アウストラリス要塞攻略
宇宙に上がった俺たちは、まず中国の出方を見ていた。
中国も第3エリア攻略に向かうなら、俺達は第4にする必要があると考えたからだ。
しかしなかなか中国が動かない。
もうすぐロシアが上がってくるだろうから、日本としては早く決めて動き出したかった。
サイファ「このままじゃ埒があかない。第4に決めて行動するべきだ」
ジーク「サイファは第4にこだわるなw何か思う所でもあるのか?」
サイファ「美菜斗さんが先に第1エリアに向かった。おそらくあの人なら有人要塞の一つくらいは確保すると思う。そしてそれは第4有人要塞『フォーマルハウト』な気がするんだよ」
ジーク「なるほど。重要な第2第3よりも、第4第5は手薄になるだろうからな。」
サイファ「それにやっぱり俺は守りを考える。資源はなんとかなると思うが、マップは変えられない」
紫苑「俺もサイファに同意だ(^0^)」
珍しく紫苑が口をはさんできた。
ジークは確かに大した戦略家ではあるのだろうが、このゲームで勝っているのはサイファや紫苑だ。
ここはそちらに乗ってみるのも良いかもしれない。
紫苑「それにな、おそらくロシアが第3を狙っている」
すると既に別行動している美菜斗も軍の全体チャットに入ってきた。
美菜斗「正解です。だから僕は第1エリアの第3有人要塞『ポルックス』をなんとか攻略しようと思っていましが、フォーマルハウト要塞にしてくれた方が楽です。どっちでもいいですが、早く決めてくれると助かります」
ジーク「サイファと紫苑に乗るのはシャクだが、まあ勝つためにはそちらが良さそうだ。作戦を変更し、今から第4エリア第1有人要塞『アルタイル』に向かう!」
サイファ「了解!」
紫苑「(^0^)/」
ビューティフルベル「了解」
こうしてジーク元帥軍プラス3師団は、第4エリアに向かうのだった。
和也「で、俺たちは既に第6エリアの第1有人要塞『アンタレス』攻略に出撃なんだけどね」
陽菜「でも中国はどうしちゃったんだろう」
和也「日本の出方をうかがっているようには感じないんだけどなぁ。もっと別な事で迷っていた気がする」
陽菜「そうこうしている間にロシアが上がってきたよ」
和也「中国はロシアにも先を越されるんじゃないか?」
思った通り、先に動き出したのはロシアだった。
陽菜「ロシアは迷わず第3エリアに向かったみたいね」
和也「ロシアは最初から第3狙いだったって事か。もしも日本が第3を選んでいたら、ロシアとの対決だったわけか」
陽菜「中国も動き出したって。えっ?本体は第2エリアへ、2つの師団が第5エリアに舵を切ったらしいよ」
和也「まさか」
中国はどうするつもりだろうか。
第2エリアに向かってインドと対決するのはまあ分かる。
何故第5エリアに向かうのか。
ロシアを避けたかったとか?
案外俺達と同じような師団が単独行動をとっているのかもな。
しかし兵力の分散はあまり良くない。
日本はまあ主な戦力はジーク元帥軍に集まっているし、月読命師団は戦力外だし、美菜斗師団はただ数が多いだけだし、それも大きな問題にはならないだろう。
中国はどうなんだろうか。
人口が多いから大丈夫なんだろうという結論にして、とりあえずは納得しておく事にした。
それから6時間の後、俺達月読命師団はアンタレス要塞を落としていた。
さて順調なのはここまでだった。
どうやら師団から分かれて戦う部隊は、極わずかではあるが、ステータスが落ちるようなのだ。
正確には、上がっていたステータスがゼロになる。
気にするほどではないのだけれど、単純にダメージを蓄積していく要塞攻略戦ではそれが如実に表れる。
特に有人要塞は成否にかかわるレベルだ。
それに俺達にはリアル生活があるわけで、学校にも行かねばならない。
夏休みはいつの間にやら終わっていて、季節は既に秋だ。
文化祭や体育祭とゲーム時間が削られるイベントが目白押しなのだ。
日曜日だというのに何故学校に行かねばならぬのだ!
