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悪霊の国  作者: 田中
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どんな世界でも報・連・相は大事

ロイドの肩と腰を癒した翌朝、早速ルシアはリベットに向かう事にした。

ロイドには説明したし分身も残していくので問題は無いだろう。

そう考え見送りのメル達を引き連れ屋敷から出た所でブラッドと出くわした。


「おはようルシア、早いな。町に行くのか?」

「いえ、これからリベットに行こうかと思ってるの」

「何?町はどうするんだ?大体何故言わない?」

「それはね」


ルシアがチラリと屋敷の玄関を見ると、扉が開いて分身たちが姿を見せた。


「なッ!?」

「こういう事よ」


姿を見せた分身を代表して二番目が答える。


「留守はこの娘たちが守るわ。何かあれば三人のうちの誰かに言って頂戴」

「ん!?んん!?」


ブラッドの視線がオリジナルと分身を行き来する。


「ルシアが四人……話を聞かない娘が四人……」


ブラッドは口をアウアウさせながら視線を巡らせた。


「気持ちは分かるぜ。隊長さんよぉ……」

「滅茶苦茶な人が四人に増えたらブラッドさんの苦労は四倍だもんね」

「大丈夫だブラッド、我々もサポートする」

「そうそう、一人でしょい込む必要はないさ」


「うん、アタシもお手伝いするよ!」

「では私も……」

「クレオは動いちゃ駄目!」

「むぎゅ……」


トゥースを始め異種族の娘たちがブラッドを励まし、便乗したクレオがメルに抱きすくめられて赤面する。

ブラッドはそんな娘たちから視線をルシアに移した。


「……これはお前の術か?」

「まあそんな所」


分身はルシアが学生を脅かす為に編み出した物だった。

どんなに走って逃げても、廊下の角から、明けた扉の先から、逃げ込んだトイレの上から、とにかく様々場所に出現する為には意識が一つでは足りない。

他の霊がどんな方法を使っているのか知らないが、ルシアは意識を分けてそれに対応する事にしたのだ。

人を脅かし怖がらせる為の涙ぐましい努力であった。


努力の方向性とかそんな事は考えてはいけない。

彼女は四十年近く人を怯えさせる事に心血を注いできたのだ。


「みんな私だから誰に言っても大丈夫よ」

「はぁ……お前について一々驚くのは止めよう。それでリベットに行くのはデアンの事でか?」

「それもあるけど今回はメルのお産を看てくれる人を探しに行くの」

「お産?メル、お前子供が出来たのか?……ダルガの子か?」

「何!?本当かメル!?何故言わなかった!?」


メルはブラッドやエルダ達に詰め寄られて、クレオを抱いたまま眉根を寄せた。


「だって本当に赤ちゃんが出来たか分かんなかったし……みんなに心配かけちゃいけないと思って……」

「馬鹿!赤子が出来たなら動きまわちゃ駄目だろう!」

「それで、お産という事は生むつもりなのか?」

「うん」


ブラッドの問いにメルはしっかりと彼の目を見て頷いた。


「ダルガの子だぞ?無理矢理孕まされた子だ。辛くは無いのか?」


メルはクレオを放すと自分のお腹に手を当てた。


「アタシだって好きな人の子供が良かったとは思うよう。……でもね、それでも命だもん。それに父親が誰でもこの赤ちゃんはアタシの赤ちゃんだよう」

「……そうか。メルがそういうなら部外者が何か言うべきではないな。ところでルシア……」

「何かしら?」

「何で報告しないんだ!?報・連・相!!部下にはいつも言ってるがまさか上に言う日が来ようとは!!」


ブラッドは額に青筋を立てルシアに迫った。


「いいか!!たとえ小さな町だとしてもトップが思うがままに動いたら下は混乱するし大迷惑だ!!」

「あのブラッド……」

「口答えするな!!リベットに行くと言ったな!?ではテリーを連れて行け!!」


「えっ?正直足手まといなんだけど……」

「やかましい!!お前一人じゃ何をしてきたか絶対報告しないだろう!?」

「せめてテリーじゃ無くてもっと有能な人を……」

「贅沢を言うな!!この三人を置いて行くんだろう!?という事は仕事が三倍という事じゃないか!!有能な人材等回せるか!!」

「あう……」


溜まっていた物を吐き出したブラッドは腕を組んで深呼吸をした。


「この事はロイドさんは知ってるのか?」

「はい……昨日話しました」

「そうか、お前にしては上出来だ。彼に話していない様ならもう少し説教するところだが、今回は許してやろう」

「すいませんでした……」

「うむ、よく反省するように。では詰め所に向かうぞ」

「はい……」


ブラッドはシュンとなったルシアを引き連れて町へ向かっていった。

のこされた分身も同じようにしょげている。


「凄い怒ってたね」

「だな、あのおっさん人間だからって舐めてたぜ」

「そうだね、迫力だけならルシアなみだったね」


「それよりメルの子はいつ生まれるのさ?」

「それが良くわかんないんだ。ギル先生は子供がいるのは確かだけど専門外だからって……」

「メル様、心配なされなくてもルシア様がきっとなんとかしてくれます!」

「うん、ありがとうクレオ」


メルはクレオの頭を抱いて優しく撫でた。

エルダはその様子を見て笑みを浮かべると、沈んでいるルシア達に声を掛けた。


「それでルシア。我々は何をすればいいのだ?」

「そうだ!ブラッドに法律に詳しい人を紹介してもらわないと!」

「棟梁の所で工事を手伝うの!」

「クレオをギル先生の所へ連れていくわ!」


「……いっぺんに喋るな」


「「「……はい、すいませんでした」」」


エルダの低く怒気のこもった声音にルシアはいっせいに頭を下げた。

それを見てエルダはため息を吐き口を開く。


「手分けして動こう。私は法律に詳しいという男に当たろう。トゥースとカレンは棟梁の所に行ってくれ。リラはクレオについてやれ」


喋るなとは言ったが、エルダの耳は一斉に話したルシアの言葉を聞きとっていたようだ。


「あれ?アタシは?」

「身重なメルは留守番だ」

「平気なんだけどな……」


口を尖らせるメルに近づき頭に手を乗せるとエルダは言った。


「妊娠中はお腹の子の命もお前が預かっている。無理はするな」

「……うん、わかったよ」

「フフッ、いい子だ」


そんな風に話していると、慌てた様子でロイドが駆け出してきた。


「申し訳ございません!気が付いた時にはベッドの中で!」

「ロイドさん、この三人が何をするか詳しく聞いているのか?」

「はい、お聞きしております」

「そうか、メルを除いた四人でこの三人に分散して付く事にした。詳細を説明してくれ」


ロイドは娘たちとションボリしているルシア達を見るとなんと無く事態を察したようだ。


「承知いたしました。ここでは何ですから中でお話しましょう」


苦笑を含んだ微笑みを浮かべると、ロイドは屋敷のドアを開き彼女達に中に入るよう促した。

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