼ同じだ。
切り替えて使うわけだしね。
更に操作条件を設定してオートマチックでも動かせるわけで、断然4本腕よりも使いやすいしメリットがある。
そのフェンネルでさえ『戦闘に邪魔だから』という理由でほとんど使われていないのだ。
4本腕の人型を使う人がいないのは当然と言えた。
和也「どうやって操作してるんだろうな」
陽菜「聞いた話だと、マクロを組んでコントロールを簡略化処理しているって」
和也「そんな事できるのか?」
陽菜「コントローラーも自社製造の試作機で、ドライバにマクロ処理を組み込んでいるとか。意味がよく分からないんだけど」
和也「確かチサトは魔女って呼ばれているんだったな」
本当に魔女だ。
こんなプレイヤーもいるんだと感心した。
しかしチサトよりも驚いたのが、ビューティフルベル師団の団長、本名『美鈴』という人だった。
和也「美鈴って団長、すげえな」
俺は戦闘中に流れるチャット通信画面を見ていて感心していた。
ビューティフルベル「キララとまことは前出すぎ、今は引いて!チリは予定通り上手く行ってる?」
キララ「えー!ブーブー」
誠「これで死んでも本望じゃ!」
チサト「問題ないよぉ~」
ビューティフルベル「ダイスケ!後方から3機行ったわよ。ウララ悪いけど後輩を助けてあげて」
ダイスケ「了解!チサト前よろしく!」
ウララ「うん。美鈴!正面にナンバー3お願い」
チサト「問題ないよぉ~」
ビューティフルベル「ナンバー3了解!達也!その辺りはもういいわ!キララとまことを止めて!」
スター「なんで俺が!子守りは嫌じゃ!」
ビューティフルベル「あんじゅ!今日子がいないからってさぼらないの!気合よ気合!」
あんじゅ「はぁ~やりますよーだ!」
和也「なんでここまで色々と見られるんだろうな。しかも瞬時に答えをだして支持している」
陽菜「流石ゲームプロ集団だね」
和也「それに楽しそうなんだよな。俺達も確かに楽しんでやっているけど、この人たちは戦いを楽しんでるっていうか」
陽菜「私はどっちも楽しいよ。だから今の旅団でも良いと思う」
和也「まあそうだな。無理に美鈴をマネするつもりはないけど、俺達には俺達の何かやり方があるんじゃないかと、少し考えさせられるよ」
ビューティフルベル「カッチ!そっちにも5機行ったわよ。爽真、あなたはちょっと敵倒しすぎ。手を抜いていいわよ」
カッチ「あ、了解!」
爽真「だって敵弱いんですよ!」
ビューティフルベル「ふふふ、確かにあなたの相手はエース級じゃないと無理そうね」
カッチ「爽真は強すぎるな。ただそれ以上に美鈴の戦い方にビックリだよ」
爽真「どうも」
ビューティフルベル「ありがと!あなたもチョビとのコンビが息ピッタリすぎてビックリするわ」
カッチ「一緒にゲームやってもう1年以上になるからね」
ビューティフルベル「あらいいわね。こら達也!見てるわよ!さぼらないで!」
和也「そうだよな。俺達のコンビって最強に息があってるよな」
陽菜「本当にね。なんでか分かっちゃうんだよね」
和也「俺もだ。そしてきっと俺達にしかできない戦いがあるような気がする」
ビューティフルベル「そろそろ時間よ!おそらく右のハッチが開くと思うから、爽真に行って欲しいんだけど」
爽真「なんでそろそろハッチが開くってわかるんですか?」
ビューティフルベル「2回ほど再起不能の人型、いっぺんに回収していったでしょ。で、最初の時タイムを計ったら15分くらいだったの。2回目からそろそろ15分よ」
爽真「そんなの見て計算してたんですか」
ビューティフルベル「ほら動き出した」
爽真「なんで僕なんですか?」
ビューティフルベル「あなたのその武装、近づける敵はいないわよ」
爽真「確かにそうですね‥‥では行ってきます」
和也「こりゃ逆アブサルートだな」
陽菜「あんなのに侵入されたら、中の人達はたまったもんじゃないわね‥‥」
和也「美鈴さんおそロシア。対ロシア戦だけに」
陽菜「‥‥」
この日の戦いは、美鈴の言っていた通り、100%の勝利だった。
俺の心には、美鈴の戦い方がずっと残っていた。
さて、俺達がロシアに勝利し帰投する頃、美菜斗がまた面白い話を持ってきていた。
美菜斗「韓国がまた同盟したいそうですよ‥‥」
サイファ「流石にな‥‥」
グリード「よくそんな事が言えるな‥‥」
和也「確かに最近ロシアと戦ったりして、結果的には韓国も助けていると言えるけどさ」
陽菜「どうもロシアに同盟断られたらしいよ。一緒に日本を倒そうなんて言って」
流石にこの日の会議は、満場一致で『却下』だった。
しかしこの後も日本がロシアと戦っている以上、結果的には韓国を助ける日々が続くのだった。
ちなみに中国はあの大戦以来おとなしい。
その理由がもう間もなく分かる事を、この時の俺は知る由もなかった。




