神の先兵
第三部5部で登場した虐殺された騎士たちが蘇ってきます
【カナン大地 磔刑場】
ファロスを刺した短刀を手に怒りに震えているアレキサンダー
アレキサンダー「おのれ、おろかな人間どもめ」
短刀の刃を握りしめるアレキサンダー
血がしたたり落ち、刃を折る
刃が折れる音:「(バキーン)」
アレキサンダー「神よ。偉大なる、全能の神よ。
人は神に背を向けました。神の国は遠ざかったのでしょうか?神の国が到来するのでしょうか」
沈黙に包まれるアレキサンダー
宵闇の空に浮かぶ星がちかちかと瞬く
【聖都スクード 上空】
夜空を切り裂いて流星が落ちる
大爆発:「(大爆発)」
【太陽の神殿 頂上】
夜空に立ち昇る火柱を凝視する「司る者」たち
ジェス:「なんだありゃ?」
セレン:「あちらは聖都の方角」
ミラン:「フレイ・・・」
火柱を凝視するヒューマとサーラ
【地面に開いた大穴】
先の見えない大穴の底にいくつもの星が瞬く
奥底からうなり声が沸き上がる
【太陽の神殿 頂上】
耳をふさぐサーラ
ヒューマ:「どうしたサーラ?」
サーラ:「なんだろう?大地の奥底から、何かが浮かび上がってくる。とっても冷たくて、熱くて、悲しい・・・」
セレン:「恨みです」
ジェス:「恨み?」
セレン:「この世界の礎となっているのに、忘れ去られた、騎士達の恨みが、復讐となって襲いかかる」
【地面に開いた大穴】
白骨化した馬の背にまたがる、やはり白骨化した騎士達が吐き出される
【上 空】
夜空に黒雲のように広がっていく恨みという名の騎士の亡霊
【太陽の神殿 頂上】
ベルタ:「どうなっているのか解らないけど、聖都は大変なようね」
ミラン:「セレン、空飛ぶお馬さんで聖都まで連れて行って。火を消さないと」
セレン:「解りました。行きましょう」
ひらりとシックルに飛び乗るミランとセレン
セレン:「では行って参ります。詳細が解ったら伝えます。新しい太陽の子よ」
ヒューマ:「頼む。これ以上の混乱はゴメンだから」
サーラ:「気をつけてね」
飛び立つペガサス
【聖都スクード 聖廟】
炎上し崩壊している騎士団本部と聖廟
音もなく降り立つペガサス
ペガサスが地を踏むよりも先に降りるミランとセレン
セレン:「これは、すさまじい力ですね」
ミランが歩き回ると大きな火は火勢が無くなり、小さな火は消えてしまう
ミラン:「一度に全部はムリ!」
瓦礫の中を歩くセレン
瓦礫の下から逃げ遅れた手や足が見える
声:「うう・・」
声がしている場所の瓦礫を魔法の力で持ち上げるセレン
出てきたのは流星の盾とフレイ
セレン:「無事でしたか」
フレイ:「あ、あなたは・・・」
流星の盾を見るセレン
セレン:「先ほどの衝撃は流星ですね。そして流星の盾を持っていたあなただけが助かったと」
フレイ:「僕だけが助かった?」
セレン:「おそらく」
ミランの声:「セレン」
ハッとするフレイ
セレン:「お待ちを」
ミラン:「ねえセレン、火は小さくできるけど、私じゃケガが治せないから、サーラとベルタを・・・」
セレンとフレイを見つけるミラン
ミラン:「フレイ」
フレイ:「ミラン」
【カナン大地 磔刑場】
預言者アレキサンダーの周りを取り囲む白骨の騎士達
アレキサンダー「・・・」
亡霊騎士:「そなたか我々を解放したのは」
アレキサンダー:「そうだ。この世界の礎となった忘れられた騎士達よ」
亡霊騎:「我らの望みはただ一つ。我らを裏切った騎士団を滅ぼすこと。それ以外にはなにもいらぬ」
アレキサンダー「騎士団だけで良いのか?」
亡霊騎士:「どういうことだ?」
アレキサンダー:「お前達を亡き者にしたこの世界ではなく、新しい世界を守る気はないか?」
亡霊騎士:「我らにそなたの騎士となれというのか?」
アレキサンダー:「私たちが作るのは、平和が支配する神の国だ。人が司る世界ではない。神と平和が支配する神の国だ」
亡霊:「神の国?神とは?」
アレキサンダー:「人のように不安定ではない、全知全能の存在だ。誰かが犠牲になることもない。裏切られることもない。忘れ去られることもない。神が統べる完璧な世界だ」
亡霊騎士:「よかろう。神の先兵となろう」
亡霊騎士:「裏切りに満ちた世界を滅ぼし、新たな世界を我らの手に」
読了ありがとうございました。
今後もごひいきによろしくお願いします。