ドラゴン様の乳母?
「絶滅危惧種?」
冒険者ギルドのお姉さんからの言葉に、リーダーが固まってる。
「そうです。その翡翠色の幼竜は、絶滅危惧種として指定されている種で、万一殺めたり傷つければ、莫大な罰金が科せられます。母竜はどうしたのですか?」
僕の足元に寄り添う小さな竜に視線を固定したまま、お姉さんが問う。
「お、俺達は知らない。母竜はいなかった。迷い竜で、森から勝手についてきたんだ!」
慌てるリーダーは僕を指さして叫んだ。
「こいつが原因だ! 俺達とは関係ない。荷物運びで雇った臨時なだけで、仲間じゃねぇし」
ッえ――――?
こうして僕は、パーティーからあっさりと切り捨てられた。
確かに丈夫さ以外取り柄がなくて、荷物運び兼火起こし担当という雑役だったけど。数年越しが臨時扱い?
そして取り残された僕と、なぜか僕から離れない幼竜は、ギルド職員に取り囲まれ、その後竜共々城に連行された。
翡翠色の竜は、その身が万能薬の材料になるとかで、過去の乱獲で数が激減。
今では国で大切に保護されていた。
大きくなれば尾の肉をとることも可能。
竜は城で育てよう。そう決定されたからだ。
幼竜は僕以外に懐かなかった。
それで僕はドラゴン様の乳母役として雇用された。
肩書、乳母?
せめて世話係と呼んで欲しい。性別、男なんだから。見て判んない?
お城の隅、馬小屋横が僕たちの住まい。
僕が食べられないような立派なお肉をドラゴン様は毎日召し上がる。
羨望の目で眺めていると、肉を分けてくれた。
ドラゴン様はお優しい。
でもね、ネズミの肉は要らないよ。そっちの鶏肉の方が良い。
そんな日々が続き。
突然、ドラゴン様が襲われた。相手は城の兵隊。
王様が病気になり、成長を待たずに肉が必要になったらしい。
泣き叫ぶドラゴン様を連れて、僕達は逃げ出した。
だってあまりにも勝手じゃない?
もう走れないと思うくらい逃げに逃げ、森の手前まで来た時、城からの追手は空より飛来した立派な体躯の成竜に阻まれた。
竜はドラゴン様の父親だと名乗った。
その背に乗り込み、上空に逃れて飛ぶこと暫し。
彼が言う。
「お前、いい加減に自分で飛んだらどうだ?」
そんな無茶な。ドラゴン様の翼はまだこんなに小さい。
そう返すと、呆れた目で見られた。
「娘のことじゃない。お前だ。その翼は飾りか?」
? 何を言ってるんだろう。僕の両親は冒険者で人間なのに。
噛み合わない会話を交わした後、14年来の謎が氷解した。
それでうちに竜の卵の殻があったのか!
お読みいただきありがとうございました。
"僕"は、竜が懐いて、火起こし係で、性別不明で、お肉好きで翼がある上、家に竜の卵の殻があったらしいです。いや、自分で気づいて?!
もしよかったら、ご感想・評価などなどお待ちしておりますv
★★★秋の桜子様よりイラストをいただきました――!! 多謝!!★★★
(2020年12月)
★★★個人的な所感★★★
(2021年4月)
さて、他にも「なろうラジオ大賞2」に参加中。
気が向かれましたら、のぞいてやってください(^v^)/
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