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太陽が昇らない国の物語(仮) 第四部  作者: 岸田龍庵
太陽の試練 大地の試練
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滅ぼしたものと滅ぼされたもの

前話に引き続き「たらいの映像」を見ながら対話するスーリヤとセレンです

()()()の映像

 海を()()()()竜、森で暮らすエルフ、山で鍛冶仕事にいそしむドワーフ


スーリヤ:「海はドラゴンが、私たちは『命のゆりかごの森』を、山々は頭の固いドワーフが統治していた。どれもこれも人の手にはなかったんだ。

 そんななかで、あんた達人間は()()()()()()()んだ」

セレン:「失われた流星の騎士も言ってました。人は星に願いを求めたと。でもなぜ星なのです?」



◆たらいの映像

 星の運行を観測する人々。わずかながら暦のようなものも作られている


スーリヤ:「星だけが生き物には関わりのないものだったからさ。

 太陽や月は生き物の暮らしに大きな影響を与えてきた。

 海の生き物は月が合図となって子を産み、陸の生き物は太陽を浴びて力を得ていた。

 でも星はそこまで影響をもっていなかった。

 すべてが支配されていた中で、人は星を見上げて願いを込めた。

 星だけが誰にも支配されていなかったのさ」

セレン:「それで星は人に力を与えた、そういう事ですか?」

スーリヤ:「そういうこと。でも実際に力を与えていたのは星だけじゃない」



◆庵の中で対話するスーリヤとセレン


セレン:「誰です?支配されていた人類に力を与えてくれたのは?」

スーリヤ:「あんたも知っているはずだよ。あんたたちでもあり、かつては私たちでもあった」

セレン:「それは・・・」






【帝都セイクレッド・ガーデン 司教庁 執務室】


神の像に祈りを捧げる預言者アレクサンダー

預言者:「神は争いを好まない。神に寄る人間が神の名の下に争いを起こすのだ」




【スーリヤの庵】


スーリヤ:「そう、もう1人の私たち。私たちはあいつの分身でもあり、あいつそのものでもあるんさ。あんたたちの前にも現れただろう?」

セレン:「すべての闇・・・ですか」

頷くスーリア

スーリヤ:「そう『原初(げんしょ)の闇』とも言うけどね」

セレン:「では、世界に平和をもたらすというのもウソではない」

スーリヤ:「私たちのやり方でいくのか、あいつのやり方でいくのか。それだけさ。

 ただ、どっちが欠けてもダメなんだよ。

 なんといってもあいつは『原初の闇』なんだからね」



◆たらいの映像

創世(そうせい)神話

 闇から太陽が生まれ、太陽が大地を照らしていく

(第一部プロローグより)


セレン:「その『すべての闇』もとい『原初の闇』はなぜ、今になって動き出したのでしょう?」

スーリヤ:「恐らく、世界を作り直すためだろうね」

セレン:「作り直す?」



◆たらいの映像

 太古の世界。恐竜が闊歩(かっぽ)して世界を支配していた時代。

 そこに巨大な爆発が炸裂(さくれつ)して、一瞬にして恐竜の世界が滅び、新しい種族の世界が創世される様子


スーリヤ:「私たちの前は大いなる竜が『司る者』だった。

 竜は大いに繁栄した。

 だが、世界は竜しか住めない世界になってしまったんだ。それを『闇』は嫌ったのだろう」

セレン:「それで滅ぼしたと?」

スーリヤ:「竜は抵抗したんだろう。あっさりこの世界からいなくなった。それこそ、跡形も無くね。

 そして私たちが『司る者』になった。一応支配者になったってこと」


◆庵の中で対話するスーリヤとセレン


セレン:「それでは私たち人間は3番目の『司る者』になるということですか?」

スーリヤ:「私の知っている限りそういうことだね。

 でも本当の所わかりゃしないよ。私たちの前にどれだけ司る者がいたのかわからないんだから。みんないなくなってしまうんだからね」

セレン:「では、私たちの前の『司る者』であるあなたが、滅ばないでいるのはどうしてですか?」

スーリヤ:「(あらが)わなかったんだ。

 私たちの世代で、私だけは抵抗しなかった。

 他のドラゴンやドワーフは抵抗したらしいけどね。

 そりゃ激しい戦争だった。前の支配者を滅ぼすための戦争だったね」

セレン:「だからドラゴンやドワーフは伝承でしか存在しないのですね」

スーリヤ:「そういうこと。でも、たまにあるだろう?」

セレン:「何がです?」

スーリヤ:「滅びてしまったものが、どういうわけか今の世に伝わる。

 絶対知らないはずのことが、どういうわけか()()()()に伝わっている。

 ドラゴンやドワーフなんて見たこともないはずなのに、ほとんどの昔話に出てくる。

 今でもいるんだよあいつらは。どこかにひっそりと暮らしているんだよ。私のようにね」



セレン:「大筋は分かりました。

 やはり人間は最初からこの世界の支配者ではなかったこと、大きな戦争があったこと。

 でも大賢者、あなたはどうして人の世に抵抗しなかったのですか?」

スーリヤ:「この世界が続けば私も続いていくってことさ。単に私という個体があるかないかってのは、大して問題じゃない。

 私もこの世界の一部だからね」

セレン:「私にはダメですね。そこまで達観はできません」

スーリヤ:「なあに、あんたと一緒さ。私もマヒしているんさ。私という存在にね。

 もっともあんなデカイ戦争を見てくればマヒもするけどね」

読了ありがとうございました。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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