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悪霊の国  作者: 田中
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同じ人として

リベットの領主ベアルの城でエネルギーの枯渇したギル達は出された食事を貪る様に食べていた。

彼らは一口食べるごとに顔色を回復させていった。

その様子をベアルは憎々し気に、ケネスは呆れた様子で眺めていた。


「リューからは討伐隊が来たと聞きましたが……?」

「討伐隊!?……フハハッ、これでようやくリベットも……グッ、頭が……」

「ベアル様、民も幸せそうですし、税収も上がっているのですからいい加減諦めましょうよ……」

「ググッ……それがあの娘の指示だというのが気に入らんのだ」


ベアルは街が活気に溢れ以前より豊かになった事は喜んでいたが、それが自分に奴隷紋を刻んだ娘の企てだという事が認められずにいた。


ルシアは取り込んだ各領で、奴隷商は奴隷を解放し別の商売をするのなら追放や財産の没収はしないと触れを出させていた。

その事で囚われていた奴隷達が街に溢れ、結果、経済を回す効果をもたらした。


ただ解放の際、支度金として所有していた奴隷に金を持たせろとした為、破産する者が相次いだ。

その為、触れを受け入れ奴隷を解放した者には領主達が補償する形で援助を決めた。


勿論、各領主達は援助する事に渋面を示したが、そもそも異種族を奴隷にする様仕向けたのはコリンで、それを商売とする事を容認したのは国を動かしていた彼ら上級貴族だ。


「自腹を切って責任を取ってもらうわ」


森が領を飲み込んだ時にルシアはそう言って彼らを黙らせた。

ちなみに触れに従わなかったり奴隷を連れ逃亡しようとした者達は、奴隷を保護しドートンから追放した。


森に飲み込まれる前に逃げ出した者達については特に追ったりはしていない。

ルシアはトアラという国を飲み込むつもりだったし、現在のトアラは周辺国との関係は良好とは呼べない。

奴隷商が国外へ逃げるのも難しい筈だ。


「んぐッ……ふぅ、奴らは人を超えた動きをしていたが、異界人という感じではなかったな……アルダーから何か連絡はないのか?」


肉を飲み込みギルの複製体の一人が代表して答える。


「アルダーさん達には引き続き王都で探りを入れてもらっていますが、彼女、上級騎士の任を解かれたそうで……王城内で直接情報を集めるというのは難しいみたいです。今は街の様子を調査してもらっています」


「そうか……奴らの身に着けていた甲冑は妙に生物……昆虫の外殻の様だった。手紙にあったバレラという女、生きているのではないか?」


国境を守る兵士達にはデッドとバレラの事は情報が入るたび伝える様にしていた。

八つの目に虫の様な手足という所からギルはバレラを連想したのだろう。


「……かもしれません。とにかく一度王都へ行こうと思います」

「ふむ、ではこれを持って一度デレアへ戻れ」


ギルは煤けた腕輪をルシアに差し出した。


「こちらの人間の持つ術の再現はほぼ問題は無い。ただエルオニアが付加した加速は使うと肉体を破壊する。正直、我々以外が使える代物では無い」

「そうですか……」


視線を伏せたルシアにギルは笑みを浮かべる。


「聞いていないのか?それは試作品だそうだ。説明では使用状況が記録されると聞いている。エルオニアとカービンなら上手く改良するさ」

「……そうですね」


拡大を続ける森、それに伴い拡張する領土。

更には引き入れた異界人達の活動等、情報は多岐に渡りその全貌を知る為のは分身が出来るルシアでも難しかった。


また、ルシアは彼らの活動を特に束縛はしていなかった。

無論、犯罪行為は認めていないがそれ以外については自由を認めていた。


その方が発展が早いとルシアは日本での学生達の活動を眺める内に気付いていたからだ。

特に文化部等は教師があれこれ口を出すよりも、放任した方が面白い物を作っていた。


その面白い物の一つがギル達が身に着けていた力の腕輪だ。

カービンが術を分析し、エルオニアが設計した素養の無い物でも術が使える腕輪なのだが、報告書はルシアにはチンプンカンプンで理解する事を途中で放棄してしまっていた。


帰ったら噛み砕いて説明してもらおう。

腕輪を受け取りながらルシアはそんな事を考えていた。


「じゃあ、腕輪を持って一度帰ります。先生達はどうしますか?」

「回復するまでこの城にいてもいいか?飯も旨いし」

「分かりました。ベアル、先生達を置いて行っていいかしら?」


「貴様、いつか殺して……クッ……」

「懲りない人ねぇ……ケネス、あとはお願いね」

「はい、分かりました……ルシアさん、ベアル様の奴隷紋は何時……?」


ルシアは顎に手を当てると小首をかしげた。


「そうねぇ……ベアルが貴族とか関係無くなったらかしら」

「なんだと、どういう意味だ!?」


「領民を数字じゃ無くて人として見なさいな。アナタと同じ様に息をしてご飯を食べて生きている人間として……それが出来たらその奴隷紋、消してあげる」


「人としてだと……」

「ええ、貴族だろうが平民だろうが、皆、アナタと同じ様に感情を持って生きてる。よく考えてみて……じゃあね」


そう言うとルシアはその場から揺らめく様にして消えた。





王都に帰還したダグはバレラの娘レアーナに報告と戦力の増強を打診していた。


「だからよぉ、王都にいる才能のある奴を片っ端から兵隊に変えようぜ」

「……一兵士がそれだけの力を持っているのなら、それも一考する価値はありますね……ですが、どう才能を調べるのです?まさか一人一人見ていくのですか?」


「んな、面倒な事はしねぇよ。王都を閉鎖して流通を止める。食糧庫はある程度まとまってるから焼き払うのは簡単だ。暫くすりゃ飢えて血みどろの争いが起こる筈だ」


「……それで生き残った個体を兵士にするのですね……貴方、悪魔ですか?」

「強い奴が誰か一番簡単に分かるだろ?」


ダグはそう言うと残忍な笑みを浮かべた。

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