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太陽が昇らない国の物語(仮) 第四部  作者: 岸田龍庵
太陽の試練 大地の試練
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守りたいものと守れなかったもの

完全な「後付け設定」になりましたが、そのまま載せます

【聖都スクード 郊外 オリバー邸】

        

牧場を含む広大な領地の中に立つ邸宅

その一室である客間

与えられた小者の服に着替えて、ようやく落ち着くフレイ

質素な室内に、ほどよくトーンが抑えられた装飾品の数々

師匠の栄光の数々を示す六等星から一等星までの盾が並んでいる。もちろん剣は一本もない

六等星から一等星までの盾を順番に眺めていくフレイ



フレイ:「ぼくが守れたのはなんだったのかな?ぼくはこの盾を手にして、何が守れるんだろう?」

ノック音:(力強いノック音)

フレイ:「どうぞ」 入ってきたのは五等星と四等星の盾を持った騎士が2人

フレイ:「兄さん」

長兄:「まさか、このような形でお前と再会することになるとはなフレイザード」

次兄:「まったく(おろ)かな事をしたものだ。お前ならば出世も早かっただろうに」

黙っているフレイ

長兄:「敵前逃亡とは、お前は我がバステン家の恥だ。だが兄としては弟としてのお前がかわいい。軍事裁判が終わったのなら」

フレイ:「私は裁きを受けるのですか?」

次兄:「そう聞かされている。刑罰が終わったら、また家で暮らせるだろう。お前は馬の扱いもうまいから馬丁(ばてい)にもなれるだろう。家督(かとく)は兄者とで守っていく」

答えないフレイ



長兄:「どうした?馬丁が不満か?」

フレイ:「兄さん達は、その盾で何を守れましたか?」

次兄:「なに?」

フレイ:「その盾で自分が守りたいものは守れましたか?」

長兄:「お前、我が騎士団に守れないものがある、とでもいうのか?」

フレイ:「私は、その盾では守れないものを守りたくて騎士団を辞めたのです」

次兄:「貴様、我々を愚弄(ぐろう)するのもいい加減にしろ!」

長兄:「まあ落ち着け。まだフレイは錯乱(さくらん)しているのだ。体をいたわれよフレイ。後ほどオリバー(きょう)がいらっしゃる。その時は非礼がないようにな。我がバステン家の名誉に関わる」

        


退出するフレイの兄弟

窓の外を見るフレイ

空と雲はいつもと同じ顔をしている

フレイ:「騎士団、家の名誉、出世・・・」

裾をまくるフレイ

ミランがフレイの手首に残した、手形のヤケドの跡。

フレイ:「ミラン・・・」



◆回想シーン

ミランと向かい合っているフレイ

ミラン:「ヤダヤダ!フレイ行かないで。ずっと一緒にいてくれるって約束したじゃない」

フレイ:「ミラン、僕は誰も守れなかったんだ。君もリエルも」

ミラン:「そんなことない!私はここにいるじゃない!」

フレイ:「僕は君の心を守りたかったんだ」

ミラン:「心って?そんなの守るとか守らないとかヘンだよフレイ!体がなくなったら、死んじゃったら心だって守れないじゃない!」

フレイ:「もう一度、騎士としてやり直さないと。今の僕には君を守る資格はないんだ」




ノック音:(控えめな感じ)

ゆっくりとドアが開く

入ってきたのは、控えめなドレスに身を包んだお嬢様

フレイ:「ライラ様・・・」

ライラ:「フレイ様」

()れた瞳でフレイを見つめるライラ

しばし無言で見つめ合う2人

そこにドヤドヤと給仕が入ってくる



ライラ:「お食事にしましょうフレイ様」

てきぱきと準備をする給仕達

並べられた食事はステーキにジャガイモといったもの

長テーブルを挟んでの無言の食事



◆回想シーン

夕焼けの中のベリッシモ号

一尾の丸焼きの焼き魚を一緒にかぶりつくフレイとミラン

口の周りを汚しての笑顔(あふ)れる食事

◆回想シーン終わり




手が止まるフレイ

ライラ:「お気に召しませんか?」

フレイ:「いえ、今の私にはふさわしくないような気がして食が進みません」

ライラ:「では、お酒にしましょうか」

フレイ:「ライラ様?」

ライラ:「ご安心を。父からは許しを得ています」

呼び鈴を鳴らすライラ

やはり給仕がドヤドヤやってきて、酒宴(しゅえん)の支度をする

2人のグラスに白ワインが注がれる

距離を詰めてグラスを合わせる2人

グラスから甲高い空虚(くうきょ)な音が鳴る

白ワインを飲む2人



ライラ:「おいしいですわね」

フレイ:「・・・・」

ライラ:「婚礼はもう少し夏が下がってからにいたしましょうかフレイ様」

フレイ:「婚礼?しかし私はもう」

ライラ:「騎士ではないからもう許嫁(いいなずけ)ではない、とでもおっしゃいますのフレイ様」

フレイ:「それは・・・」

天地がグルグルと回転を初め、そのまま床に倒れ込むフレイ

高価なワイングラスが四散する

するとオリバーを先頭に武装した騎士がドヤドヤと入ってくる



オリバー:「拘束(こうそく)しろ」

左右に命じるオリバー

昏倒(こんとう)したフレイが担ぎ出される

かつての許嫁が連行される様子を無表情で見つめるライラ

オリバー:「別れは済んだかライラ」

娘の肩を抱く父

静かに涙を流すライラ

オリバー:「もうお前が知っている六等星の騎士フレイはいないのだ。忘れろ」

ガシャガシャと音を立てて出て行くオリバー

読了ありがとうございました。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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