とはいえ、俺はひそかに存在するゲーム部の部員なわけで‥‥
和也「幼子先輩!ヤバいから早く出撃しなさい」
リナ「えぇ~‥‥さっきぃ~私抜きでも落とせるって言ってたよぉ~」
月読命師団はアンタレス要塞を攻略した後、各部隊分かれて有人要塞攻略へと向かっていた。
俺が目指したのは第4エリア方面の第6エリア第4有人要塞『アウストラリス』だ。
しかし1部隊で落とすには有人要塞というのはなかなか厄介なものでして、とりあえず近くの要塞を落としてから、改めてチャレンジしていた。
そして何度も時間が足りずに撤退を余儀なくされていたわけでイライラも募る。
部隊を分けての有人要塞の攻略は戦略としては間違いだったようだ。
それでも時間をかけて少しずつ削っていけばいずれは落とせる。
だが既に第6エリアにも後から上がってきた国のプレイヤーがやってきているし、なんとか今日中に落としたい所だった。
和也「あとから来た国に美味しい所もっていかれちゃマズイんよ!」
リナ「そんなピリピリしないでよぉ~しょうがないなぁ~後でたこ焼きおごってねぇ~」
和也「はいはい、気が向いたらね!」
全く、何故俺がたこ焼きをおごらねばならない。
この勝負は俺たちが優勝して賞金を貰う為なんだろうが。
ちなみに賞金総額の発表はまだだ。
宇宙の拠点が全て埋まり、地球の管轄が決まった所で発表される事になっている。
確か初期のが10億、前回のが20億だったから、今回は30億ではないかという期待もされている。
ただ、このゲームへの関心度はかなり予想を上回っているようなので、それ以上になる可能性はかなり高い。
和也「今日中に落とすよ」
リナ「もう大丈夫なのさぁ~」
和也「いやいや、こちとら量産機なんだから、かなり大変だっちゅーの!」
そうなのだ。
今は学校で陽菜と一緒にプレイできないから、俺は量産機でソロ出撃している。
まあこの後陽菜は我が校の文化祭に来る予定なので、それからはまたスサノオで暴れまわる予定だ。
えり「あー量産機かっこいいなー‥‥私も乗りたいなー」
和也「えり先生勝手な事言わないで!宇宙戦が本格的に始まるまでは我慢して」
なんかこの養護教諭の女性、どうも先生らしくないからタメ口で話してしまう。
えり先生の方も気にしていないみたいだからいいんだけどね。
しばらくすると陽菜がやってきて、俺はすぐに人型を乗り換えて再び出撃した。
幼子先輩やえり先生の不真面目プレイに振り回されつつも、なんとか帰宅時間までにはアウストラリス要塞を落とす事ができた。
和也「はぁはぁはぁ‥‥疲れた‥‥」
陽菜「今日は楽しかったね。じぇにぃちゃんと光合成さんと一緒だと、かっちゃんも生き生きしているし」
和也「そ、そうかぁ?‥‥はぁはぁ‥‥」
陽菜「ゲームはやっぱり楽しくなくちゃだね!」
確かにそうだ。
もし優勝すれば、おそらくそれなりの金が俺の所にも入ってくるのだろう。
でもだからと言ってピリピリしてプレイしていても面白くない。
この所焦りもあったし、部隊長なんて慣れない事をしているもんだから、俺、ヤバかったかもしれない。
正直、部隊にリアル友達が3人もいた事に救われた気がした。
家に帰ってからも一応状況を確認した。
第6エリアの有人要塞、最初に落としたアンタレス要塞と、俺の落としたアウストラリス要塞、そして月読命本隊が第2『ミルファク』を落としていたが、第3『ウェズン』はブラジルに落とされていた。
第5『アルカイド』はまだ残っていたが、ここに向かった部隊では落とせないだろう。
とりあえず3つ取れただけでも上々か。
俺は今日は休みにする事を陽菜に告げて、疲れた体を癒す為に直ぐに眠るのだった。