006
あの震えた紫の唇、おそらく何かの毒に当てられたわね。
放っておいて死んでしまうもの寝覚めが悪いし、治療するしかないわ。
でもあの技をここでするのはちょっと。。。
マリーナは自分が毒を盛られた場合に備えて、自分の唾液の成分を分析して、もし毒であれば解毒剤を自動で生成する魔法を開発していた。
貴族のお茶会などは常におしとやかに振る舞わなければならないので、もしもの場合にも静かに自分の唾液を飲むだけで対処するためのものである。
それを誰かのために使おうとすると、対象者の唾液を口に含み、自分の唾液を飲ませるという、とんでもない方法になってしまう。
「これはもう助かりそうにないな」
「教会の治癒師って呼んでもなかなか来ないことで有名だしな。」
「キレイな身なりをしているし、遺体を騎士団まで届けるともしかすると謝礼がもらえるかもしれないな。」
倒れた男性を取り囲む民衆は既に助けることを諦めている様子で、中には不謹慎なことを言う輩もいた。
これはまずいわね。仕方ない。
マリーナは男性に近づいて跪き、持っていたマントをかぶせると、自分もマントに入り込んで、手早く例の方法で解毒をした。
よしうまくいったわ。
マントをとって立ち上がると男性は意識を取り戻しており、民衆は大変驚きつつも、立ち去っていった。
マリーナも立ち去ろうと立ち上がると、赤い顔をした男性に手を掴まれているのであった。