002
立ち止まっていても仕方ないわ。
マリーナは屋敷に背を向け、歩き出した。
マリーナには前世の記憶がある。地球の日本という国で社畜として過ごした経験が。パソコンと言う箱に向かって、ひたすら文章作成や計算をする日々だった。
私の魔法と前世の知識を組み合わせたら何かできるかしら?
その前にまずは生活するためにお金を稼がないと。
向かった先は魔術ギルド。魔法が必要なあらゆる依頼が寄せられる独立機関である。
山の麓にあるその機関は、真っ黒な壁と大きな猫の模様が描かれたその外観から、黒猫ギルドと呼ばれていた。
黒猫ギルドの扉を開けると、正面に受付、右手に依頼ボードがあった。
マリーナは依頼ボードから1つの紙を剥がすと、受付に持っていった。
「この依頼を受けたいのだけれど」
受付の中年の女性はその紙を見て、鼻で笑った。
「お前さんみたいな若いお嬢ちゃんが、壊れた壁の撤去なんかできるのかい?ギルドレベルはいくつなんだ?」
初めてギルドを訪れたこと、そのためレベルを測ったことがないことを伝えると、奥の部屋に案内された。
そこには透明の丸い玉が数え切れないほど置いてあって、受付の女性はそのうち3つを掴んで持ってきた。
「さてレベルを測ろうか」