表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪霊の国  作者: 田中
88/118

荊棘の契約

闘技場に足を踏み入れたダグは、歩みを進めながら右手にナイフを抜き白く巨大な甲虫の前に立った。

甲虫は腰から下は蜘蛛、胴体から伸びた上半身は人の形に似ていた。


「なぁ、圧倒的って言っていたが壊していいのか?」


ダグは少女に視線を向けそう問いかける。


「構いません」

「あっそ」


向き直り見上げた虫が口を開く。


「舐めた口を利く小僧だ。他の者と同様、輪切りにしてくれる」

「へぇ、喋れんだ」


白い虫は無言で右手を振り上げる。

それと同時に、ダグは相手の懐に飛び込んだ。

腹の下をすり抜けながら丸い腹部をナイフで切り裂き、取り出した小瓶を突き入れる。


「グッ!?」


怯んだ隙を見逃さずダグは跳躍し、背中側から腹と胴体の隙間に腰から抜いた剣の様な物を差し入れた。


「グォオオオ!!おのれ、ちょこまかと!!」


腹から体液を垂れ流しながら巨大な甲虫は腕を振り、ダグを振り落とそうと藻掻いた。

しかしダグは剣を差し入れた瞬間にはすでに跳躍し虫の頭上を取っていた。


「おせぇ」

「グガッ!!」


落下の勢いに任せて脳天にナイフを突き立てる。

そのまま首に足を絡め、太腿の鞘から引き抜いた棒状の短剣を八つの目に次々と突き立てた。


「ギギッ……」


足を解き、空中で体を捻りながら着地するとそのまま距離を取った。


「おのれぇ……許さん……ゆる」


ドンッ!と破裂音が響き虫の言葉は遮られた。

丸い腹が弾け飛び、一瞬遅れて胴体に刺さった剣が刀身を爆発させる。


「チッ、同発はしくじったか……」


下半身が吹き飛んだ甲虫は荒い息を突いて喘いでいた。


「ナイフは返してもらうぞ」

「ギッ」


ダグは目に突き立てた短剣を引き抜き血振りして鞘に仕舞うと、頭に刺さった短剣の柄に手を掛け、その頭を思い切り捻って回転させた。

バリバリと何かが砕ける音が闘技場に響く。


上半身が動かなくなったのを確認してから、捻って内部を掻き回す様にナイフを抜く。


三十秒ほどで、ダグが言ったように甲虫は完全に壊れていた。


「こんなんで、どうよ?」


横に降り立った少女にダグは壊れた虫を見ながら問いかける。


「これほど動ける人間は初めて見ました。あの様に弾ける武器も……」

「ありゃ、南部の鉱山で手に入れた爆薬だ。んでどうなんだよ」

「合格です。是非、私達の仲間に……」

「あぁ?仲間ぁ?勘違いするなよ、俺は仲間になりたくて戦ったんじゃねぇ。俺が欲しいのは力だけだ」


少女はダグを八つの目で見上げた。

ダグも少女を二つの目で見降ろす。


「……貴方は力を、我々は共闘者を手に入れる……という事ですか?」

「そうだ。力をくれるんなら、手伝ってやる。こいつはあくまで公平な取引だ。もし俺を配下にしようってんなら取引は無しだ」

「分かりました。その条件で結構です」

「契約成立だな」


ダグは少女に手を差し出した。

小さな外骨格に覆われた手がそれを握り返す。


「私はレアーナ。女王バレラの後を継いだ新たな女王です」

「ダグだ……もし裏切ったらその瞬間に頭を吹き飛ばすぜ」

「いいでしょう。貴方も裏切ったなら、首が胴体と繋がっていられるとは思わないで下さい」


レアーナの言葉にダグは獰猛な笑みを返した。

レアーナも赤い唇に薄い笑みを浮かべた。


チラリとレアーナが崩した壁に目をやると、薄汚れたフードの小男は姿を消していた。


「金、三枚。儲け損ねたな」


その日から青髪の元警備兵ダグは、トアラ王国最後の将として生きる事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