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調査を進めると、領民から徴収した税のうち3割くらいが領を統治するワルシャワ家の運営費に当てられていた。
でも、ワルシャワ家の運営に必要なお金は、きちんとした明細付きで別途申請されている。
さらに謎の運営費が計上され始めたのはおよそ5年前で、明細付きの運営費は10年前と現在でほとんど変化がない。
これ、完全に使途不明金だよね。
ソニア様にこのことを説明すると、驚きながらもとても褒められた。
お金がどこに消えたかを探したいと申し出ると、さすがに危ないからと先輩のリアムさんと一緒に領に赴くこととなった。
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「ここがワルシャワ領か。のどかな場所だね。」
リアムさんは20代後半のどこかマイペースな人で、身だしなみにはあまり頓着しないが素材はよさそうなタイプの男性である。
度数のきつい眼鏡をかけているので、あまり素顔は分からないが。
観光を楽しんでいそうなリアムと共にマリーナは馬車に乗って、ワルシャワ領を訪れた。
監査権を使って領主に面会することはできるが、警戒されるといろいろ調査がしにくいので、まずは5年前頃の変化を調べることにする。
「街の人に聞き込みをしましょうか。」
「じゃあついでに美味しいお店を探そうか。」
「なんでそうなるんです?」
「お食事処には人が集まるだろう?だから情報もたくさん集まっているはずだ。」
「なるほどです!」
行き交う人に声をかけ美味しいお店を聞くと、チカレッタハットというお店が人気店らしい。
お昼は定食屋、夜は居酒屋として開いているそうだ。
チキン定食が評判らしい。是非とも食べてみたい。
2人がチカレッタハットに到着すると、お店の入り口で店主らしき人がメニュー表を見て頭を抱えていた。