第0話
どうも、初めまして。空遊佐というものです。書きたいという欲が出て書いたものです。まだまだ小説は不慣れなので拙い部分もありますが、どうか楽しめたら幸いです。
どんな者にも平等に願いを持つ権利はある。
けれども中々にありふれて残酷ではあるが、叶えたい願いほど実現には困難で険しい道のりがあるものだ。中には決して叶えることが出来ない願いだってある。
それでも生まれ持った才能を活かすものならば、環境が恵まれているものであるなら、物語の登場人物であるならば、それこそ主人公として舞台に上がる事を台本で運命付けられた様な存在であるならば、そんな困難や不可能すらも持ち前の能力や信念、或いは狂信、もしかしたら度し難い幸運で否応無く実現してしまうのだろう。
しかし往々にして願いは大多数には諦められるものなのだ。相応の立場に沿った願いに鞍替えして、表に吐き出さずに奥底に厳重に鍵をかけて過ごしてしまうのが大多数だから、
そんな宝箱に入ったものを取り出すために、彼は何処にでも居るのだ。
◇ ◇ ◇
「フーン、フンフフフンフーン...ルルルルルルルール、ルーラーラーラ、ふーむ」
男は軽快に鼻歌を口ずさむ。どうやら即興で作ったものらしく、リズムと音程は誰が聞いても適当なソレと断言出来る代物。現に、しっくり来なかった事もあり途中で飽きて考え事をする素振りをしながら鼻歌をやめた。
「むー...よっ、はっ、ほいっと...ふむ」
次に何処から取り出したか、杖を取り出して両手で振り回す。こちらは鼻歌とは打って変わって、まるでサーカスの曲芸の如く巧みに操ってみせる。両手でクルクル、腰に杖を当てクルクル、首に当ててクルクル、背中に乗せてクルクル、まるで生き物かの様に杖を全身で回した後、男は空高く杖を回したままで放り飛ばした。
しかし、鮮やかな一芸を済ませた割に男の顔は微笑みこそ浮かべど、まだ物足りない様だ。考える素振りを見せたままである。
数秒考えた後、男は意を決したかの様にさてと頷き、それと同時に放り投げられた杖が夥しい数落ちている髑髏の1つごと地面に突き刺さる。
「ではそろそろ行きますかね。次の場所に」
生きとし生けるものが全く居ない凄惨な大地におよそ似つかわしくない革靴で、まるで髑髏など意に求めないかの様に踏み進めながら男は心の底からの笑みを浮かべていた。
◇ ◇ ◇
ある者は彼を手を差し伸べる天使と呼ぶ。
ある者は彼を誘惑で取り込む悪魔と呼ぶ。
どんな願いも叶えてくれる男が次に齎すものは果たして
救済か、
幸福か、
破滅か、
堕落か、
それは願いを叶えた後にしかわからない────