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悪霊の国  作者: 田中
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豊穣と繁栄の女神

ポルとリラを引き合わせたオロはデレアの町に飛んだ。

町の上空へ転移すると領主の屋敷に向かう。

ロイドに案内され向かった執務室でルシアと、虹色の髪のトーガに似た服を着た美女が話していた。

オロに気付いた美女が彼に声を掛ける。


「おや、オロではないか、王都での仕事は終わったのかえ?」

「まだですよ。リゼリア様」

「なんじゃ、超能力というても大したことないのう」

「万能そうに見えて万能じゃないですから」


引きつった笑みを浮かべつつ、オロはリゼリアと呼んだ美女に答えた。

彼女は南東の祠で封じられていた太古の神だ。

存在自体はルシアが飲み込んだヴァルディオと似ているが、彼女は生贄では無く大地の力と豊作を願った人の祈りの集合体だった。


コリンが祭壇を血で汚した事で人の怨嗟をその身に取り込んでしまったが、それはルシアが綺麗に吸い取ってしまった。

その後、妙にルシアを気に入り、依り代ごとデレアについて来てしまったのだ。

ちなみに依り代はギンたち兎人の村に置かれている。

豊穣と繁栄の女神だそうだから、祈れば豊作になるかも知れない。


「それでどうしたのオロ、王都で何かあった?」

「まあね。リラ君の連れ合いを見つけた。土小人の男で名前はポル。取り敢えず鉱山に置いて来たから後で会いに行ってよ」

「リラの連れ合い……そう、それは良かった……まだ何かあるの?」


「コリンがね……ポル君は他人の持つ能力と力の大きさを探れるんだ。それを使って大きな力を持つ異種族と平民を探し出して異界人を使って殺すつもりだった。ポル君を救出して一応計画は阻止したけどね」


「平民ってコリンの基準じゃ国民でしょう?」


コリンの言う平民とは人間の一般庶民の筈だ。

それは普通、国が一番守られねばならない者ではないのか。


「少しアルダー君の心を覗いたんだけど……」

「乙女の心を覗くとは、お主、マナーがなっておらんのう……もしや妾の心も無遠慮に覗いたりしておらぬじゃろうな?」

「仕事を円滑に進める為だったんです。許してくださいよ。それとリゼリア様の御心に興味はありません」

「ぬっ……そこまでハッキリ言われると、それはそれで不愉快じゃな。特別に許してやる、ほれ、覗くがよい」


リゼリアはトーガの胸元を少しはだけ、豊かな胸を強調するように突き出した。


「……結構です」

「リゼリア、駄目よ。オロはアルダーさんといい感じなんだから」

「ぬぅ……つまらんのう。昔は信者たちと逢瀬を楽しんだものじゃが」

「はぁ、おおらかな時代だったんですね……」

「フフッ、妾とまぐわうと子宝に恵まれるのじゃ。じゃから男はもちろん女子からも引っ張りだこだったのじゃ」


リゼリアは胸の下で腕を交差させ得意そうな笑みを浮かべた。

腕を交差する事で胸が押し上げられより迫力を増す。


「話を戻してもいいかな?」

「お願いするわ」

「なんじゃ、二人とも妾を無視するでない!子作りは人の繁栄には欠かせぬ事なのじゃぞ!」


リゼリアは腕を振り上げバタバタと地団駄を踏んだ。


「もう、困った女神様ねぇ……後で聞いてあげるから、今は黙っていなさい」

「むぅ……分かったのじゃ」


ルシアに見つめられたリゼリアは頬を膨らませたが、最終的には素直に従った。


「続けるよ。アルダー君は国を一部の人間が私物化してしまうんじゃないかと恐れてた。今までは民衆の中に力を持つ人がいたから、軍隊を持っていても貴族達は反乱を恐れて派手な事は出来なかったみたいだ」


「なるほどね。術の力を銃に置き換えれば分かりやすいわね……平民が丸腰なら反抗する者を一方的に殺せる」

「うん、民衆が為政者に何も言えなくなるね」

「それについてアルダーさんのコリンに対する心証はどうだった?」


オロは顔を顰めルシアの問いに答えた。


「アルダー君はコリンに狂気を感じていた。その事で彼女は強い焦りと不安を抱いたみたいだ。……これは僕の直感だけどコリンはきっと諦めないと思うよ」


「力を持つ人を消す事を止めないって事?」

「うん、思い出してごらんよ。僕や君を呼び込んだ時、コリンの部下に力の大きさを探れる人がいたろう?」

「……そう言えばいたわね」


確かにタカシとこの世界に呼び込まれた時、コリンに叱責されていた男がいた気がする。

あの男の力を使えば国にいる大きな力の持ち主は探せるという事か。


「ねぇ、オロ。その人も攫って来てよ」

「いいけど……僕が知る限り、力を探れる人はピンキリだけど結構王城にいたよ。一人二人攫っても……」

「駄目か……」


どうしよう。先手を打って仕掛けるか。

各地の祠で力を得た事であの二人の異界人には勝てるかも知れない。

だが戦いで大きな被害が出るだろう。出来るならそれは避けたい。


ルシアがやりたいのは仕組みを変える事であって、戦争ではなくなっていた。


「押して駄目なら引いてみよ、じゃな」

「リゼリア……どういう事?」

「話を聞いていたが、そのコリンと申す者がしたいのは力ある者の抹殺じゃろう?」


「そうですけど……」

「ならば、ポルという土小人の力で、先にこちらがその力ある者を見つけこの地に集めればよい。一か所に集めればルシアの力で守れるじゃろう?守るなら妾も力を貸せるしのう」


右手を頭の上で立て、左手をお腹の前で指先を下に向ける。

そんな奇妙なポーズをとってリゼリアは二人を見た。


「なんなのそれ?」

「妾が人に慈悲を与える時の姿じゃ」


そう言えば依り代はこんなポーズを取っていた。

太古の人が考えた神の姿なのだろう。


「……そうなんだ」

「フフッ、神々しいであろう。こんな事も出来るのじゃぞ!」


リゼリアが笑みを浮かべると虹色の髪が広がりキラキラと七色の光を放った。


「うっ、目がチカチカする」

「リゼリア、眩しいからやめなさい」

「……分かったのじゃ。……おかしいのう、信者には大うけだったのじゃが」


少しシュンとしたリゼリアをよそに、ルシアはオロに目を向けた。


「取り敢えず鉱山に向かいましょうか?オロ、協力してくれる」

「もちろん。この国の人は未来のお客さんだからね」

「妾も連れて行って欲しいのじゃ。人の世がどのように変わったか見てみたいからのう」

「急に光ったりしないなら付いて来てもいいわよ」

「光らないのじゃ。約束するのじゃ」


リゼリアは両腕を直角に上に曲げ掌をこちらに向けた。


「ちなみにそれは何なの?」

「信者たちが使っていた嘘偽りは申さぬという誓いの姿じゃ!両手を見せる事で心に隠し事が無い事を表しておるのじゃ!」


真剣な顔のリゼリアにルシアとオロは思わず渇いた笑いを浮かべた。

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