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マリーナの雑貨店は、今日もモリソン、クロウを中心に平常に営業している。
最近は、お客さんの長蛇の列を解消するために、入店に予約枠を設けたり、初級ポーションをハルトの喫茶店と一緒に作ったオープンカフェで提供したりといろんな工夫を凝らしていた。
最近のクロウの悩みの種は、いつの間にかできていた私設ファンクラブだった。中性的な魅力を持つクロウだけでなく、見目が良い販売スタッフには固定客が付いていて、いつも握手をせがまれたり、貢物をいただいたりする。好意をもってもらうのは皆嬉しいが、ストーカーじみた行動をする者も中にはいて、物がなくなったり、帰り道につけられたりと嫌なこともある。
クロウは早くそのことをマリーナに相談したいが、マリーナは宮廷魔法師団に体験入団中なので、相談できないでいた。
「マリーナ姉さんに会いたいな。無茶してないか心配だな。」
一人で呟くクロウであった。
◆◆◆◆◆
その頃マリーナは。
カイン殿下から子爵継承の内諾書を受け取り、正式な継承は領に何らかの貢献をしてからだと添えられてあった。
爵位継承はどうでもいいけど、この内諾書があればワルシャワ領に怪しまれずに調査が出来そうね。
早速ワルシャワ領に向かいましょうか。リアム先輩が少し心配だしね。
戦闘集団はしばらく結界で隔離しておくとしましょう。
膨大な魔力を練り、転移の魔法を発動する。
リアムをターゲットに転移すると、なぜか薄暗い悪臭漂う部屋に出た。
周りを見ると、腕を縛られ、傷だらけのリアムが横たわっているのだった。